2. アイス食べたいです、作りました
2話目です。
よろしくお願いします。
淑女教育とらやを受けさせられておりますよ、一日中びっちりと。辛い…安請け合いするんじゃなかった…。
「ひ〜ん、まだやるのぉ…」
「いえ、今日はここまでにしましょう」
「良かった〜ぁ」
彼女は私の淑女教育の先生をしてくれている伯爵夫人だ。
なんだよ、淑女教育とか言っても勉強ばっかじゃん。体動かすダンスとかは楽しいけどさ。
「聖女様は素晴らしいですね。歴史以外は完璧です。特に近隣諸国の語学は素晴らしいです」
「ははは、ありがとうござます」
言葉は聖女特典みたいな物なんだよな。どこの国の言葉も日本語に聞こえる。逆に私の言葉は其々の国の言葉に聞こえるらしい。チートだな。
「聖女様、お疲れ様でございました。また明日もよろしくお願い致します」
「うん、お疲れ様でした」
「聖女様、アルト殿下からお茶のお誘いがございました。このまま、ここでお待ち下さいませ」
「げっ、お茶?アルト殿下とぉ?」
「それでは失礼します」
伯爵夫人が帰り、私は一人部屋に残ってアルト王子が来るのを待っていた。
ドアがノックされて、返事を返す前にアルト王子が入って来た。
「王子ぃ〜、まだ私、返事してないんですけどぉ?」
「まあ、いいじゃない。あんな、しどけない姿で私に抱き付いて来た仲じゃないですか」
「王子の上に落ちただけで抱き付いてませ〜ん」
「さあ、お茶にしましょう」
スルーかよ。
侍女さんがテーブルにお茶をセットしてくれる。王子に促されソファに座って淹れてくれたお茶を眺めていると。
「これには何も入ってないよ」
「…本当にぃ?」
「本当、本当。それに薬類は聖女様に効かないみたいですし」
「だからって、薬入りのお茶は飲みたくないですぅ」
「そうでしょうね。それから聖女様はお菓子は何が好きか、分からなかったので色々揃えてみましたよ」
ティースタンドには色んなお菓子が乗せられている。
クッキーやマカロン、ショートケーキやマドレーヌ。タルトもあるみたいだ。当たり前だがアイスは無い。
「…アイス…食べたいなあ…」
「聖女様、その『あいす』とはどんなお菓子なのですか?分かれば城の厨房でも作れるかもしれません」
「う〜ん、無理じゃないかな。冷凍庫…って言うか、水が凍る程冷たくなる箱が無いと作れないよ」
「それは難しいですね。氷魔法を使える者が居れば可能かもしれませんが…」
「うにゃっ!氷魔法?」
私の魔法、氷魔法使えないかな?使えなくてもアイスを食べられるなら、氷魔法を使えるようになってやろうじゃないか!
氷魔法で氷を沢山出して冷やせば作れるはず。
「王子、砂糖と牛乳、それから卵。後、生クリームありますか!」
「砂糖と牛乳と卵はありますが『なまくりぃむ』とはなんですか?」
生クリームはないのか。無しでもそれなりのアイスクリームが作れるからやってみるか。
「厨房借ります!」
「あっ!聖女様」
そうとなれば、こんな所でお茶してる場合じゃない。私は呆気に取られている王子を放って厨房へとひた走った。
「すみませ〜ん。卵と牛乳と砂糖を下さ〜い」
「こっ、これは聖女様。私は厨房長のナルダと申します。卵と牛乳と砂糖…ですか?何を作られるのでしょうか?」
「アイスだよ」
「『あいす』ですか?初めて聞きます」
厨房長に材料を用意して貰い、早速作ってみる。
メレンゲを作って冷やす。
「よし氷魔法だ」
氷、氷、氷…。強く念じると目の前に大きな氷の塊が出来た。
「出た出た!氷〜ぃ!」
氷が出せるなら、かき氷も出来る?魔法で出した氷を食べて良いのか若干疑問が残るが。
氷を砕いてメレンゲを入れたボウルを冷やす。後は残りの材料を入れて混ぜたら冷やすだけ。
「ほう、それが『あいす』というものですか?」
私の肩口からアルト王子が顔を覗かせる。
「そうだよ。これで冷やして固めればのアイスの完成だよ」
暫く冷やすと固まってきた。シャリシャリにならない様にかき混ぜて、また冷やす。
「そろそろいいかな?」
スプーンで掬って一口。
「う〜ん!アイスぅ」
やっぱりいつものアイスには負けるけど、これはこれで美味しい。
「聖女様、美味しいですか?」
「美味しいよ。王子も食べてみる?」
アイスを掬って王子に差し出す。あ、やば、私が食べたスプーンだ。
王子は気にした風もなく、パクッとスプーンを口に含んだ。
「…これは、甘い…口の中で溶けますね。美味しいです。聖女様が切望するのがよく分かります」
「でしょ?私がいつも食べてるのはもっと美味しいよ。てか、毒味とかしなくて良かったの?」
「聖女様が差し出す物に毒などが入っている筈がありませんから」
「信頼してくれるのは嬉しいけどさ。この前の仕返しに何か薬とか入れられるって考えないわけ?」
「そうですね。その可能性は失念していました。でも、聖女様は命に関わるような薬は入れないでしょう?」
「そうだね。下剤とか?」
「下剤…くっくくっ」
王子が肩を震わせて笑っている。そんなに面白いか?
「で、王子。なんか用?」
「そうでした。お話しようとしたら聖女様は『あいす〜!』とおっしゃって厨房に走られましたから話せませんでした」
「それはごめん。で、何?」
「来週、私に婚約を申込んでいる隣国の皇女殿下が来訪されます。その皇女殿下のお相手を聖女様にお願いしたいと思いまして」
隣国の皇女殿下ぁ?
「はあああああ?」
何だかとても面倒の気配しかしない。まったく、アルト王子は碌でもない事しか言い出さないよ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




