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入学式の後、私達魔術科の新入生は野外演習場へと移動した。
実家の庭の三倍は広い、芝生で覆われた演習場は魔法を放つにはピッタリの場所だ。中心あたりに金属製の案山子が五体立てられており、これを使って振り分け試験を行うようだ。
「皆さんには、これからこの五つの的にどれだけ正確に、どれだけ速く魔法を命中させられるかの試験を行っていただきます」
試験官の教員はそう言って私達を順に並ばせる。魔力試験の結果が高い人ほど後に回し、万一の事故を減らす意図があるらしい。
私達は最後尾なのだが、目の前にやけに派手な背の高い男子学生がいる。最初は気にしていなかったが、ノアがしきりにその人のことを気にしているので気になってしまった。
「ノア、あの人知ってるの?」
「いいえ、知らない人ですわ。特にどうというわけではないのですが……」
そう二人で小声で話していると、不意に派手な人がこちらを向いた。驚いて思わずノアに抱きついてしまった。
「お前ら、後ろに並んでるってことは俺より魔力量が多いってのか? 信じられねえよ、そんなちんちくりんの癖によ」
そう言われると辛い。派手な人は苛立ちを隠さず私達を睨みつけてきており、私はノアを守るために横を見るとそこには氷のように冷たい目の妹がいた。
「チッ。お黙りなさい、試験中ですわよ?」
今ノア舌打ちした?
「お、ああ……」
これには流石に派手な人も面食らったようで、それ以降話しかけてくることはなかった。
私はというと、いつも優しいノアが突然見せた普段と違う表情に胸が鳴り止まなかった。驚いてしまったのだろうか?
「次。リリン・プロムナード様」
「はい」
そうこうしている間に私の番が回ってきた。なんか派手な人が私のことを見ているような気がするが、ノアは気にしなくていいと言っていたので気にしないことにした。
目の前の的は思ったより近く、私の歩幅で五十歩ほどの距離だ。間隔もそれほど広くないので、一発で全て吹き飛ばしてしまえばいいだろう。
それだけのことを考えて、私はすぐに魔法を心の中で唱える。今使える最大威力の魔法だ。
掌を空に向けると空中に七重の魔法陣が描かれ、周囲の魔力を急激に吸収する。数秒もたたないうちにそれは終わり、魔法陣はゆっくりと上昇し……
一条の細い光線を的の中心部へ落とした。
刹那、衝撃が地を駆け私達を襲い、一瞬遅れて強烈な爆風と熱波が周囲の草木をなぎ倒す。遠くでガラスの割れたような音が響き、数秒できのこのような形をした煙が天まで登っていった。
的は全て消滅しており、着弾した地面は陶器のように固まっていた。
「お姉様、流石ですわ。風でスカートがめくれちゃう所も最高でしたわ」
「やだ、見えてた?」
この魔法はスカートでやらない方がいいみたいだ。制服はスカートなので仕方ないが。
いつまでたっても教員が何も言わないので近くに行くと、気絶していた。ついでに私達以外の学生で残っていた派手な人も気絶していた。
二人を保健室に運ぶために担いでいると、さっき見た学長の人が慌てて演習場に走ってきた。
「なんじゃこの惨状は……一体、何があったんじゃ!?」
「私がやりました。振り分け試験で、魔法を撃ったんです」
「……本当に言っておるのか? これ程の威力、核撃魔法でもなければ有り得んぞ。一人で撃つなど聞いたことがない……いや、まさかお主は……」
「はい、その核撃魔法を撃ちました」
学長は考え込んでしまった。とりあえず二人を早く運んだ方がいいと思うので、ノアと手分けして担ぐ。
「待て、そやつらは職員に運ばせる。二人はわしに着いてきてくれ」
そう言われたので二人は置いておく。私達は学長に連れられ複雑な道を通り、学長室に案内された。とても普通に学院ですごしていたら見つからないような場所だ。
「して、お主らの名前を聞かせてくれるか」
「リリン・プロムナードです」
「ノア・プロムナードですわ」
「やはりか……事前に手加減するように伝えておけばよかったわい」
学長は頭を抱えている。私達の名前に何かあったのだろうか。
「プロムナード家はな、代々とんでもない魔力と技術を併せ持った天才が産まれる家系なんじゃ」
「えっ、そうなんですか?」
「……その上、家訓が『常に余裕を持て』という楽観的なものでな……直系の娘にすら家系について教えんとはあのお調子者は……」
学長は深く長いため息をついている。
「父上とお知り合いなんですの?」
「ああ、あやつには散々迷惑をかけられた……いや、お主らに言っても仕方ないのう」
「心中お察ししますわ」
何をしたんだ、お父さん。
「ともかく、お主らには専属で教員を一名つける。クラスは一応Aで登録しておくから、行事の時はそちらで参加するように」
「はい、分かりました」
なんだか妙なことになったようだ。でも、一つ気になっていることがある。
「ノアの振り分け試験はやらないんですか?」
「次やったら演習場が吹っ飛ぶからやめてくれ!」




