5. 皇女様とお友達になりました
五話目てす。
よろしくお願いします。
翌日、朝食を取った後、侍女さんにドレスを着せられた。私がコルセットを完全拒否したので着けていない。ドレスもワンピースの少し裾の長めの物だ。
あのドレスって、長すぎて歩きにくくない?膝丈のスカートを流行らせたい。
支度が終わった頃、皇女様からお呼びが掛かった。
「おはようごさいます聖女様、まずは、わたくし達の親交を深めましょう。わたくしの事はクラリッサとお呼び下さい」
「おはよ〜じゃなくて、おはようございます。クラリッサ様」
「聖女様、いつも通りに話して下さいな。堅苦しいのは、わたくしも嫌いですわ」
「そう?だったら私も楽だわ。アルト王子ってば相手が皇族だから言葉使いはちゃんとしろって煩くてさ〜。助かるよ」
侍女さんがお茶を用意してくれる。部屋の隅に護衛の騎士がいるけど、なんか、やたらめったら美形だ。男の人だけど美人としか言えない。美術館に入れときたいなぁ。
その騎士からの視線が刺さる。クラリッサ様に何かすると思われてるのかな?そりゃそうだよな、婚約者にと望んだ相手の婚約者だもんな私。
「聖女様、サフィールが気になりますの?」
「あの人、サフィールさんって言うの?美人さんだね。ご飯三杯はいけそう」
「は?ご飯?」
「や、何でもない」
クラリッサ様はサフィールさんとかいう騎士を呼んで何か囁いた。
そしたら、サフィールさんが私の方に来るではないか。美人は見てるだけで良いんだ。こっち来んな。
「聖女様、私はサフィール・ラックカートと申します。よろしければ私に聖女様をエスコートする栄誉を賜りたく…」
「クラリッサ様、エスコートって何の?」
「この城の侍女に聞きましたの。庭園の薔薇が見頃だと。庭園を散策する許可は得ていますわ。お散歩、行きませんこと?」
「あ〜散歩ね、いいよ。散歩位ならエスコートなんて要らないよ。サフィールさんはクラリッサ様をエスコートしてあげてよ」
サフィールさんは私の言葉に面食らったようだった。
「しかし…」
「あ、ホント要らないから。手を取られて歩くのって歩き難いんだよね。さあ、散歩行こ行こ」
この部屋のテラスからそのまま庭園に出られる造りだ。私が一人先に庭園に飛び出すとクラリッサ様とサフィールさんも付いて来た。
確かに庭園の薔薇は見事だった。が、私とサフィールさんが横並びで歩いて、少し後ろをクラリッサ様が歩いてる。なんだこの構図は?
それに、なんかやたらサフィールさんの距離が近い。あんま近寄んないで、触んないで。顔面偏差値違い過ぎて辛い…。
「サフィールさん、クラリッサ様とこ行って」
「私が近くにいると迷惑ですか?」
困り顔の美人さんもご馳走です。ありがとうございます。
「だって、貴方はクラリッサ様の護衛でしょ?」
「クラリッサ殿下からはお許し頂いています。私が聖女様の側に居たいのです。駄目でしょうか?」
これはあれだ、甘い言葉を囁いて私を気分良くさせて、何か買わせるつもりだ!壺は買わないからね。
サフィールさんから距離を取る。
「私の半径二メートル以内に入らないで。騙されないからね!」
「は?騙す?」
「そう!私を喜ばせて壺買わせるつもりだね!私、お金無いから!」
「聖女様?」
「クラリッサ様〜、薔薇は見たから帰るね。またね〜」
呆気に取られているサフィールさんを放置して、クラリッサ様に挨拶だけして走り去った私。
「逃げられてしまいました。聖女様は手強いですね…」
「変わった方ね。異世界の方って皆ああなのかしら?」
「さあ?」
サフィールは肩を竦める。
「それより壺を買わせるって何かしら?サフィール貴方、壺なんて持ってたの?」
「いえ。聖女様は壺が欲しいのでしょうか?ご用意いたしますか?」
「お金が無いっておっしゃってたわね。贈って差し上げて」
「かしこまりました」
クラリッサ様とサフィールさんが困惑顔で、こんな会話をしてたなんて私は知る由もないのだった。
そして、私の部屋に大量の壺が贈られてきて。
「ぎゃーーーっ!」
と、なるのも致し方なく…。
ーーー ◇ ー ◇ ー ◇ ーーー
執務室にアルト王子の笑い声が響く。
「あはっはっはっは。流石、聖女様。色仕掛けには引っ掛からないか。ははっは」
聖女様に付けた影からの報告を聞いて、彼女の突飛な行動に笑いが止まらない。
「殿下、笑い過ぎです」
「まあ、やはりクラリッサ皇女の狙いは聖女様だったね」
「どうなさいますか?」
「暫く放置で良いよ。聖女様は色仕掛けなんかには掛からないから。ただ懸念すべきは『あいす』だな。クラリッサ皇女が『あいす』を持っていればだけど」
色仕掛けには落ちなくても『あいす』には落ちるかも知れない、あの聖女様は。
「暫く、様子見だね。それで聖女様があの騎士に落ちないと分かった時に、次はどんな手を使ってくるかだよ。影には引き続き聖女様の監視をする様に言っといて」
「は、かしこまりました」
ジルベルトが部屋から退出する。
まったく聖女様は面白い方だ。相手の騎士も気の毒に。さぞや美貌に自信があっただろうが、聖女様に鼻にも掛けられないで。反対にあの騎士が聖女様に落ちたら見物だな…。
「んっ?」
なんだ?今、胸の中に何か落ちて来たような。
「不快だ」
あの騎士が聖女様に本気になって、彼女に近づくのを想像するだけでイライラする。
「まさか…私が?」
あんな破天荒で淑女らしさの欠片もなく『あいす』にしか興味が無い女性。
『王妃に迎えられても遜色ないのでは』
ジルベルトの言葉が蘇る。
「彼女は今回の件が終わったら異世界に帰ってしまう人だ…」
振り払っても想いは消えない。私は頭を抱える羽目になった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




