女の子は甘い物が好き
「ダーリンは何か食べないの?」
「俺はコーヒーだけでいいよ。甘いのはちょっと……」
「な、なんだかすごいのが出来たな……」
カラフルに彩りされたアイスクリームを持って、里詩亜さんが頬を赤らめていた。リザリィが白一色、真結が茶色と白の渦巻きに対し、里詩亜さんは黄色に白の螺旋の上に、赤や緑や白や黄色に染色されたチョコスプレッドがのっていて、とても派手だった。
「い、頂きます」
席に戻ってきた三人が、それぞれ自分の買ってきたアイスクリームを食べ始める。最初は遠慮して少しずつ舌先で舐めていた里詩亜さんは、よほど気に入ったらしく、かぶりつく様にして食べていた。
「はい、ひろくん、あーん」
「えっ? あ、あーん……」
ここでお約束が来るとは思ってなかった。真結が持っていたアイスを俺の方に差し出して、そう言うので、一口舐めさせて貰う。
「はい、ダーリン、あーん」
それを見たリザリィが、負けてられるかと自分もアイスを差し出してきた。あきらかに店員のお姉さんがクスクス笑っているのが気になるが、ここは構わず、リザリィの分も分けて貰った。
「は、はい……あーん……」
「えっ!?」
「えっ!?」
里詩亜さんは、きっと自分もそうしなれければならないと思って、流れに沿って俺にアイスを差し出してきたのだろうが、真結と俺は交際中、リザリィは俺を口説き中だからしてきた事で、里詩亜さんまで付き合う必要は無かった。
しかしここで断ってしまったら、里詩亜さんが恥をかく事になってしまうと思い、俺は驚きを隠して、レモン&バニラ+チョコのアイスにかぶりついた。
(甘っ!!! これ、すっげぇ甘い! バニラとかチョコとか超越した甘さだ!)
トッピングのチョコが甘すぎるのだ。しかもレモンとかいいつつ、レモン風味なだけの甘ったるいアイスだから全てが甘い。よほどの甘いもの好きでないと、途中で飽きてしまいそうだった。
(コーヒー! コーヒーでなんとか……)
すぐにコーヒーを口に含み、甘さを中和して難を逃れたが、目の前では里詩亜さんが躊躇う事なく、激甘アイスをほおばっていた。
「お、女の子って甘い物が好きなんだね……」
「初心者はバニラよ。バニラの味を知り、その風味を体得してからチョコに行くの! それでこそバニラとチョコのハーモニーが理解出来るのよ!」
(なんだか鍋将軍みたいな事、言い出してるなぁ……悪魔なのに筋を通したがるよな、リザリィは……)
「これっておかわりしてもいいのか?」
「まだ食べるの!?」
あの激甘アイスを食べて、まだ足りないらしい。さすがにその里詩亜さんの発言に、俺は引いてしまった。
「いいわよ。でもバニラね。今こそバニラのシンプルな味を堪能してきなさい」
「真結は、もういいかな……」
「じゃ、バニラ、買ってくる」
そう言って、里詩亜さんは財布を握りしめて店員さんの方に行き、二本目のアイスを注文していた。店員さんは女性が二人居たが、里詩亜さんの前では営業スマイルで、そして里詩亜さんがこちらに戻ってくる時には、ちょっと呆れた様な顔で背中を見送っていた。
「私としては……この上のつぶつぶだけが欲しいんだが……」
「それチョコレートですから! いっそチョコ買った方が早いし満足できますよ!?」
「なぁんでバニラって言ってるのに、チョコかけてくるわけぇ!? これじゃ純粋なバニラの味が分からないじゃない!」
「いや、だから私は、バニラより上のトッピングを……」
「あはは、トッピングだけは、ないかも……」
さすがに真結もちょっと困った顔で、そう答えていた。
「もう買い物は終わったのか?」
後ろから町田の声が聞こえ、振り向くと、来島さんと町田が買い物を終え、カートに山盛りの荷物を押していた。
「あ、町田。あのさ……毒物って、ある?」
「毒になる物はいくらでもあるが、怪物に効きそうな物か……かしこ、ここで皆と待ってろ。俺、ちょっとこの荷物の配送を頼んでくる。弓塚、一緒に来い」
「うん、じゃ、任せたよ」
「あ、り、里詩亜さんも来て下さい、薬を買いに行きます」
「あ、はい!」
何故か里詩亜さんは立ち上がって姿勢正しく返事をすると、俺達の方に駆け寄ってきた。休憩場所ではリザリィが来島さんに何かを話しかけていて、そこに真結も混じってガールズワールドが出来上がっていた。
町田はまずカート一杯の荷物を自分の家宛にして配送して貰い、その後里詩亜さんと俺を連れて、園芸と台所用品と工具のコーナーを巡って、危険物系の薬品を選んでいた。
「これ以上は買うと、怪しまれるんで、この程度で」
「はぁ、どうも」
「調合の仕方は後で説明する。と言っても即効性の劇薬なんて売ってはいないから、それなりの物しか出来ない」
「あと、これらの品物は三人別々に買う。ホームセンターや薬局では劇物、危険物を買った人物には一応レジにその旨の記録が残る。だから同じレシートに劇薬が並ぶのは良くない」
町田の指示にそって、それぞれ掃除関係、園芸関係、工事補修関係の薬を持つと、順番もずらして一人ずつ買い物を済ませた。
「里詩亜さん、この荷物を預けるので、入り口から外に出たら姿をくらませた後、駅で合流という事で」
「了解した」
町田と俺が里詩亜さんに買い物袋を渡した後、俺と町田は真結達の元へ行き、里詩亜さんは店の外へと出た。
「よし、買い物は終わったし、帰ろう」
町田がガールズトークなど無視して割り込んでそう言うと、三人は頷いて席を立ち、俺達の分の買い物を済ませてから店を出た。




