表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【なろう版】私を殺した『永久凍土の騎士様』は、今世は恋でバグってる  作者: 丸山華永


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/50

嵐の前兆──回想7

「では行ってきます!」


ラフィリアが元気に挨拶をして、馬車に乗り込んでいった。


今日は約束通り、ひまわり畑へラフィリアを連れて行くことになった。ラフィリアがずっと見たいと願っていたのだ。

近距離にあるひまわり畑は、何度か馬車の中から見せたこともあり、農家の人たちも馬車から顔を出すラフィリアを知っている。だから正式に紹介しなければと思っていたのだ。



「ようやく見れる〜楽しみ〜!」

屋敷からほぼ出ない生活をしているラフィリアは、久しぶりのお出かけ。馬車の窓から見る風景を楽しそうに眺めている。


馬車に並んで座るシイラとラフィリアは、お揃いのレースのボンネットを被っている。ラフィリアはシイラと同じ髪色の付け毛を付けているので、余計にそっくりだ。


アルヴィスはそれを前で眺めながら、一人で幸せな時間に浸っていた。

この幸せを守るために、自分は存在するのだと。そう改めて思わされたのだ。



そしてとある広場で、馬車は止まった。


「うわぁ、すごい!」

夏の陽射しをいっぱいに浴びたひまわり畑は、見渡すかぎりの黄金色が続く。

ラフィリアは降りると早速、ひまわり畑の中に駆けて行く。はしゃぎながら駆け回る様子は、普段大人びてる彼女が年相応の子供の顔をしている。



「ラフィリア、あまり遠くへ行かないでね」


優しく呼び止めるシイラの声に、ラフィリアは振り返った。柔らかな太陽の光が、歓迎するようにラフィリアを照らしている。


アルヴィスは、ゆっくりと杖を付きながらラフィリアの後を追いかける。

ふと立ち止まると、吹き抜ける風がひまわりの花を激しく揺らした。


(やはり、妙に育ちがいいな)


今年のひまわりは大分育ちが良い。

特に今年の『ラフィリアと一緒に見に行く』という約束をしてからは連日続く晴れと、ちょうどいいタイミングで振る雨に恵まれた。



「お父様、お母様、見て!」

ラフィリアか指を指す方向を見て、驚いた。

薄い雲がかかる空に──虹色の光の帯が見えるのだ。

それは大きく空一面に架かっている。



「綺麗……」

シイラはぼーっとその虹の帯に見惚れていた。

これは環水平アークという現象で、その後天気が下り坂になる気象現象だ。知識としては知っているが……実際に目の当たりにするのは初めてだし、こんなに大きなものが現れるとは聞いたことがない。

 

──きっとこの虹は、ラフィリアを歓迎しているのだろう。



「ねぇお父様?」

「何だ?」

「ひまわりって虹色にできないの?」


アレみたいなと言わんばかりに、ラフィリアはじーっとその虹色の帯を見つめている。


「うーん、ひまわりは無理だな」

「じゃあ他の花は??」


様々な色が咲く花は、沢山ある。

薔薇やガーベラ、ダリアなど……しかしそれの栽培は、ひまわり栽培よりも遥かにコストがかかる。


「今は無理だ。だがいつか他の花で、虹色の花畑を作ってみせよう」

「本当?」

「ああ」


きっとその風景は──侯爵家の再生を象徴するものになるのだろう。

ラフィリアが居ればいつかは叶う。そんな気がしたのだ。




そしてしばらくすると、雲が広がってくる。


「雨が振りそうね」

シイラがそう呟くか、ラフィリアは「まだ大丈夫!」と呑気だ。


「お母様、次はこっ……」


何かを言いかけたラフィリアだったが──次の瞬間、サーッと顔から血の気が引く。


「馬車戻る!!」

「ちょっ!ラフィリア!」


駆け出して行くラフィリアを、二人は必死に追いかける。

アルヴィスは杖を付きながら追いかけるが──次の瞬間、立ち止まる。

遠くから、重々しい足音が近づいてきたからだ。



「ラフィリア……」

前にいるラフィリアは護衛のエマルウェルに抱き上げられている。

そしてエマルウェルも、後ろから聞こえる足音の存在に気付き、走って逃げようとした。だが──遅かった。



「止まれ、エマルウェル」


その低く響く声に、時が止まった。

場の空気が一瞬で張り詰める。


ゆっくりと振り返ると……そこには、久しぶりに見るあの人の姿があった。


「ジェイコブ殿下……」


一歩一歩、地を踏み鳴らすような足取りで近付いてくるのは、皇太子ジェイコブだ。




その瞬間、強い風が辺りを駆け抜ける。

ひまわりの茎が大きく曲がり、細いものは次々と音を立てて折れていく。


そしてジェイコブが、抱えられているラフィリアに目をやったその瞬間──突風が吹き荒れ、ラフィリアの帽子が宙を舞う。



(しまった……!)

成す術もなく飛ばされた帽子の下から、青い髪が現れた。

青い髪が、大きく風に揺れている。


「青い髪……聖女か」


ジェイコブは愉快そうに──また憎悪のこもった瞳で、ラフィリアを見つめる。

エマルウェルもごくり、と息を呑んだ。



「去年から妙に侯爵領が潤う秘密を探るため、極秘で視察に来てみたら……思わぬ収穫だったな」



高らかに笑う声が、ひまわり畑に響いた。

──それは今の天気と同じ、嵐の前兆を告げる声だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ