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8/8

8. もうすぐ国境です

8話目です。

よろしくお願いします。

「では、フェルディナン国の言う事は本当だったと…」

「うん。私が二度目、この世界に来たのは本当に最近なんだ」


クラリッサ様は少し悲しそうに目を伏せた。


「では、こんな策を労せずとも諦めずに聖女様の派遣を要請していれば良かったのですね」

「まあ、私が役に立つかは分かんないけどね。だって私の聖女としての能力は物理攻撃強化がメインなんだもの」


「…ですが、アルト殿下の様子の可怪しさに気付かれましたよね。そのお力で我が国の流行り病の原因を突き止めて頂けないでしょうか?」

「まあ、やってみるけど。あんま期待しないでよね」


「いいえ、頼りにしてますわ」

「でもクラリッサ様、私を誘拐しちゃって大丈夫なの?」

「間もなく国境を越えます。国境さえ越えれば…」


馬車が急にスピードを落とした。馬車に並走していた護衛騎士が叫ぶ。


「クラリッサ殿下、駄目です!フェルディナン国の騎士団が国境を封鎖しています!」


「やはり、アルト殿下は優秀な方ね。大人しく捕まりましょう。聖女様ごめんなさいね」

「クラリッサ様…」


馬車が止まり扉が乱暴に開けられる。


「サリナ!」


アルト王子に腕を掴まれて馬車から下ろされたと思ったら、王子に抱き締められた。それより今、名前で呼ばれなかった?


「アルト王子、私は大丈夫だよ」

「聖女様…心配させないで下さい」

「うん、ごめん」


今回は何も言わずクラリッサ様に付いて来た私が全面的に悪い。まあ、言う暇も無かったけどさ。


アルト王子は体を離して私をジルベルトさんに渡した。クラリッサ様は馬車から下りてアルト王子と対峙する。


「クラリッサ皇女殿下、聖女様の誘拐は許す事は出来ません。王都に戻って頂く事になります」

「分かっておりますわ。如何様な裁きでも受け入れます」


クラリッサ様にも事情があったのに。クラリッサ様が何も言わないなら私が言ってやる。


「アルト王子、クラリッサ様は私を誘拐なんてしてないよ。私がバイエルン皇国を見たいって言って付いてきたんだから!」


見え見えの嘘でアルト王子にはバレてるだろうけどさ。アルト王子はため息を一つ吐いた。


「仕方ないですね。聖女様に免じて誘拐は不問とします。ただし、お茶の件とクラリッサ皇女殿下の部屋に配置していた騎士に怪我を負わせた件は、罪に問わせて頂きます」

「ええ、分かっています」


「さあ、帰りますよ聖女様」


アルト王子が私の腕を掴んで自分の馬車に乗せようとしたのを踏ん張って止める。


「ちょ、ちょっと待ってよアルト王子!クラリッサ様の国が大変なんだよ。私、バイエルン皇国に行かなきゃ!」


アルト王子は心底呆れたような顔で私を見た。


「どうしても行きたいんですか?」

「私が役に立つかは分かんないけど、何かしないではいられないよ」


クラリッサ様のあんな悲しそうな顔を見たら放っておけないよ。


「分かりました。バイエルン皇国に行っていいですよ」

「ホントに?」

「ただし、私も同行します」

「え?アルト王子は仕事があるでしょ?」


「それは兄上にお願いしましょう。王太子なんて言う重責を私に乗せてくれたんですから、少しくらい助けてくれても良いんじゃないですか?」

「…なの?かな」


「そう言う事です。ジルベルト、君は戻って兄上に伝えて下さい」

「かしこまりました。殿下、お気を付けて」


ジルベルトさんはアルト王子の護衛を数名だけ置いて、残りの騎士を連れて王都に戻って行った。


「では聖女様、バイエルン皇国に行きましょうか」


アルト王子もクラリッサ様の馬車に乗り込み、サフィールさんは馬車から下りて馬で行く事になった。


国境はアルト王子がいるから問題なく通過できた。


アルト王子からは、バイエルン皇国内では身分を隠して行動するから『アルト』と呼ぶように言われた。私の事も『サリナ』と呼ぶからと。


馬車の中でクラリッサ様は、これまでの事を全て話して、アルト王子とこれからの事を話していた。


話し合いの結果、原因究明の為に流行り病が一番最初に発生した村に行く事に決まった。


「クラリッサ様、最初に流行り病が発症した村って遠いの?」

「いえ、この国境から然程離れていません。間も無く到着するかと」


クラリッサ様の言葉通り村にはすぐに着いた。馬車から下りた途端、鼻を突く異臭がする。


「ねえ、なんかスゴく臭くない?」


鼻を押さえながらアルト王子達に話し掛けると、皆一様に不思議そうな顔をした。


「いえ、わたくし達は全然。聖女様には何か匂われるのですか?」

「え〜この臭いの私だけ?なんか損した気分…」


口を尖らせているとアルト王子がハンカチを差し出してくれたので、ありがたく使わせてもらう。


「サリナ、その匂いの発生源は分かりますか?」


ハンカチで鼻と口を押さえながら匂いの強い方を指差す。


「あっち」


私達が村の入り口で話をしていると、一人の年配の男が家から出て来た。


「あんた達は誰だ?こんな村に何しに来た」


クラリッサ様が前に出る。


「わたくしはクラリッサ・ブラオ・バイエルン。流行り病の原因を究明する為に参りました」


「皇女殿下!しっ失礼しました。私はこの村の村長をやってますガラルと申します」

「では村長、一番最初にこの村で流行り病に掛かった者の家を教えてくれますか?」


村長に案内され最初の患者の家に行く。その家に近づくに連れ匂いが強くなってきた。




最後まで読んで頂きありがとうございます。


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