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食堂へ向かう道すがら、私達は注目を集めていることに気づいた。外見的なものなのか昨日の振り分け試験のことが広まったのかは分からないが、他人の視線は気になるものだ。
……なぜなら今、ノアは廊下の真ん中で私に胸をもませているからである。
「おい、あれって……」
「子供じゃないのか……?」
「なんでこんな所で胸を……」
「尊い……天使……」
「お姉様、どうしましたの?」
流石にこれはつらい。耐えきれなくなった私は、転移魔法で二人とも直接食堂に転移させた。
「どうしましたの? じゃないよ。凄い注目されてたよ」
「見せつけておけばいいんですのよ。それで、私のお胸は成長しました?」
「よく考えたら私達の胸が成長するわけないよね、なんで私は信じてノアの胸をもんでしまったんだ……」
「騙されたことに気づいて悶えるお姉様も素敵ですわ」
なんて妹だ。事の発端は、寮から出たところだった。ノアが腕を組みたいと言い出したのだ。
恋人同士なら普通のことだと言われたが、そもそも恋人同士になった記憶が無い。それでもやってしまうあたり私も弱いけれども。
そしてどうやらノアは腕を組むことを口実に私の腕に局部を押し付けるといった行為がしたかったようで、しきりに腕に体を押し付けてきていた。
歩きにくいと言うと柔らかいか聞かれたので、何の話かと思って別に柔らかくないと答えたのが失敗だった。
そこから紆余曲折を経て、廊下の真ん中で私がノアの胸をもむ事態に発展してしまったのだ。どうしてこうなった。
ノアの胸はもむとほんのり柔らかかった。
「……ノア、きらい」
「ゴフッ」
吐血してしまった。そんなに!?
「ごめんね、嘘だから! ノア好き!」
「いえ、大丈夫ですわ。これは尊み喀血ですの」
「とうとみかっけつ」
「涙目の上目遣いで睨まれてきらいなんて言われたら胸を撃ち抜かれない人なんてこの世に存在しませんわ」
食堂はバイキング形式で、自分の好きなものを好きなだけ取ることができるみたいだ。中央の広い机には、様々な料理が所狭しと並んでいる。
この形式の料理店には何度か行ったことがあるが、良い形式だ。私は苦手な野菜を少なめに盛っていく。
「ごめんなさい、私が悪かったので無視しないで下さいお姉様」
「もう、仕方ないなあ」
「あれはお姉様を騙すだけじゃなくて別の理由もありますのよ?」
「別の理由って?」
「私とお姉様の仲睦まじい様子を周囲に知らしめておくことによって、他の攻略対象からのアプローチを極力削減する狙いがありましたの」
攻略対象とは、昨日会った三人の男子学生のことらしい。ノアの狙いは分かったけど、それなら事前にそう言っておいて欲しいものだ。
「お姉様の可愛いお姿を見たいという欲求に逆らえませんでしたわ」
「わあい、欲望に忠実だなあ」
その後の食事でも、恋人同士なのだからと膝の上に座らされて料理を食べさせられた。やってることはいつも通りなのに恋人同士と言われると少し照れてしまうのはなぜだろう?
食事が終わった頃、振り分け試験の時の派手な人とばったり出会った。周囲に女子を何人も侍らせており、人気の高さが窺える。
「あっ」
「あっ、お前らは昨日の……どうして授業に来ないんだ?」
「チッ」
舌打ちを隠さなくなったね、ノア。
「貴方には関係ありませんわ」
「関係なくはないだろ、同じクラスなんだからよ。午後の授業は来いよな、魔法の練習試合をやるんだ」
「ふーん、そうですの。それで?」
ノア、その対応はどうかと思うよノア。見て周りの女の人達の顔、すごく怖いよ。
「それでってお前なあ……俺は強いやつと戦いたいんだ。お前らは強いんだろ?」
「貴方とでは勝負になりませんわよ?」
あっ、女の人の顔が柔らかくなった。でもごめんね、多分ノアが言ってるのは逆の意味なんだ。
「まあ、そう言うなって。俺が負けたら二度と勝負なんてふっかけねえから」
「……そこまで言うのでしたら、いいでしょう。その言葉、守って頂きますわ」
ノア、結構怒ってるなあ。やりすぎなきゃいいけど……
というわけで、演習場だ。
「ひぐ、ひっく、うぐぅぇえ……」
…………
「ちょっとは、えぐ、手加減してくれても、ひっく、いいじゃねえかよおぉ……」
………………
「ふぐううぅぅぅ……」
……………………男の人ってこんなに簡単に泣くんだ。同情や哀れみよりも驚きが勝ってしまった。
「流石にやりすぎましたわ……」
ノアも反省してるみたいだ。鬱憤でも晴らすかのように大量に展開した魔法弾で滅多打ちにするのは、私も見ててやりすぎだとは思った。
派手な人は戦う前の影もなく、ただ泣いているだけである。周りにいた女の人達も引き気味に見ているのが印象深い。
「……お姉様、帰りましょうか」
「これ放っておいたらだめじゃないかな」
「やっぱり?」
泣いている派手な人は何事かと見にきたトワ先生に押し付けて帰った。




