4. 皇女様来訪
四話目です。
よろしくお願いします。
隣国の皇女様が乗った四頭立ての馬車が到着した。馬車の回りには数人の騎士がいるが皇女様の護衛にしてはやけに数が少ない。この辺も色々と事情がありそうだ。
こちらはアルト王子と私。側近のジルベルトさん。それからカイル王子とミリアムさん。護衛には近衛騎士が十数人で出迎える。
馬車から皇女様が降りてきた。
「バイエルン皇国第一皇女、クラリッサ・ブラオ・バイエルンにございます。本日よりお世話になります。よしなに」
「ようこそクラリッサ皇女殿下、私が王太子アルト・フェルディナンです。我が国にゆるりと滞在して頂き、親睦を深められればと思います」
「ありがとうございます。アルト殿下にお会い出来て光栄でございます」
「長旅でお疲れでしょう。お話の続きは応接室で行いましょう」
「ありがとうございます」
アルト王子のエスコートで皇女様は応接室に向かった。
私は、もう行かなくても良いかなと逃げようとしたら、アルト王子の側近のジルベルトさんに腕を掴まれた。
「どちらにいらっしゃるお心算で?」
「私、別に行かなくてもいいかなぁ…って。部屋に戻ろうかと」
「駄目に決まってるじゃないですか。行きますよ」
「はーい…。その前に腕離して。痛いんだけど」
「逃げないのでしたら」
「逃げないよ。失礼だな」
ジルベルトさんの後を渋々付いていく。
応接室では既に二人は、テーブルを挟んで向かい合って座っていた。
部屋に入って二人を見ていると、アルト王子にちょいちょいと手招きされて、近くに行くとソファに座らされてがっつり肩を掴まれる、痛い…。
「クラリッサ皇女殿下、ご紹介致します。私の婚約者の聖女サリナです」
「あら、殿下には婚約者はいらっしゃらない筈では?」
「クラリッサ皇女殿下からの婚約の打診の時にはまだ、聖女様は顕現されておられませんでしたので。早急にお断りの親書を出させて頂いたのですが、行き違いになったのですね」
「あら、でも婚約の申し込みはわたくしの方が先ですわね」
「申し訳有りませんクラリッサ皇女殿下。我が国では聖女は何に於いても優先されますので」
「ほほほほほ、では殿下の婚約者になる為には聖女様を排除しなくてはなりませんのね」
「それはお止めになった方が良いかと。天罰が降りますよ」
「まあ、怖いこと。ほほほほほ…」
キツネとタヌキの化かし合いだ…混ざりたくない。
「クラリッサ皇女殿下の滞在中はお側に聖女サリナを置かせて頂きます。女性同士で親交を深めて頂ければ、私が聖女サリナを選んだ理由をお分かり頂けると思います」
関わり合いたくなくて無視を決め込んでいたら、アルト王子が私の肩を掴む手に力を入れた。
分かりましたよ。挨拶すればいいんでしょ、すれば。
「クラリッサ皇女様、サリナです。よろしくお願いします…」
「聖女サリナ様ですのね。クラリッサ・ブラオ・バイエルンですわ」
もう、アルト王子!いい加減、肩離せよ痛いわ!ギロッと王子を睨むが涼しい顔でスルーされた。悔しいから足を踏んでやった。
「痛っ!」
今度は私がアルト王子に睨まれる。
「あらあら、仲のよろしい事。わたくし間に入れますかしら?」
「間は無理ですけど、お友達になりませんか?クラリッサ皇女様」
皇女様は驚いた顔をした。
「そう…聖女様は引いては下さらないのね…分かりましたわ。アルト殿下に好意を持って頂けるよう頑張ります。その上でわたくしか聖女様か、選んで頂きましょう」
「クラリッサ皇女殿下、その話はまた後日お話しましょう。今日はこれで失礼します」
王子が立ち上がり、私にも席を立つように促される。
「それでは、今日の所はゆっくりお休みください。クラリッサ皇女殿下の歓迎の晩餐会も予定しています。それでは」
「ええ、アルト殿下。聖女様もまたお会いしましょう」
「またね〜」
皇女様に手を振り、アルト王子に付いて部屋を出る。歩きながら王子が問いかけて来た。
「聖女様、皇女殿下について何か気付いた事はありますか?」
「アルト王子がキツネで、クラリッサ皇女様がタヌキかな?」
「…聖女様、それはどう言う意味でしょうか?」
「お互い何か隠してて、騙し合いって事。案外お似合いかもよ?」
「それは褒めてませんよね」
アルト王子に睨まれる。
「あはっ」
「聖女様、クラリッサ皇女殿下に付いて貰いますが、くれぐれも油断されません様に」
「分かってるって」
「今日の所はこれで終了です。明日からよろしくお願いしますね」
「は〜い!」
これで解放されたとばかりに走って自室に向かった。後からアルト王子が『淑女が走らないで下さい!』とか叫んでるけど気にしない。
ーー ◆ ーー
「クラリッサ殿下、アルト王子殿下との話はいかがでしたか?」
「アルト殿下はくせ者よ。油断できないわ。でも本当に聖女がいるなんてね。わたくしは運が良いわ。国を救う為には聖女の力が必要だもの」
「あの聖女は本物でしょうか?」
「間違いないわ。あれは本物ね。纏う魔力がこの世界の者とは違いすぎる」
「ならば、是非とも我が国へ来て頂かなければ」
フェルディナン国に聖女が召喚されたという噂が我が国に流れてきたのが二ヶ月前。
再三、フェルディナン国に聖女派遣の要請をしたが、聖女は帰還したとの一点張り。その真偽を確かめる為に王太子に婚約を申し込み、この国へ訪れる理由を作った。
少々、強引であったが。
「これで我が国は助かるかも知れないわ」
その為には、あの聖女を上手く懐柔しなければ。その為にわたくしの護衛騎士の中でも飛び切り美しい者を連れてきたのだから。
「サフィール、必ず聖女様を落としなさい。お前の美貌を持ってすれば容易いでしょう」
「はっ、必ずや」
聖女は誰の干渉も受けない。懐柔できなければ無理矢理にでも拐って連れ帰らなければならなくなる。
バイエルン皇国の為なら手段を選ばないわ…。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




