表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【なろう版】私を殺した『永久凍土の騎士様』は、今世は恋でバグってる  作者: 丸山華永


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/50

天然のヒーロー?1

夜の皇都は、昼間とはまるで違う顔を見せている。

今シイラと両親は、エイステミの使節団を歓迎する夜会へと向かっている。馬車から見える夜の皇都は仄かに暗く、貴族の屋敷に灯る明かりが権力の象徴のようだ。


だからこそ、新しく完成した迎賓館はよりその権力を感じさせる。まるで光の宮殿と言わんばかりに、夜の街にぽっかりと浮かんでいる。

入り口の白い石造りの壁は無数のランタンに照らされ、広い窓からは宝石のような煌めく明かりが漏れていた。



「おお……」

馬車から降りたシイラは、迎賓館を見上げる。

まさかこんな場所に自分が来ることになるとは、と感傷に浸っていた。



「招待状をくださったダリオ様に感謝だな」

そう父が襟元を正しながら頷く。

この夜会は、ダリオの執務官の権限で招待されたと言ってもいい。


ただダリオとドロテアは、共にホストの一員であるので、今夜は顔を合わせている暇はないかも知れないと連絡がきていた。



『でも、レイチェルが助けてくれるわ』


ドロテアはシイラを安心させる為にそう言っていた。

まだまだ社交界を知らないクニューベル男爵家を、レイチェルを始めとしたペレザンス伯爵家が助けてくれると──。


実際レイチェルからお礼の手紙が届いた際は、『是非とも協力します』としたためてあった。

きっと彼女が味方をしてくれるなら、不便なことはないだろう。それなのに……


(どうして少しモヤモヤするんだろう)


レイチェルはアルヴィスの元婚約者候補。

その事実が、胸の奥に小さな棘のように残っている。

そんな自分が、少し嫌だった。



「行こうか」

父に促され、三人は迎賓館の中へ足を踏み入れた。

扉が開くと、華やかな音楽とシャンデリアの光が広がった。そして真っ白なホールを、令嬢達のカラードレスが彩っていた。

──勝負の夜会が幕開けだ。



夜会の空気は華やかだ。

優雅に流れる楽器の音色も、壁を彩る花達も、目に映るもの全てが鮮やかに彩られていた。


しかしそんな空気とは裏腹に──シイラは早くも疲れ始めていた。

理由はもちろん、()()である。



「シイラ様!レーヴライン侯爵様とはどういう関係で?」

「その後、どうなっているんですか?」



シイラの元に、常に令嬢達が集まっては質問をする。

質問はほとんど同じ内容──アルヴィスの話である。



恐らく聞かれるんだろうとは覚悟していたが、予想以上の人がシイラに集まっていた。


「侯爵様って怖い方でしょう?」

誰かが言うと、周りが一斉に頷いた。


「でも『永久凍土が溶けた』と聞いていますけど」

「そうあの場で直接見ましたわ。情熱的な愛を囁いておりましたね」

「まさか、あの冷酷無比の騎士様がねぇ」


シイラは困った。

「ええと……」

説明しようとしても、何から説明すれば良いのだろうか。正直どうしてこうなったのか、自分でもよくわからないのだから。


「……まぁ、優しいところも、ありますが」


辛うじてそう言うのが精一杯だった。

しかしその言葉のせいで、令嬢達はますます興味津々になる。


(た、助けて……!)


人波に呑まれようとした、その時。

ピリッとした清々しい声が聞こえた。


「シイラ様?いらしていたんですね!」


振り向くと、レイチェルが立っていた。

淡いグリーン──瞳と同じ色の、美しいドレスに身を包み、優雅に微笑んでいる。



「レイチェル様!」


レイチェルを見た瞬間、何人かの令嬢がざわざわとし始めた。

そう、彼女が胸元の開いたドレスを着ているからだ。



シイラは彼女に駆け寄ると、ほっと息をつく。


「助かりました……」

「大人気ですわね」


レイチェルがくすりと笑った。


「レイチェル様、そのドレスお似合いです」

「あらありがとう。あなたの『ファンデーション』のおかげよ」


するとそのファンデーションの単語に反応してか、年配の御婦人達が近付いてくる。


「クニューベル男爵家御令嬢、早速そのファンデーション使わさせていただいておりますわ。素晴らしい出来てです」

「私も今使っておりますの。いい感じにシミを隠してくれて嬉しいわ」


恐れ多く、シイラはひたすらペコペコしていた。


『ファンデーションとは?』という声が聞こえる中で、レイチェルの方が先に説明を始めた。


「シイラ様が開発した肌色の軟膏で、これで私の痣も隠すことができたの。パフで薄く伸ばせば、自然な明るい顔色も作ることができるのよ」


堂々とファンデーションのコンパクトを見せてみると、感心の声が上がる。


「綺麗なケースね」

「あら開くと鏡になっている。これは便利だわ」


令嬢達の評判は上々だ。


「さすがロイド薬を開発した工房でしょ?」

そうレイチェルの方が得意気だ。



「私も欲しいわ」

「私も!是非とも」


シイラのみならず、両親も御令嬢達に囲まれている。

すごい反応だ……と思うと同時に、嬉しさが込み上げてくる。



その時だった。

一人の青年が小走りでシイラに近付いてくる。

見覚えはない顔だが、あまりにも真っ直ぐにシイラ目掛けて来るので、注目してしまう。



「失礼します、ロイド薬を作った方だと聞いたもので……」


令嬢達の中を割り入って、彼がやってくる。

黒髪にわずかに垂れた瞳が優しい印象の、甘い顔立ちの青年だ。


「自己紹介が遅れました、モスウッド・ノワールと申します。エイステミ国から来ました」


彼はそう言ってお辞儀をした。


「もう少し詳しく聞かせていただけませんか?実は私、ノクティースに留学中で……」


「ノクティースに?!」


「はい。ノクティースの王立学院で、薬学を勉強しております」


まさかと驚きを隠せない。

回帰前に学んだ場所で、学ぶ人がここに居るなんて──。

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ