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「ああ、今日もお姉様の白タイツは見事な肌触りですわ」
すりすりと、艶かしい手つきで太ももを撫でられる。少々くすぐったいが、これをしないと調子が出ないと言うのだから仕方ない。
私の妹は変態だ。
「ぶかぶかの袖の隙間も芸術的ですわ」
なんでも、特定の部分に興奮する癖を多く持っているらしく、妹はそれをふぇちと呼んでいた。
今はお腹に頭を押し付けられて吸われているところだ。
「お姉様の小さなお腹につつまれる満足感……たまりませんわ」
妹はたまに私を愛玩動物か何かと思っている気がする。
「その長い御髪に隠れたうなじのぬくもりは至高のものですわ」
息が首筋に当たって思わず肩が跳ねてしまう。毎朝されていても慣れないものだ。
私の体を下から上までなめるように堪能した後、今までで一番の笑顔で私を見つめる。
「お姉様、おはようございます」
「おはよう、ノア」
結局、この子は姉ふぇちなのだ。
そう思って、私の体なら何でもいいのかと聞いたところ、『お姉様自身に向ける愛とお姉様の各部分に向ける想いはまったくの別物』だと言われた。正直よく分からなかった。
「お姉様、今日は大事な日ですから頑張りましょうね」
頷いて、窓の外を眺める。ここは、王都の中心部にある宿屋の一室だ。
私達はこれから王立魔法学院に入学する。世界で有数とも言われる、私達の国では一番入るのが難しい学校だ。
卒業生はその後世界で活躍しているし、働く教員は研究者の顔も持ち古今東西のあらゆる魔法を研究している。
「お姉様、お迎えの馬車が来ましたわ。お手をどうぞ」
そんな王立魔法学院なら、私達の体の呪縛を解く方法も見つかるのではないかと思って入ることを決めた。
考えごとをしていたら、いつの間にか馬車に乗っていたようだ。いったん自分の世界を作るとまわりが見えなくなるのが私の悪い癖だ。
ノアは私をひざの上に乗せてご満悦のようだった。体格がほぼ同じなので重くないか心配になってくる。
「大丈夫ですわ。お姉様、軽いですから」
大丈夫そうだ。よかった。
「そういえばお姉様、振り分け試験は本気を出しますの?」
学院には、入学試験の他に振り分け試験が存在する。これがあるのは、いくつかの学科の中で魔法の実践を主とする魔術科だけだ。
実習の際に実力の差があると危険だからという理由で設けられているものだし、本気を出さないというのはまずい気がする。
「ちゃんと本気出すよ」
「分かりましたわ、お姉様」
なんでそんなことを聞くのか気になったが、馬車が学院に到着したので思考を切り替えた。
学院は建物が大きく、敷地が広い。王都の中心部の実に四分の一を占めると言われていて、実際に近くで見るともっと大きく見えた。
他の学生も着々と到着してくる中、私達は手を繋いで講堂へ向かう。入学式に行くためだ。
周りと比べて身長が半分ちょっとしかない私達はなかなかに目立つらしく、奇異の目を向けられているのが分かる。
私は別に構わないのだが、ノアがさっきから少し警戒している。心労になっていないか心配だ。
「私のお姉様は誰にも渡しませんわ……」
「ねえノア、何か勘違いしてない?」
心配はいらないみたいだ。
奇異の目は向けても話しかけてくる人はそういないはずだ。ここにいる学生は皆これから入学式があり、緊張でそれどころじゃないだろう。
「君達、迷子かい? ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」
そう思っていた矢先、話しかけてくる人がいた。身長が高く整った顔立ちの男の人だ。制服を着ているので学生だろう。
「チッ」
今ノア舌打ちした?
「行きましょう、お姉様」
「あっ、ちょっと……」
男子学生は私達を止めようとするが、ノアは構わず進む。私は有無を言わさず引きずられていった。
今年の入学生はおよそ千人ほどで、全員と教員の多くが座っても講堂にはまだまだ余裕がある。
こんなに広い建物には初めて入ったので思わず周りを見回してしまったが、壇上に誰かが上がったので前を向いた。
「広い建物を思わず見回してしまうお姉様……萌えですわ……」
隣でノアが震えていたので、ぎゅっとして温めてあげた。後ろの方に座っているのでこれぐらいは大丈夫だろう。
壇上に上がった人は髭をたっぷり蓄えたおじいさんで、学長の人らしい。
学長は学院でのすごし方や魔法についての考え方など重要な話をいくつかしてから、次の王子の挨拶に移った。
本来ならここは新入生代表となるのだが、今年はこの国の王子も入学するので王子が挨拶をするらしい。
ちなみに、新入生代表だと入学試験の成績で決まり、私かノアになるので今年は王子がいて運が良かったとも言える。大勢の前に立つのは苦手だ。
ともかく私は壇上に注目して、そこに王子が上がってきた時思わず二度見してしまった。上がってきたのはさっき声をかけてきた背の高い人だったのだ。
「ねえノア、あれって……」
「王子様ですわね」
「さっき声かけてきた人だよね?」
「そうですわね」
「ノア、なんだか機嫌悪い?」
「そんなことありませんわ」
ノアがどこか変だ。でも、機嫌も悪くないと言われてしまったしこれ以上は追及しづらい。
王子は割と当たり障りのないことを言っていた気がする。ノアのことが心配でほとんど聞こえなかった。
二人きりの時なら何か教えてくれるだろうか?
とりあえず、入学式はつつがなく終了した。




