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幼馴染に愛を込めたお弁当を〜隠し味は私で絡めて〜  作者: 花月アイコ
糸底で離されたガルニチュール

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第24話

「モグ……モグ…………」


 カレー粉の量をもう少し増やしてもよかったかな。私で少し薄口に感じるぐらいなら、マカナにとっては物足りないだろう。


 食欲が湧かないので、マッシュポテトにカレー粉を混ぜてみたが、食欲増進を狙ったカレー味も不発に終わったようだ。

 

 じゃがいもが胸につっかえて胃へ落ちていかない……

 じゃがいもでなくて、来週の料理交流会が原因なのだろうけど。


 マカナは今日学校を昼で早退してしまい、調理室には来ていない。なんでも早退の理由は、右肩のための病院と家の用事があるとのこと。


 当の本人も早退することを忘れていたらしく、今日の朝は学校の昇降口で開口一番に、おはようのあいさつよりも謝罪の言葉だった。


 早退するなら無理して私の作った弁当を食べなくてもいいのに、「アウは糸の作ったお弁当を食べたいからたいただくの」とまで言ってくれる。


 これは料理人冥利に尽きるもの。笑顔で弁当を受け取るマカナを見て、私も弁当を渡すときは笑顔になっていたと思う。


 脳内でマカナの笑顔を思い起こしても、残念ながら食欲は増すわけでもないのでマッシュポテトだけを食べて、弁当箱の蓋を閉める。


 最近は食べる量がかなり減り、それを込みでだいぶ少なめに計算して作ったはず。なのに、すぐお腹がいっぱいになり、食事を残してしまっている。


 教室で昼食を食べてもいいのだけど、気分が乗らなかったのはこれのせい。少量の食事で麦島さんや他のクラスメイトに心配をかけてしまうかもしれなかった。


 今日に限った話しではなく、マカナと一緒に食べているときはあーんをダシにして、私の弁当のおかずを食べさせたり。


 そろそろ、マカナやお父様に気付かれてしまう。たまたま食欲がなかったと言い続けていても、偶然じゃなくて必然だと……


 ――ドンッ、ドンッ


 誰かが前触れもなく調理室の扉をノックした。荒いノックの仕方で、ノックをした人の焦りが伝わってくる。


「扉は開いていますよ」


 別に職員室ではないので、調理室へ入るのにノックする必要はないだろうに。それとも、私が調理室を私的に占拠し過ぎていて入りづらいのか。


 今調理室には私しかいないので入室許可を出す。


御櫛原(おくしはら)さん、こんちは。あれ? マカナのやつここにもいないの?」


 ノックしてきたのは米沢(よねざわ)さん。どうやら、マカナのことを探していたご様子。


「マカナなら早退したよ。今朝、用事があったことを思い出していたようで……もしかして、米沢さんへ早退すること伝えていなかったの?」

「初耳なんだけど……まぁ、急ぎの用じゃないからマカナの行方が分かっただけでも良しとするか」


 米沢さんはマカナと同じクラスなのに、早退することを伝えてなかったのか。右肩で病院に行くことを、前もって伝えていそうだけど。

 

「行方が分かっただけ……ということは、マカナとメッセージも繋がらなかったの?」

「ああ。そうなんだよ。送ったメッセージが既読にもならなくてさ。他の人に聞いてもマカナがどこに行ったのか知っていなくて心配しちまったよ」


 しっくりこない。マカナは報連相(ほうれんそう)をマメにするタイプ。元々が内気で人と揉めたくないこともあって、細かいことを気にしているはず。


 現在の私みたいなメンタル状態なら話しが分かるけど、右肩以外は健康体に見える。実際の心の中は分からないが。


「とりあえず御櫛原さん、食事中にいきなり押しかけてゴメンな」

「全然構わないよ。それに、マカナはいつも部活で米沢さんにお世話なっているし」

「いやいや、御櫛原さんこそ。じゃじゃ馬のマカナのこと毎日レベルで面倒見ているでしょ。私なら(さじ)をぶん投げるわ!」


 米沢さんがスパイクする腕の振りをして、見えない匙をぶん投げた。そして、投げたと同時に、グューとお腹の音が、匙が落ちる音の代わりに調理室へ響き渡る。


「米沢さん……」

「みなまで言わないで御櫛原さん。マカナを探したせいで、昼飯を食べていないだけだから。今から購買で適当なものを買う予定なのだから……」


 捨て猫のように、切なそうな表情をする米沢さんに胸が痛くなる。


「食べかけでもいいのなら、私の弁当いる? ほとんど口を付けていないし、お箸なら予備で割り箸も用意しているよ」

「逆にこっちがいいの? 御櫛原さんのお昼は大丈夫なの?」

「その分、朝をしっかり食べてしまったので……弁当を作る際につまみ食い、もとい味見をしたからね」


 正直なところ、家に残した弁当を持って帰ったとしても、残した分の対応に困ってしまうもの。


 それに、マッシュポテトを全部食べ切ったので、後は他人にあげても大丈夫。


 レシピノートの二十二品目は、カレー味のマッシュポテト。これ以外なら、髪の毛を入れていないので、たぶん……バレないはずだ。


「うう……本当は遠慮しないといけないのに、マカナが御櫛原さんの作った弁当を美味しそうに食べる姿がフラッシュバックする……」

「遠慮しなくていいんだよ米沢さん。米沢さんに食べてくれるなら弁当も喜ぶよ」


 不味そうに食べる人よりは、お腹を空かせている人に食べてもらうほうが弁当も報われるのは確かだろう。


「お代はいくらになりますか?」

「なんと! 今なら! 特別価格の! ドリンク一本を後払いでいいよ」


 在庫処分なので対価はいらなかったが、唐突に県大会の予選グループの最終戦で逆転勝ちを収めた後、クラスのグループに上げられた動画を思い出す。


 逆転勝利に酔った米沢さんがマカナの頬にキスしたことを。ドリンク一本で、気持ちが落ち着けば安いものだよね。

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