7. 何でこうなる
7話目です。
よろしくお願いします。
サフィールさんが現れた。
「聖女様」
「何か用ですか?」
「私と城下に出掛けませんか?」
「無理です」
また、現れた。
「聖女様、こちらを受け取って下さい」
「何これ?」
「指輪です」
「何で?」
「聖女様が好きです。貴女に婚約を申し込みました」
「は?私、アルト王子の婚約者なんだけど」
「障害のある方が燃えます」
全然、改善されて無いじゃないか!寧ろ悪化してるぅ!
「アルト王子ぃ!」
アルト王子が居るという応接室の扉を開けると、王子とクラリッサ様がソファに隣同士で座っていた。その側にはジルベルトさんが控えている。
「へ?あ、あれ?」
「聖女様、せめてノックはして下さい」
「あ、ごめん」
「それでどうしました?」
「あの、クラリッサ様がいるから言いづらいんだけど…」
「構いませんわ、聖女様。どうぞおっしゃって」
「では、遠慮なく。サフィールさんの事です。私に婚約を申し込んだって聞いたんだけど、どういう事ですか?」
「ああ、その件か。私との婚約を破棄して聖女様はサフィール殿と婚約を結んでもらう」
「アルト王子?何言ってんの?」
何かが可怪しい。アルト王子の瞳に光がなく周りに変な靄が掛かっている。…クラリッサ様が何かしたんだろうか?
アルト王子に目を覚ましてもらわなきゃ。
「アルト王子、最初に謝っとくね。目を覚ませ、こんのお馬鹿ぁ!」
流石にグーは不味いんで、パーで殴る。アルト王子はソファからズリ落ちて頬を押さえている。
「は…、え?聖女さ…ま?」
「そう聖女様だよ!何、変な術みたいの掛けられてんの!」
王子はとり合えずこれでいい。クラリッサ様に向き直る。
「クラリッサ様、何しました?」
「わたくしは何もしていませんわ」
「嘘言わないで。私には分かるの。何でこんな事するの?」
「わたくしは何もしていないと言っているでしょう?」
「聖女様、ここからは私が対処します。クラリッサ皇女殿下、疑いがある以上このまま無罪放免とは行きません。結果が出るまで部屋に軟禁とさせて頂きます。ジルベルト、皇女殿下を部屋にお連れしろ。出入り口に騎士の配置も忘れるな」
「は、かしこまりました。では、クラリッサ皇女殿下、お部屋にお連れします」
クラリッサ様は立ち上がり、ジルベルトさんに付いて部屋を出ていった。
「聖女様、情けない所を見せました。気を付けていたのですが、お茶に何か入れられた様です」
「お茶も調べなきゃね」
「それにしても効きましたよ。あの一発」
「グーじゃ無いだけマシでしょ」
アルト王子が私の手を取り口付ける。
「は?え?あ、何?」
多分、私の顔は赤くなっているはず。アルト王子がくすくす笑う。
「何?」
「いえ、何でも」
「クラリッサ様はどうなるの?」
「他国の皇族ですから恐らく国外退去処分かと。聖女様のお陰で実害が無かった訳ですし。取り急ぎ陛下の判断を仰ぎます」
アルト王子は部屋を出る際に振り向き。
「聖女様、クラリッサ皇女殿下は今日、明日中には国外退去になるでしょう。狙われているのは聖女様です。十分注意して下さい」
「うん、分かった。部屋に戻って大人しくしてるよ」
「お願いします。では」
今度こそ、本当にアルト王子は部屋を出ていった。私も大人しく部屋に戻るとしますか。
廊下を歩いていると後からハンカチに薬を染み込ませたもので口と鼻を塞がれた。苦い匂いがする。
私に薬は効かないんだけどね。相手の思惑に乗ってみようじゃないか。
薬が効いた(振り)の私をサフィールさんが抱き上げる。
「聖女様、申し訳ありません…」
外に連れ出され馬車に乗せられた。
「サフィール、良くやったわ。聖女様を手に入れたらこの国に用は無いわ。早く馬車を出して!」
「は、出せ!」
サフィールさんが馭者に指示を出す。
馬車は相当急いで走らせているのか揺れる。何故か私はサフィールさんに抱き抱えられたままなのである。
さっきの声はクラリッサ様だ。こんなに早急に行動を起こすとは思っていなかった。
宿場で馬を取り替えながら、クラリッサ様達は国境を目指して馬車を走らせているみたいだった。
もしかして国境越えちゃうと私も不味いのかな?そろそろ起きてみようか。
「サフィールさん、下ろして」
「聖女様、目が覚めていたのですか」
サフィールさんの膝から下りて椅子に腰掛ける。
「いや、薬効いてないからずっと起きてた」
「何故?」
「わたくし達の思惑を探るため…ですわね?」
「クラリッサ様、話してよ全部」
皇女様は大きく息を吐き出した。
「…我が国は半年前から謎の奇病が流行っているのです。初めは国の端の小さな村から。それがジワジワと広がり皇都に初めての発症者が出たのが二ヶ月前です」
「どんな病気なの?」
「最初は体の怠さから始まり、眠る時間が徐々に長くなって、やがて目覚めなくなります。死んではいない、ただ眠り続けているだけ。わたくし達も手を拱いていた訳ではありません。医師も手を尽くしました」
クラリッサ様の握りしめた手に力が入いる。
「他国に救援も求めました。ですが薬も効かない、原因も分からない。そんな病に為す術はありませんでした」
「それでどうしたの?」
「そんな時、フェルディナン国に聖女様が召喚されたと噂が流れてきたのです。わたくし達は藁をも縋る気持ちでフェルディナン国に聖女派遣を要請したのですが…」
「だけど聖女は来なかったと」
「はい…」
「ごめん、それフェルディナン国には聖女を派遣したくとも出来なかったんだよ」
「なぜ?」
「私、元の世界に帰っちゃってたんだ」
私の言葉にクラリッサ様は何も言えなくなった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




