第七話 囮
幸太郎という子は、線の細いどちらかと言うと坊ちゃんな感じの男の子である。
育ちの良さが見て取れる、シャツもいつもきれいにプレスされている。
髪もさらさらで、むちゃくちゃいい匂いのしそうな子。
たぶん、田舎町と言うことを差し引いても、ずば抜けてアイドル顔してる。
まあ、田舎町のことだから、どこまで金持ちかはしらないが、そこそこ家も太いらしい。
荻野目洋子はそこに目をつけて、毎回カツアゲているそうだ。
ちょっとほかのクラスで聞き込んできた。
うまく隠しているので、私も知らなかった。
だが、それは完全に犯罪だ。
恐喝罪と言うのは、強盗である。
これには執行猶予も付きづらいし、実刑も重い。
よくそんな犯罪を犯すと思っていると、彼女らは遊びだと思っているらしい。
遊びで、言い訳が立つと思うか?
ノリ?
そんなもんはてめえらだけに通用することさ。
世間様はそんなに甘くはないと思うぞ。
現実の重さに直面したら、お先真っ暗。
将来の展望もなくなる。
狭い田舎町のことだ、噂に乗った時点で縁談すらなくなる。
さて、どう説得するかね?
つか、荻野目姉妹に理解できるのだろうか?
あまりにも感性が幼なすぎる。
でもなんとかしないと幸太郎はつぶれてしまう。
真面目で繊細な子だ。
だいたい、自分のことが少し上向いたと思えば、すぐこれだ。
おせっかいなことはわかってる。
でも、私の身代わりにはできないでしょ。
昼休みの体育館裏には、荻野目姉妹とその取り巻きが、幸太郎を連れてきた。
私は、女子トイレで透明マントをかぶって、ここに来て待機していた。
ビンゴ
やっぱり来たか。
奴らが幸太郎から金品を取り上げるところを、しっかりハイビジョンで撮影する。
ちょまて!
幸太郎のズボンを脱がして遊ぶな!
みんなでよってたかってもてあそぶもんだから、幸太郎はなんか出しちゃったぞ。
アレ、大丈夫だよな。
白い膿みたいなやつ。
出したぞ。
変な病気とかじゃないよな。
なんてな、JC だってそのくらいは知ってるよ。
幸太郎、大丈夫だろうか?
華奢だけど、幸太郎だって十四歳の男の子だよ。
そりゃあ可哀想だよ〜。
てか、荻野目慶子!まさか乗るのか?
乗っちゃったよ。
あんあん言ってるよ、幸太郎が。
慶子も、ハアハア言ってるよ。
こんなの、教育委員会には出せんでしょう。
あとでカットしてやらなきゃ。
あああ、サイフからカネ取ってるよ。
そこだけ見れば、売春にも見える。。
いちばん小さい、未知やすえが乗っかって、お尻をフリフリしてる。
やべえ
あいつら、とんでもなくやべーことしてた。
これは、中学生としてもやったらアカンやろ。
ある意味、梨沙よりアカン。
どっちかというと、コイツらから破滅させへんと……
いや、うちの学校ホンマに大丈夫かあ?
五人が去って、幸太郎はゴソゴソと股間をティッシュで拭いている。
「幸太郎くん」
私の声に、幸太郎はびくっと肩を揺らした。
「ひっ」
「私よ、心配しないで。」
できるだけ優しい声を心がける。
そして、声にヒールを乗せる。
「ひっひっ」
幸太郎は、情けないのか押し殺したように泣き始めた。
「ひどい目にあったね。」
「朽木さんのほうが、はるかにひどい目にあってるじゃないか。」
泣きながら私を見上げた。
「私はいいのよ。」
「ひっひっ、よくないよ」
しゃくりあげる姿は守ってやりたくなる。
「ほら」
私は、ハンカチでほぼの涙を拭ってあげる。
「ありがとう。」
「悔しいねえ、どうしょう。」
「先生に相談する?」
幸太郎が聞くが、そんなもんは却下だ。
私は、吐き捨てるように言った。
「あいつは、頼りにならないよ。私のことも、現場で握りつぶしてる。」
「ええ?じゃあどうすればいい?」
「こっちの犯罪行為については、私のいじめより先になんとかしないとね。」
「う・うん」
「でも、幸太郎くんの顔まで出ちゃうしなあ。」
「ボクなら大丈夫だよ。」
「なんとか顔は消してみるよ。」
「けす?」
「さっきの、動画に撮ったの。」
「ええ?」
「ただし、ネットに出すわけにはいかないから。」
私は顎を人差し指でさすった。
「校長と、教育委員会と町長かな。」
「?」
「直接見せるよ。」
「ぼ・ボクも協力するよ。」
「ふるえているじゃん、まかせてくれる?」
「うん、顔出していいよ。」
「それは、最終手段だよ。ここで何が起こっているか、わかってもらおう。」
そのうえで、次の手を考えるよ。
幸太郎くんの名誉も守るために。
DVDに焼いて、こっそり置いてくるか。
『解決に動かなければ、校長の実名でネットに晒す』とでも書いてやる。
こっちは身元がバレても、ぜんぜんかまわない。
どうせ第二弾では、私はさらしものだ。
ただ、校長室はわかるけど、教育委員会ってどこにあるんだ?
帰って調べよう。
警察には、時間差で知らせる。
これは、郵便でいいさ。
私はゆっくりと笑って見せた。
幸太郎くんは、にこりと笑って頷いてみせた。
教室に戻ると、山本みどりが目を送ってくる。
しょうがないな〜
私は、Vサインを小さく上げた。
家に帰って、さっそくパソコンで編集をかける。
すっげえ安モンのパソコン買ってきたんだよ。
なかなかうまくいかないか。
でも幸太郎くんの顔は消えたみたいだ。
カツアゲと強姦は、別ファイルにしておいた。
たぶん、ファイル1から見るだろうし。
衝撃が少ない順でいいだろう。
こんなんやってると、げんなりしてくるよ。
気持ち悪い。
男性の場合、強姦罪が適用されるかはわからないけど、無理やり童貞奪われたのは可哀想だよね。
いままで男の子のを見たことないからわかんないけど、彼のそれがごりっぱなのかどうかはわからない。
未知やすえが乗っていたのが衝撃すぎてね。
ふう〜
目が疲れた。
お風呂入ろう。
なんだか、ブラがゆるい。
肌に跡もついてないし、ホックも一番奥なんだ。
なんだか下もよく見える。
体のほとんどが、アブラでできているようなものだったのに、筋肉も見える。
剣の素振りが効いてるかな?
さて、証拠はもう少しあると良いんだけど。
あした、だれか生け贄にならないかな?
…なんて思ったこともありました。
なんで荻野目姉妹に詰められてんだ?
後ろには未知やすえ・山田花子・末成由美がいる。
ちくしょう逃げられない。
「くつき~何考えてる?」
荻野目洋子が口火を切る。
「なななにってなんにも。」
「はあ?なんか嗅ぎまわってるだろう。」
「私は梨沙のせいで、人ごとに関われるほど余裕はないよ。」
「ほんとかあ?」
「ただ…」
「ただ?」
「いじりと犯罪の境界線はわかってる?」
ぴしり!
私のほほに平手が飛んだ。
「おだまり。」
「…」
「あんたたちが破滅するのは勝手だけど、幸太郎まで巻き込むのはアカンやろ。」
「なにを勝手なことを!」
未知やすえが吼える。
「勝手だよ。あたしたちは中三で受験生だ。余計なことで受験を失敗したくない。」
「なんだよそれは。」
「貧乏な母子家庭には、高校浪人することはできないんだよ。」
「はあ?私立に行けばいいだろう。」
「どゆこと?」
未知やすえは荻野目洋子に聞いた。
これぐらいの読解力もないのかあんたは!
「つまり、朽木んちは貧乏だから、私立高校の学費は払えないんだよ。」
「ああ、そう言うこと。」
「とにかく私には関係ないってことさ。」
「ふん、あんたもよけいなことするんじゃないよ。」
「ああ、しないよ。」
うっそぴょ~ん。
私は、下を向いてベロ出してやった。
私が梨沙にやられっぱなしなのはなぜかと考えて見ろ、そうして安閑とはしていられないはずだぞ。
ふふふ
あんたたちのムービーもあるが、今のも撮影済みだ。
SDカードも三枚目だぞ。
ムービーのハードもDVDにコピーしてある。
外付けハードにもバックアップ録ってあるしな。
今はイチTBでも安くなってる。
せいぜいゴブリン一匹分だ。
梨沙たちのグループが壊滅したら、次に沈むのはあんたたちの船かな?
タイタニックは浮かんじゃこなかったんだよ。
泥船の上で破滅のダンスを踊るがいいさ。




