第八話 大騒動
よく考えれば、荻野目姉妹の件の方が先に処理しなくちゃならないじゃないか。
タイムスケジュールがグダグダだ。
もう少し落ち着て考えろよ。
幸太郎が壊される前に、なんとかしたい。
まあいい。
すぐに動け。
町長と教育委員会には郵便で送る。
母の持っているシリコングローブをはめて、指紋が付かないように細工する。
そのくらいは中学生でも知ってるよ。
サスペンスドラマは見てるからね。
校長のところには、朝一で届けてやる。
さて、どんな反応するかね?
ネットの情報では、校長も握りつぶす可能性はある。
JCなめんなよ。
反応次第では、即刻ネットに乗せて世界中にばらまいてやる。
あ~私もサイコはいってんなあ。
まずは第一弾。
カツアゲショーですわ。
うまくつないで、幸太郎の顔にはぼかしが入ってる。
これだけで事件化できるかは不明だが、高校進学は絶望だな。
さて翌日、校長室にはうまく配達できた。
透明マントスゲーな。
たぶん昼までには反応があるだろう。
担任の顔色が楽しみだ。
小柳真理と坂本澄子は、小さくなって目立たない。
いまや八人のうち六人が休んでいるからな。
給食の時間になって、少ししたら担任がどす黒い顔して教室に入ってきた。
「荻野目・未知やすえ・山田花子・末成由美、校長室に来なさい。」
もう青いなんてもんじゃない、土気色だよ。
五人が教室から出ていくと、途端にざわざわとし始める。
「小夜ちゃん」
みどりが来た。
「大丈夫?」
さやかも来た。
「ああ、私には関係ないことだし。」
「そりゃそうだけど。」
「しばらくほっときなさいよ、さあ席に戻って給食の最中でしょ。」
私に言われて、二人は席に戻った。
二人には動画を提供してもらったしね、もうちょっとしたら中身もわかるかしら?
給食を優雅にいただいて、さっそく女子トイレに駆け込む。
個室で透明マントを被って、周りを警戒。
気配がないので、そっと廊下に出る。
校長室の様子をうかがうと、落ち着いた声が聞こえてくる。
「これは君たちで間違いないですか。」
どうやら動画を見せているようだ。
五人は押し黙って返事もできない。
私は外廊下のベランダから、しっかり録画している。
透明マント越しに、映像はくっきり入る。
「黙っていても話は進みません、これは君たちなのですか?」
「荻野目、どうなんだ?」
荻野目は目に涙を浮かべて、小さくうなずいた。
「なんと言うことだ、こんな犯罪紛いのことをして。」
校長、それはマガイじゃない。
れっきとした犯罪だ。
「この男子生徒は一人なんですね。」
またうなずく。
「いったい何度こんなことを…」
担任・知らなかったじゃすまされないぞ。
「担任くん、君はきづかなかったのかね?」
「ははい、私には少しも…」
「それはそれで問題ですね。」
校長の管理責任にもなりますぜ。
授業ブッチしてまだ観察してる。
三十分もしないうちに、まずは荻野目のかーちゃんが来た。
「な・なにかの間違いでは?」
「おかあさん、すでにそんな段階ではありません。」
校長は悲痛な声で告げた。
他人事はおもしろい、ついうひひと笑いが出てしまった。
校長は、くだんのDVDを再生して見せた。
みどりたちが撮影した、遠距離からのボケた動画に続いて、私のハイビジョン映像が流れる。
荻野目の母は、うっと言って口元を押さえた。
ブランドものっぽい上着の袖が揺れる。
途中で入ってきた未知やすえの母親も、茫然とそれを見ていた。
「言い訳も弁護も必要ない状態です。」
「でではどうせよとおっしゃるのですか?」
「義務教育の場所ではありますが、矯正施設に移行するか…」
校長の言葉に、二人は間を見開いた。
「そんな!」
「このことが広まれば、他の生徒にも動揺が広がります。ことは、謝って終わりではないのです。」
山田・末成の親も来た。
「私としましても、かばいだてできない状態です。」
校長も苦り切った声を吐く。
そりゃそうだ、せっかく平穏無事に教員を務めて、あと数年で定年だというのにこの騒動。
自らの進退にも影響する。
校長、残念だがまだ第二弾があるんだぜ。
田舎町の町内ということもあり、町長も教育長も在庁していた。
さぞ驚いたことだろう。
昼食もそこそこに、学校に走ってきた。
町内には私たちの本郷中学校、北山麓の北部中学、東の川沿いにある東中学の三校がある。
人口二万五千人の街には不似合いな立派な校舎だ。
DVDには、丁寧な説明書きもそえてやった。
いわゆる内部告発と言うやつだ。
町長と教育長、学校教育課長は真っ青になってやってきた。
うはははは
それみろ、大問題だ。
担任~ザマミロ~
あんたの今後が楽しみだよ。
私の苦しみを知るがいい。
だがこれは序章に過ぎないことを、あとで知るのだ。
あんたみたいな教師を私は許さない。
さっきから盛んに矯正施設と言う名称が連呼されているが、それは中京市の港区にあるアレだ。
徹底した団体行動を基本とした、言うなれば軍隊式訓練校。
表向きはよさげなことを言っているが、裏に回れば虐待行為まったなしのすげえところだ。
なんで知ってるかって?
実はイヌHKでやってたからだよ。
たまには面白いものを作るね。
ラーメン屋のテレビで見たさ。
ビンボーでもラーメンぐらいは食えるんだよ。
荻野目姉妹は涙目で首を横に振っている。
未知やすえの親は、金切り声を上げた。
「そんなところ、娘が死んでしまいます!」
「ではどうなさると?」
「おおさ・浪花市に親戚が降りますので、そちらに転校を!」
「転校なさると。」
「はい!」
「そうですか…それも解決のひとつですな。」
町長は、うなずいた。
真ん中禿げてて、両脇の毛が薄い。
パッと見・落ち武者に見えるよ。
教育長も黒い顔を上下させている。
おっさん呑みすぎだろう。
ぜったい肝臓にきてるよ。
そのうち肝硬変になるんじゃないか?
山田花子の両親も叫ぶ。
「う、ウチは中京市に親戚がおりますのでそちらで。」
末成由美の母親も言う。
「うちは古都市に!」
三人は行き先が決まったな。
ふふふ
「う、ウチは…」
荻野目家は、この田舎町中心の家系だから、そんな遠くに伝手がない。
「お、お母さん…」
「す・水郷市ではいけませんか?」
それに校長が冷たく言う。
「できれば県外がよろしいかと。」
母親は頭を抱えてしまった。
よしよしお前らは矯正施設行きだ。
幸太郎に一生消えない傷を付けやがって。
なんとかみどりとさやかにフォローさせよう。
まてよ、男子がいいかな?
馬淵伸二がいいかもな。
あいつは人がいいからな。




