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見えてきた真実


「皆さん、そこまでシャロンって君主の事を気にかけていますが、そんなに危ない人なんですか?」


 俺の問いに縫香さんはまるで他人事の様に飄々と答える。


「危ないよ。もしかしたらシャロンはテラヴィスを手に入れる事で魔界に王手をかけるつもりだったのかもしれない。それをレヴィストが邪魔したんだ。レヴィストは多分知っていたんだ。テラヴィスをシャロンに渡したら、とんでもない事になるって」


「それで、縫香さんを捕らえてでも、シャロンと戦わせようとしたんですか」


「うん。正確には私ではなく、硯だがな」


「硯ちゃん?」


 今、リビングに硯ちゃんの姿は無い。多分、テラヴィスと一緒に部屋にいるのだろう。

 帰ってきてからこちら、あの二人は本当に中が良いらしく、いつも二人で居る所を見る。


「もし、シャロンがテラヴィスを手に入れ、強大な魔力を持ったなら、それに対抗出来るのは硯ぐらいだ。今はまだ可愛らしい魔法少女って所だが、あの歳であの力だ。尋常じゃないのは弓塚君も知ってるだろう?」


「そうですね。なんとなくですけど、すごいんだろうなって思ってました」


「アイスクロウはテラヴィスと硯に、互いを友達として大切にするように言っていた。それはこの二人ならシャロンに対抗できると考えての布石じゃ」


「テラヴィスと硯を越える力を持つとすれば、それはもう真結以外にいない。ただし、真結が魔女としての運命の魔法を使えないなら価値はないが、もし使えたなら、シャロンは自分を女王にする様に願うだろう」


「そこまでして魔界の王様になって、嬉しいんでしょうか」


「魔界の次は人間界だ。そして魔力を独り占めにした時には、次は地獄界に攻めてくるか、それとも天界に攻めてくるか」


「そこまででっかい話なんですか!?」


「だからさ、言ったじゃない。何か分からないけど、とてつもない事が起ころうとしてるって。今はそれがロードオブアイズだって分かったんだけど」


「なんだか……どうなんだろう……もし、僕が、真結と出会わなければ……」


「弓塚君は巻き込まれなかったし、ラビエルは降りてこなかった。だが、真結は死に、テラヴィスはシャロンが捕まえていただろう」


「真結は……死ぬ運命だったんですか?」


「そうだ。魔力を使い続ければ死ぬ。だから人間界に来た。それでも真結は自分の命を削って奇跡を起こし続けただろう。いずれは死んでいた。弓塚君がいたからこそ、真結は生き延びたんだ」


「そうですか……真結が、そういう性格だってのは、気付いてました。俺が助けられたのは彼女のおかげですし、奇跡そのものだと思います」


 自分と、身の回りに今まで起こった奇跡の数々を思えば、運命の魔女の持つ願いを叶える魔法がいかに強力かは分かる。

 もしシャロンという魔女が力づくで真結に奇跡を起こさせようとしても、おそらく真結はシャロンの願いを聞かないだろう。

 もし聞くとすれば、それは縫香さんや硯ちゃんや襟亜さん、それに俺達という周囲の人達を人質にされて脅された時だろう。

 もしそうなれば、真結は自分の命を投げ出す事なんて、簡単にしてしまいかねない。


「シャロンがどこまで魔界を手に入れる準備を進めているのかは分からないが、ヤル気まんまんなのは分かる」


「結局の所、縫香さん達はシャロンと戦うんですか?」


「……全力で回避したい。戦いなんてまっぴらだ」


「回避出来ますか?」


「ああ、その為に龍脈の地図を作り、魔界の長に提出し、シャロンに魔力が届かないようにしてるのさ。それが私の仕事の本当の目的なんだよ」


「そういう事だったんですか……」


「シャロンが利用出来そうなクルーシブルは徹底的に潰し、龍脈は綺麗に流れる様にし、魔界の長の管理下に治める。それが出来ている間は、シャロンは動けない」


「それに今回は悪魔も協力してくれるようじゃ、皆、シャロンが動くのを止めようと手ぐすね引いてまっておる」


「悪魔ってリザリィの事ですよね」


「うむ。リザリィ、その兄のグラーツ卿、そしてシャロンに蹂躙されたレヴィスト男爵。地獄界ではくるなら来いという状態じゃろう」


「天界ではテラヴィスを保護出来た事でシャロンの主戦力は封じたつもりじゃった。まさか真結が力を持つ事で、新たな脅威になるとは予想していなかったが、真結は既にシャンダウ・ロー様の加護の元にある」


「真結が自分の体調がおかしいのを、すぐに報せてくれたのはとても助かったよ。おかげでこちらはいくらでもやりようがある」


「真結は、また……お姉ちゃん達や硯ちゃんに迷惑をかけるのかな?」


「迷惑ってのはリザリィみたいなのを言うんだ。真結は真結のままでいい」


「うん……ありがとう……」


「真結が居なくなったら大泣きする奴がそこに居るんだ。悪いようにはならないよ」


「ひろくん、大泣きする?」


 そう言いつつ、真結が俺の片腕を掴んできた。


「大泣きしないように、みんなと一緒に考えるよ。物事が悪い方へ行かないように」


「そうだね。真結も、それは気をつけようと思う」


「……どうでもいいが、里詩亜は、あれ、どうしちゃったんだ?」


 縫香さんが庭の方を見てそう言ったが、俺達には何も見えなかった。


「里詩亜さん、居ました?」


「今、涙目になって、うんうん頷きながら、そこで話を聞いてたぞ」


「里詩亜さんはちょっと、指輪の能力で変な事になっちゃって……」


「いきなり、ひろくんの事が好きですって告白しちゃったんだよ」


「あれは惚れ薬入りの婚約指輪だったのか、はははは」


「笑い事じゃないですよ。真剣に言われちゃったんですから」


「ははははははははははははははは」


(ダメだ……この人は相談相手にならない……)




 真結に訪れた変化は、早めに相談したのが良かったらしく、その日からクルーシブル潰しが行われる事になった。

 これに一躍かったのが、リザリィが連れてきたデスハウンドのサッちゃんだった。


 サッちゃんは縫香さんの様に魔力の流れを追わずとも、近くまで行けば魔力が澱んでいる所を見つける事が出来た。

 勿論そこまでは縫香さんが龍脈の乱れを追いかけなければいけないが、正確な位置を特定せずともサッちゃんを連れて行けば探知機代わりになってくれた。

 このおかげで真結が囚われた魔力の坩堝の場所はすぐに分かり、縫香さんがその乱れを解放する事が出来てサッちゃん様々だった。


 ただ、サッちゃんが不憫なのは、何故かサッちゃんは人間の姿になっている時に、あちこちでアルバイトをしている事だった。

 リザリィに聞いてみるとサッちゃんのエサ代はかなり高額らしく、少しでも自分で働いて稼げと命令しているらしい。

 朝は学園へ向かう乗り物になり、クルーシブルを探す手伝いをさせられ、空いている時間はアルバイト。さすがの襟亜さんも、ちょっと可哀想ですわよ、と同情するぐらいだった。

 しかしリザリィから一日のエサ代を聞いた途端に襟亜さんは、もっと高額のバイトを紹介しましょうかと掌を返していた。



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