6. 背負投げ一本!
6話目です。
よろしくお願いします。
さて、これはどうした事でしょう?
クラリッサ様からお茶のお誘いだと聞いて指定の場所、四阿に来てみればクラリッサ様はおらず満面の笑顔のサフィールさんがいて。
「ようこそ聖女様、お待ちしておりました」
「あの〜クラリッサ様からお茶のお誘いだと聞いて来たんですが…。クラリッサ様はどこに?」
「申し訳ありません。私が聖女様にお会いしたくてクラリッサ殿下にお願いしたのです」
「あ〜、そう言う事かぁ。じゃあ申し訳無いけどクラリッサ様がいないなら帰るよ」
「そんな事をおっしゃらずに一杯だけ、お付き合い頂けませんか?」
「遠慮しとく。騙し討ちみたいでヤダ」
「聖女様は私の事がお嫌いですか?」
「好きも嫌いも判断できるほど会ってないし。私にとって美人さんは観賞用だから。じゃっ」
サフィールさんは立ち去ろうとする私の腕を掴んで引き止める。
「悪いんだけど触んないでくれる?」
「了承の返事を頂けるまでは離しません」
今回、この世界に来てから腕やら肩やら掴まれる事が多いなあ。いい加減、行動を制限されるのにイライラしてたんだよね。
皆忘れてるかも知れないけど、私の聖女の力は物理攻撃強化。サフィールさんみたいな体の大きな人でも投げ飛ばせるんだよ。
私の腕を掴んでいたサフィールさんの腕を掴んで、背負投げの要領で投げ飛ばしてやった。サフィールさんは受け身を取ることもなく、地面に背中を着けた。
「気安く淑女の体に触れないで下さいまし」
ふんっ、と踵を返しアルト王子の執務室に向かおうと歩き出した。振り向くとサフィールさんはまだ、投げられたショックから立ち直っていないみたい。し〜らないっ!
怒りそのままにアルト王子の執務室の扉をノックもせずに開けたら、王子とジルベルトさんが驚愕の表情で固まっていた。
「アルト王子!あのサフィールって人、何とかして!」
「聖女様、淑女にあるまじき無作法ですよ」
「淑女なんて知らんわ!それよりサフィールさんよ!私は皇女様の相手は頼まれたけど、護衛騎士まで面倒見切れんわ!」
「今日は何があったのですか?」
「皇女様からお茶の誘いがあったから、指定の場所に行ったらサフィールさんしかいなくてさ。帰ろうとしたら腕掴まれたんで、ムカついたから投げ飛ばして来た」
「腕を掴まれた、ですか…」
アルト王子の持っていたペンがベキッと音を立てて二つに折れている。なんか背後に黒いオーラが見えるよ。
「分かりました。その騎士の件は早急に対処致します」
「ホントに?絶対だよ」
「聖女様、こちらへどうぞ」
ジルベルトさんがソファに座るよう勧めてくる。とり合えずアルト王子にぶっちゃけたら少し気分が落ち着いたから座る。
何故かアルト王子もソファに座る。それも私の隣に。何でだ?
「丁度、休憩しようと思ったので、ご一緒します」
「でも、何で私の隣に座んの?」
「嫌…ですか?」
「そうじゃないけど、狭くない?それにいつもは対面に座るのに?」
「私も気分を変えてみたくなったんです」
「まあ良いけど…」
「聖女様、こちらをどうぞ。先日の聖女様の作り方を真似て厨房長のナルダが作りました『あいす』です。お召し上がり下さい」
ジルベルトさんに言われて目の前のテーブルを見ると、きらきらしたアイスが置かれている。
「嘘っ!アイスぅ〜!食べて良い?」
「どうぞ」
一口パクッと。途端に広がる甘いアイス。
「あ〜〜美味しい〜!これレモンか何か入ってる?酸味が美味し〜」
早速アレンジしてくるとは厨房長ナルダ、侮れん。
「機嫌は直りましたか?」
「うん、アルト王子ありがとう」
「『あいす』を作るのに西の森の魔女様にご協力を頂きました。この世界で魔法を使える者は稀なので」
「そっか、ありがと。大切に食べるよ。ロッテさん元気だった?」
「ええ。聖女様によろしくとおっしゃってましたよ」
「ロッテさんにも会いたかったなあ…って、アイス作った時にロッテさんお城に来てたんじゃないの?」
「そうですね」
「そうですね…じゃないって!来てたんなら呼んでよ〜」
「それは気が付きませんでした。聖女様は丁度、あの騎士とのお茶会の真っ最中でしたので」
アルト王子、笑顔が怖いんだけど。私なんかした?…色々やらかしてる覚えしか無いけど…。
「お茶飲んでないって。次にロッテさん呼ぶ時は絶対に私に知らせてよ!」
「分かりました。さ、『あいす』を食べましょう。溶けてしまいますよ」
溶け掛けたアイスはとても甘かった。
ーーー ◇ ー ◇ ー ◇ ーーー
サフィールが部屋に項垂れた様子で入って来た。また駄目だったのね。
「クラリッサ殿下、聖女様に投げられました…」
「あらまあ、凄い方ね聖女様は。となると力尽くは難しいわね」
「…殿下、聖女様に婚約を申し込んでもよろしいでしょうか?」
「あら、サフィール本気?投げられておかしくなった?」
「本気であの方が欲しくなりました」
「そう。でも一応まだ王太子殿下の婚約者ですわよ」
「…それでもです」
「分かりました。手配しておきましょう」
「さて、次はわたくしがアルト殿下に色仕掛けでもしてみましょうか?」
一刻でも早く、聖女様には我が国に来て頂かなければ。先程、届いた国からの書簡には国民の三分の一以上が謎の病に侵されたとのこと。
「急がなければ…」
手に持った書簡を握りしめる。
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