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地下廃棄場のふたり


「うう、臭い……なにここ……」


「ここは城の最下層のゴミ捨て場」


「ゴミ捨て場……どうしてそんな所に来ちゃったのかな……」


 硯とテラヴィスは腐敗物と何かの生き物の骸骨の山の上で、辺りに上の階へ登れる所が無いかどうか見回す。

 それぞれ防御壁を自分達に張り、その上で匂いに対する耐性魔法もかけると、部屋の隅に見える出っ張りの所へと移動した。

 そもそも、この空間は文字通りのゴミ箱である。ゴミ箱に登り道などあるわけもなく、穴が空いてたらそれは修理の対象だろう。部屋を見回す限り、直方体の部屋が並んで二つ並び、そしてその間を三つの通路が繋いでいた。


「……どうして、水気が無いんだろう」


「ここは定期的に高熱処理される。壁に空いている穴は通風口ではなく、火炎を放射する為の穴」


「そ、そういう事は早く言ってよ! あぶないよ!」


 慌てて硯はテラヴィスの手をとって、部屋の奥、壁際にある出っ張った部分に登る。そこなら通風口から炎が吹きだしても安全だった。


「レヴィストが私をここに呼び込んだのは、あれがいるから」


 テラヴィスはそう言うと、二つの部屋を繋ぐ通路のうち、真ん中の方を指さした。硯は最初、何を指さしているのか分からなかったが、目をこらして見ているうちに、そこに黒い巨大なスライムがいる事に気付いた。


「あれって……何? スライムだよね?」


「ブラックプディング。でも特別な奴。ジョブレクスという悪魔の僕。悪魔の素質があって炎や酸では傷つかない。電気と冷気も効かない」


「それってつまり四大元素では死なないって事?」


「斬っても増えないが、触られた部分はボロボロに腐食される」


「つまり、純粋な魔法力でしか倒せないのね」


「あと分子分解? でも、どちらも効き目はあまりない」


 出っ張りの上で体育座りをしているテラヴィスを見て、硯もその横に座る。


「つまりこれって、下手に手を出さない方が良いって事だよね」


「うん。逃げ場が無い。逃げてる時に火が噴き出したら大変」


「……まいったなぁ……やっぱり逃げ道を探すか作るか、だね」


「ドラゴンになれば飛べるんだけど、まだアイスクロウは寝ている」


 空を飛べば逃げ道はあるのかと思い、硯が天井を見上げると、何かが上からパラパラと落ちてきた。明らかに何かの生物の死体で、直視するのはやめた。

 その生き物の残骸は、ブラックプディングの上に降りかかると、あっという間に白い煙をあげて、酸化していた。

 その後、ゴーン、ゴーンと鐘が鳴り響く音がすると、テラヴィスは宙に片手をあげ、指先で円を描いて魔方陣を描いた。

 途端に部屋全体がゴゴゴゴという轟音と共に炎に包まれた。


「あ、ありがとう……」


 テラヴィスが炎からの防御陣を張ってくれたおかげで無傷で居られたが、無ければ丸焦げにはならないにしても、火傷の一つぐらいはしていただろう。

 炎は部屋の中のいくつかのゴミを燃やしたが、殆ど意味は無かった。大抵のゴミはブラックプディングが食べていたし、高熱処理の恩恵はむしろ殺菌によって微生物が死ぬぐらいだった。おかげで腐敗臭は激減し、カビ等の菌類も焦げ落ちて、壁が綺麗になってしまっていた。


地面も綺麗になり、不愉快な植物や虫も消えさり、残ったのは金属等の燃えないゴミと巨大なスライムと……。


「て、テラヴィスちゃん! あっ、あれ!」


「あっ……どうしてあいつが角を?」


 巨大な黒いスライムの中心には、アイスクロウの角が漂っていた。まさかゴミとして捨てられたのだろうか? 間違って捨てられたのだろうか? ともかく、テラヴィスにとってそれは命の次に大切な物で、一行がここに来た最大の目的でもあった。


「でも、あれは倒せない」


 目的物は見つかったものの、厳重な金庫の中にあった、という感じで、テラヴィスはふるふると顔を横に振りながら、ブラックプディングは倒せないと言った。


「なんとかしようよ! 何か考えようよ!」


「……ここに幽閉されていた時、ここにも来た事があるが、その時には、あのスライムは居なかった」


「あれはただのスライムじゃない。スライムの形をした悪魔の一種。ここに放り込まれる事などされはしないし、自らここに来る事も無い」


「……あの角を守る為に、ここに来たんじゃない?」


「レヴィストが……黒スライムに角を守らせて、ここに落とした? それならつじつまがあう……この業火の仕掛けもアイスクロウは苦手だし、アイスクロウのドラゴンブレスもあの黒スライムには効かない」


「何か、倒す方法はある?」


「……ラビエルを……天使を呼ぶしかない。或いは、あの悪魔殺しのアサシン、里詩亜なら、いい武器を持っているかもしれない」


「じゃあ、今の私達に出来る事は、ここから抜け出す事だね」


「うん。次に炎が吹きだした後、どこかの通風口を辿って、外に」



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