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第六話 疑惑

兵頭まこはアホなりに考えていた。

なぜ、朽木小夜は自分を助けたのか?

なぜ、あんなに強いのか?

あんなに強いのに、梨沙にやられっぱなしなのはなぜだ?

訳が分からない。


大の男三人をあっという間に片づけた。

サヨは手を出してはいけない相手なのではないか?

夜も眠れないほど考えて、翌日、知恵熱が三十九度出てしまった。


あべ静江は、焦っていた。

仲間が次々とインフルエンザに罹り、出席できない。

仲のいいまこも休んだ。

熱が三十九度もあるらしい。

考えるに、グループは三人しか教室にいないのだ。

ほかのグループに絡まれたらまずい。


自分で判断できない。

グループのことは、梨沙が決めていた。

梨沙もいない、和泉もいないでは、なにも行動できないではないか。

隣にいる小柳真理に声をかけた。

「真理ちゃん、梨沙ちゃんのお見舞いどうする?」

「インフルエンザになった人には、接触してはダメって先生が言ってたわよ。」


「そうよねえ、それよりあたしは数学が三〇点だったことがママにバレてたいへんなの。」

「あたしも三五点だった。」

「ママが、塾に行くか家庭教師か決めろっていうのよ。」

「うわ~どっちもいやだ~」

「だよねえ」

横から坂本澄子が声をかける。

「かっこいい大学生なら、家庭教師もいいんじゃない?」

「そうね~」

あべ静江は、けっこう乗り気になってきた。

「じゃあ家庭教師にしようかな。」

「そうしなよ、あたしも見に行きたい。」

「おい!」


金のあるやつァいいね。

横で聞いてて情けないよ。

あたしゃ数学は九五点だったさ。

だっせえの。

五点マイナスは、暗算でやっちゃったからだってさ。

ちくせう。

家庭教師も、顔がよくっても性格が悪いかもしれんじゃない。

顔のいい奴で、性格が好かったら女たちが捨て置かないだろう?


JCに手を出す悪いやつがいたらどうするんだろう?


梨沙なんか、性格は悪いけど顔はいいからな。

チチは小さいけど。

女の形してりゃいいって奴だっているさ。

いかんいかん、暗い方に思考が行ってしまう。

いじめダメゼッタイ。

やっぱ、家庭教師に襲われて、卒業前に妊娠してしまえ。

そんでもって、堕胎できなくなるまで隠してやるのさ。

うまく逃がしてさ。


うわ~、まだ思考が暗いなあ。


どちらにせよ、アホ高校がアホ高校Ⅱになるだけだろ。

もう師走だぞ、今からやって志望校が上がるとは到底思えんよ。

FランクがEランクになったところで、アホに変わりはないさ。

せいぜい短大か専門学校に入って、すぐに結婚でもしてくれ。

私はぜったい負けないぞ。


山本みどりが廊下の見えないところから手招きしてる。

どうしたんだろう?

周りを見回して、目立たないように廊下に出る。

まあちびでデブだから場所を取るんだけどね。

松本さやかと一緒に歩いていく。

彼女たちに着いていくと、渡り廊下の隅の茂みの裏に入った。

「どうしたの?」


「小夜ちゃんをいじめてるグループが、インフルエンザで休んでいるでしょう。」

山本みどりが小声で言う。

「そうだね、五人も休んでる。」

「そしたら、荻野目洋子と荻野目慶子の双子が、彼女たちを〆ようって相談してたの。」

「ほえ?」

「どうも、小夜ちゃんに対するいじめが表面化すると、彼女たちも危ないみたい。」

松本さやかが真面目腐って言う。

「あぶない?」

「みんな気が付いていないけど、あの子たち幸太郎くんをパチってるのよ。」


「へえ~、そこまで見てる余裕はなかったな。」

「でしょう?私たち、幸太郎君がお金とられてるところ見ちゃった。」

「みどり、それあいつらにバレてないよね。」

「隠れてたからだいじょうぶ。」

「そっか~。」

私は胸に手を当てて、深く息を吐いた。

「で、実は動画撮っちゃったんだけど。」

「ばばか、そんなことしてばれたらどうすんだよ。」


「ばれてたら、今ごろあたしたちも標的にされたてない?」

山本みどりが、小心者の癖に洒落たこと言うじゃない。

「これ、小夜ちゃんにあげる。」

「あたしがもらってどうするんだ?」

「小夜ちゃんなら何とかしてくれそうな気がする。」

「う~」

「あたしが持ってるより、確実だと思う。」

「わかった、預かっとく。」


ちっ荻野目姉妹め、裏で阿漕なことしやがって。

一緒にやるにはデータが少ないな…

なにかいい手がないかな?

オスカルなら知ってるかな?



放課後オスカルに聞いてみた。

『隠密(インジビジブル)かな?』

隠密…ってなに?

『簡単に言うと、人から認識されづらくなるスキルだよ』

それいいね。

『魔物にも獣にも気づかれなくなる』

おおい、すぐそれ教えて。

『えっと、そこの棚の三番目の本だよ。』

ここ?

『そうそう、そいつだ。』


私は革表紙の本を出してきた。

羊皮紙でできているから、重いんだ。

私の体には、それほどに感じないけど、これ単体で三キロはありそう。

『そこにインジビジブルって項目があるだろう?』

あるある

『そこを読めばわかるよ。』

手間がかかるなあ。

『そのくらいは、覚悟したまえよ。』

へいへい


またクソ面倒な書き方してるなあ、言い回しがくでぇ。

ふむふむ

そうか

わかった、これなら特に魔力なしでも使えそうだ。

『あ、ちなみにそこの棚には、透明マントってものもある。』

なんですと!

そう言うものがあるなら早く言ってよ。


「スキルのほうが実用的だよ。』

マントの方がお手軽じゃん。

『マントは魔物や獣には効かないんだよ。』

どうして?

『匂いでバレるから。』

なるほど。

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