閑話②
「…ちょっと…ちょっと待ってください…神様?話が違います!」
私の叫びがその空間に虚しく響く。
相手の神様はといえば画面をいくつも浮かべ、指先をピアノでも弾くかのように軽快に動かしていた。
その瞳は新しいおもちゃを与えられた子どものようにきらきらと輝いていた。
「…あれ?君?まだ寝てなかったの?ちょうど今、領民の教育や産業的にも発達して復興への道が面白くなってーーー」
「いやいやいや!寝れるわけないです!なんですか!この画面!」
私は神様の肩越しに画面を指差した。
画面にはまた淡々とログが流れる。
[現在のログ:悪役令嬢・エルザの動向]
[ドロテア領の農地開拓65%]
[ドロテア領民への教育。識字率80%]
神様は、はて?と首を傾げた。
そう。
どこもおかしいことはない。
おかしいことはない…のだが。
「これ…恋愛要素、今のところ皆無じゃないですか!」
私は思わず神様のデスクをばんばんと叩いた。
そんな私を気にもせず、神様は楽しそうに話す。
「いやぁ、予想以上にAIがドロテア領の開発をしているところを見るのが楽しくなっちゃってさ?」
「…それ、ただの仕事中毒を量産しただけですからね!? 私が欲しかったのは甘いときめきであって、効率的な事業計画書じゃないんです!」
「えー?」
神様は私の言葉に不満そうに唇を尖らせる。
私は神様に切実に訴える。
「趣旨がズレてます!恋愛のターンは!?かっこいいヒーローは!?強引に迫られて赤面する令嬢は!?」
「えぇ…それ、必要?…でも、そんなに君が言うなら…仕方ないなぁ…」
神様は唇を尖らせたまま作業に入る。
…ちゃんと軌道修正できただろうか?
このままドロテア領の経営コンサルティングシミュレーターにでもなってもらっては困る。
私はがっくりと膝をついた。
…社畜の性が「でも、これなら悪役令嬢転生もの的な話でありがちなスローライフ要素(?)が入って確実に話も盛り上がるし業績良くなるのでは?」と囁いてくるのが一番辛い。
でも…。
でも…っ!!!
「私は!きゅんきゅんして!安らかに!眠りたいんですッ!」
「はいはい。分かったってば…かっこいいヒーローに迫られてきゅんきゅん令嬢ね」
またしても私の安眠への道はこの神様の暴走によって、遠のいていくのだった…。




