↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/82

秩序のアサシンと混沌の剣士


「よし、ここから本番。私達はテラヴィスの角を取り返す。レヴィストに持たせたままではいい事は無い。もしレヴィストが魔界の君主と繋がっているのなら尚更だ」


「だがレヴィストは自分の城から出る事は無い。だからこちらから出向くしかない」


「いい事を教えてあげるわ。レヴィストが城から出ないのは、出る必要がないからなの。あの城はどの世界にも通じていて、どの世界にも自由に行き来出来る。レヴィストにとって自分の城は世界と同じ規模を持ってるの」


 リザリィの言葉をフォローする為に、アイスクロウが老人の声で詳細を述べる。


「ワシはレヴィストの城の地下に匿われていたが、そこは氷の世界と繋がっていて、アイスクロウには住みやすい所だった。城の中でありながらもその広さは広大で、城の大きさとは矛盾していた」


「つまり、道は探せばどこかにある。という事?」


 来島さんが縫香さんに尋ねると、縫香さんは小さく頷いた。


「ある。それは魔女に守られていない龍穴で、何百年も見つかっていないか、或いは近づく魔法使いを排除して、その存在を隠し通している」


 縫香さんがそう言った時だった。

 部屋の隅から低く、強さのある声が聞こえた。


「御鑑市から少し離れた所に古い井戸がある……昔はそこに小さな村があったらしいが、既に村の痕跡は無く、井戸も涸れている」


 町田が記憶を辿りながら、そう語り始めたのを見て、リザリィがきたきたと期待に満ちた目で彼を見ていた。


「その井戸には降りるまでに一つの横穴があり、水が涸れた後には一番底にも横穴があるのが確認されているが、どちらもそれがどこに通じているのかまでは調べられていない」


「調査した者は行方不明になり、その後の調査は打ち切られている。心霊スポットになりそうな所にも関わらず、調子に乗った若者が近づいたという噂もない。或いは近づいた者は行方不明になったか、それとも記憶を消されたか」


 町田は宙を見て小さく笑いながら、呟く様にそう言った。まだ完全にスイッチが入った訳じゃないが、いつでも脳内ヒーローが目覚めそうな感じだった。


「ねね、町田君、その井戸ってどこにあるの?」


「地図はあるかい? 御鑑市の北東にはかのしま峠と呼ばれる山があって、そこが市の境になっている。そのかのしま峠から北東、かのしまスパガーデンから北へ行き、鹿島山の中に入り、湯座市との境付近にその村はあった」


 縫香さんが地図を手の上に召喚し、御鑑市の北側の地図を広げる。鹿島神社から北側は山が広がっていて、道路は通っていない。御鑑市と北の湯座市を繋ぐ山道はあり、その山道の途中から東のかのしま峠の頂上へ向かうハイキングコースがあった。


「随分遠いな……かなりの距離を歩く事になるぞ」


「気になる位置じゃな。鹿島神社の東北東は鬼門になっておる。地獄へ通じる門があってもおかしくないのう」


「朝一番でここを出ても、着くのは夕方になりそうねぇ」


「ひろくんと硯ちゃんと私と来島さんと町田君は、鹿島神社で一泊するのがいいと思う」


 真結がそう言いだしたので、皆は疑問に満ちた顔で彼女の顔を見た。すると真結はにっこり笑って簡潔な返事をした。


「人間には安全だから」


「真結は己の勤めを第一に考えたのじゃな?」


「はい。人数も多いし、私、足遅いし、あんまり体力も無いから……」


「体力の事を考えると、鹿島神社から行くのが良さそうだね。俺も賛成するよ」


「すまない、私も入れてくれないか。勤めというのであれば、私も頬白殿と弓塚殿を守る任があるのだ」


「里詩亜さんは天使は怖くないの?」


「私はどうとも思ってないが、天使が魔女をよく思っていないのは知っている。しかもこの任は地獄の君主グラーツ様から託されたものだしな」


「おぬしの存在が悪でなければ構わぬじゃろう。性格看破をしてみようか」


「いや、あの、性格看破はちょっと……」


「何だ、何か問題があるのか? あるなら鹿島神社の敷居は跨がせぬぞ?」


「仕方無いか……どうぞ……」


 ラビエルさんが片手を軽く里詩亜さんの額にかざすと、途端に首をひねる。


「なんじゃ? 秩序にして善なる心を持つ、良き魂ではないか。何の問題があるのじゃ」


「里詩亜はその性格のおかげで、アサシンとしては二流になっちゃったのよね」


 一息ついた襟亜さんが、縫香さんの隣に腰を降ろしながらそう言った。


「二流って言うな! 悪の属性の武具が使えないだけだ」


「……襟亜、お前は混沌にして中立なのか。アサシンとしてはお前の方が向いておるではないか」


「勝手に性格看破しないで下さいます? そんな事は昔から言われてますわよ」


(これで襟亜さんがギリギリ悪だという事が証明された……)


「悪の属性の武器が使えないと、不利なんですか?」


「ああ……闇に溶け込んだり、足音を忍ばせる防具、致死の力を持つ強い武器は不浄の呪いがかかっている。善の私が持てば呪いでとても弱くなってしまう。だが、善に祝福された武具が使える分、悪魔には強い」


「正義っぽいアサシンなんですね」


「そんな所だ」


「ならば真結、硯、弓塚君、来島さん、町田君と里詩亜は神社経由で向かうとしようぞ」


「ダーリンと別々になるのは嫌だけど、シャンダウ・ローに近づくほど無謀じゃないし、仕方無いわねぇ……それじゃリザリィはこの前使った温泉に泊まっていくわ」


「リザリィ、私も混ぜろ」


 すかさず縫香さんがそう言ったが、明らかに下心は見え見えだった。


「リザリィ、襟亜、縫香、テラヴィスは温泉組ね。もしテラヴィスが狙われても、血の雨が降るだけよね」


「……もし、この分断を敵が予測しているとすれば、狙われるのは俺達人間側だ。魔界の君主はともかく、レヴィストは人間を傷つけないと断言できるか?」


「それは出来るわよ。ただし、人間が人間界にいる間だけ」


「他の世界……例えば地獄や魔界に連れ去られたら、人間も狙われるのか?」


「人間を連れ去るとすれば、即座に殺すか、或いは捕らえる為だろうね。そこは天使様に守って貰いなよ」


「無論、そのつもりじゃ。誰も傷つけさせはせぬ」


「それじゃ、出発は土曜。現地到着は日曜とするか。みんな、それでいい?」


 縫香さんの締めに反対する意見はなく、この日の打ち合わせはこれで終わりになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。