初めての出会い3
「ねえ、雪ダルマ作ろうよ」
末っ子の黒髪のノアが館の窓辺から、レースのカーテンをそっと捲り
外を見て言った。
それに兄弟たちの返事はない。
「いいもんね、ひとりでも行くからね。大きな雪ダルマ作っても
見せてあげない。後からきても、誰とも遊ばないよ」
矢継ぎ早に言ってみるが甲斐なく、ノアはふてくされる。
応接室の暖炉の火がパチパチと赤く燃え、残りの6人の兄たちは思い思いのことを
していた。
奥まった所に置かれたスタンドピアノを弾く長男のシモンは、
調律が上手くいってないのを気にして、何度も同じキーを叩いている。
次男のトマス、三男のロマイは応接間の中央に置かれた食卓テーブルの上で
チェスに興じている。
暖炉の真ん前一番近い場所に配置されているゴブラン織りのソファーには、
四男のアンデレが座り、暖炉の中で燃え上がる炎を静かに見ている。
隣の部屋の扉から入って来たふたり、五男のフィリと六男のウリエルは、
くるくる回りながら紙飛行機を取り合っている。
「うん?なんか言った?ノア」
ロマイがチェスのキングを手に、窓辺を振り返った。
だが、そこにノアの姿はすでになく、袖に繊細な刺繍が施された
彼の厚手のコートだけが玄関にかかっていた。
「あれ、ノアいないよ!ねえ、みんな…」
「外に行ったんじゃないの?なんかそんなこと叫んでなかった?」
トマスが横からロマイの手にあるキングを取り上げ、チェス盤に置いた。
「仕方ないなあ。僕が見て来るよ」
ロマイは玄関の方へ歩いてゆき、玄関ドアを開けた。
びゅうう…と冷気が一気に部屋の中へ入り、
雪は今もなお降り続いていて、一向に止む様子はなかった。
「まったく、困ったものだ」
彼はノアのコートを持ち、追いかけて行った。




