閑話①
「う〜ん?…なんか足りなくないですか? 神様」
「えっ!?君、まだいたの?」
私は神様の開きっぱなしの画面を見て、顎に手を当てながら考えて言った。
その片手間に新しい宇宙の定数でも考えようとしていた神様は驚いた表情で私を見る。
「私が言い出した手前、気になって眠れませんよ!任されたことは最後まで…これが恐ろしくも社畜の性なのです…」
「あ、そうなのね」
そう。
社畜とは毒を食らわば皿まで。
骨の髄どころか精神まで。
それ故に私は仕方なく重い腰を上げたのだ。
そんな私にどうでも良さそうな様子の神様。
画面には淡々とログが流れている。
[状況確認:婚約破棄を宣告されました]
[自主的に追放ルートへ]
[領地再建の計画を構築中…]
「…このAIってさ、会話が絶妙にズレてるよね?」
「言ってることは正しいし、スペックも高いんですが、まだ発展途中ですからね。むしろこの会話運びもAIらしさってやつです…が、これだと乙女ゲームのメインディッシュが台無し…!」
私は頭を抱えた。
神様は「へー」と心底興味なさそうに答える。
そんなに新しい宇宙の定数を考える方が楽しいのだろうか。
「せっかく悪役令嬢になったのに、これだと論理で殴る鋼鉄の女…。私が求めていたのはもっとこう…きゅんきゅんするような…そう!真実の愛!」
私は閃いた。
「神様、わかりました!解決策を提示します!…恋愛要素をブチ込みましょう!」
「えっ?恋愛要素? 」
「そうです!計算不能なバグこそが“恋”と呼ばれる現象の正体です!」
私が神様にびしっと指示すれば、神様は感心したように…あるいは呆れたように頷いた。
「なるほど…?管理コストはさらに上がりそうだけど、観測対象としては最高に面白い、かも?」
「でしょう? さあ、これで本当にWin-Winです!神様は新しいエンタメを楽しめて、私は寝れる!最高ですね!」
今度の今度こそ、寝てやるぞ!
私は新たな決意を元に画面を見守った。




