第二〇話 リヨン
「なあサヨ、あれはないのか?」
「あれ?」
「あれだよあの甘いやつ。」
「なんだ、ケーキがほしいのか?」
ロンはうんうんと激しく首を上下する。
鍛えているからいいけど、普通のひとなら首の筋肉を傷めるぞ。
「しょうがないな、今日は新型だ。」
私は、新しい花柄の皿に、モンブランを乗せてやった。
みな、一様にきらきらした目を向ける。
「まだだぞ、マテだぞ。」
私は、一枚一枚ゆっくりとモンブランを乗せていく。
「ちょっと、ザクスさんまで!」
ザクスさんの目もキラキラしている。
小さな三相のフォークを添えて、みんなの前に並べてやった。
「こ・これはなんと言うものでしょうか?」
「私のところのお菓子だよ。」
ザクスさんはサラを持ち上げて、しげしげと眺めている。
「みんな、食べていいぞ。」
ばっとフォークを持ち上げて、一斉にかぶりついた。
「「「「うま~い」にゃ」」」
「ううむ、なんと言ううまさだ、この上に乗っているのは?」
「ああ、それは栗をベースにしたクリームです。」
「おおお!なるほど!」
ザクスさんは、味もわかってないのか?
「はいお茶。」
こんなこともあろうかと、ちゃんと紅茶も用意してるよ。
アイテムボックスなら冷めないからな。
「ザクスさん、お茶です。」
「ありがとうございます。」
一口飲んで目を見開いた。
「なんと言うおいしさ、軽い渋みにほのかな甘みもある、なによりこの香り!」
「後味もすっきいりするにゃ。」
ジニーは、猫舌なのに熱いお茶が好きなんだよな。
だいたいそれは、トワイニングの青缶なんだよ。
レモンの皮とかいろいろ入ってる?
良く知らん。
モレラに行ったとき見つけたんだよ。
カルディ。
ケッタマシーンで行くのはけっこう遠いよ。
でも、JCは冒険するんだよ。
モレラ岐阜までは十キロくらいあるからな。
けっこうな冒険だ。
みどりもさやかもぜいぜい言ってたな、もう少し鍛えないとな。
ショッピングモールの中は別世界だよね。
ザラもあるし。
もう少しジーンズショップとか欲しいよな。
ほていやの振袖とかすっごく興味あるけどな、お正月過ぎちゃったし。
しまむら楽器のピアノ、ウラヤマしいよね。
さやかとか習ってるんだよ。
かっこいいよね、弾けるかな?
そりゃあ押せば音は出るさ、でも弾いてるのを見たことないしな。
こんどテレビで見てみよう。
三ケ月で弾くピアノとかやってたよね。
いや、買えよって話だけどさ。
そうか、オーガ十匹も獲れば買えるかな?
よし、森に行くぞ。
いかん、思考が飛んでた。
「じゃあやるよ、モリーしまっといて。」
私は青缶をモリーに渡した。
「なにこれ?」
「え?お茶の缶だよ、ここをスプーンでこじると開くんだ。」
ぱかりと開けて見せる。
「ティーポットに、モリーに一杯、ジニーに一杯って入れてからお湯を注ぐとうまいお茶になる。」
「人数分入れるの?」
「そいじゃ渋くなっちゃう。その辺は経験値でね。」
緑色の小さなティーポットは、ザクスさんが凝視してるよ。
「わかったわかった、ティーポットが欲しいのね。」
なんでもほしいやつだ。
しょうがない、これも持たせるか。
「銀貨三枚、貸しだからな。」
モリーは露骨にいやそうな顔をする。
「タダじゃいけないって、師匠も言うし。」
「わかったわよ、そのくらい稼いでくるわよ。」
「そうしてくれ。ザクスさん、どうしたの?」
「わ、私にもそれ、売ってもらえますか?」
「なんでも欲しい人だな、もう一個あるからどうぞ。」
ザクスさんは、すぐに財布から銀貨を出した。
「お茶はありますか?」
「えっと、あるはずだけど、あったありゃ?オレンジペコだ。」
「それは違うのですか?」
「ええまあ、オレンジの香りがします。」
「おお!それは珍しい。」
ザクスさんはすがるような眼で私を見た。
「わかりましたよ、明日はいつごろ出発ですか?」
「はい、夜明けには。」
「いくつ用意するんですか?」
「最低十個、ポットとカップのセットも欲しいです。」
「うひゃ~、じゃあすぐに戻って仕入れてきます。」
「よろしいのですか?」
「大丈夫かと思います、では。」
私はすぐにロン宅を出て、ヴィラ=ホーネルに戻った。
『お帰りサヨ』
ただいま、ちょっと戻るわ。
『あら、早いね』
用事ができたんだ、ごめんね。
私はドアをくぐって家に戻った。
ケッタマシーンが壊れたままだ、しょうがなく私は近鉄駅まで走る。
たぶん、アクアにもあったはずだ。
ティーポットが心配だが、カップならたくさんある。
紅茶缶はあるだろうか?
空が飛べないと、やけに電車は遅く感じる。
まだ学校始まる前でよかったな。
三つ編みに黒ぶち眼鏡のスタイルは変えてない。
だいたいオーバーオールにトレーナーかシャツ。
寒いと、ダウンのコート。
変なのに絡まれるのはごめんだ。
手加減もむずかしいし、人間相手にブーストかけるとすぐに骨折している。
特に何もなく、夕方の電車は水郷市駅に着いた。
カルディには、トワイニングの紅茶缶、二十個。
ラッキー、アクアの贈答品コーナーにティーポットがある。
カップアンドソーサーも箱入りであるじゃん。
二十個ずつ買い込んだよ。
お店の人はびっくりしてたけど、知らんぷりやぞ。
リトルミイの図柄がシブい。
これは自分用に欲しいな。
お母さんにムーミンママのカップを買う。
このくらいは、ぜいたくに入らんだろ。
堂本先生にお願いして、家の契約も進めてもらった。
新学期からは新しい家だ。
がんばって稼いで、家のホールにピアノ置くんだ。
かっこいいやつがいいな。
あ、教室はどこにあるんだ?
さやかの通ってるところに空きがあるといいなあ。
そいつは今夜、聞いてみよう。
夜明けって言うから、今日は早く寝なきゃ。
おやすみなさい。
三月の夜明けって、むちゃくちゃ寒いのよ。
こないだ買ったダウンのショートコート着てきてよかった。
作っておいた皮袋に、カップとポット、紅茶缶を入れてある。
「サヨさん!」
ランタンの灯りに浮かぶザクスさんも白い息を吐いている。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
「これに全部入ってます、代金は帰ってからで結構です。」
「そ・それでは…」
「ロンたちが無事に帰ったらよろしく。」
「わかりました。これは?」
「魔法の皮袋です、大きさは少しですが二五〇キロ入ります。」
「そそんな!」
「いいんです、帰ったらロンにお返しください。」
「かたじけない。」
これで荷物が減るだろう。
ロンたちは、荷物を点検に行っている。
「なんだあ?ガキがいるぜ。」
三十歳くらいのおっちゃんがいる。
ちょっと顔色の悪い、痩せ型だな。
「おい、フリッツやめろ。」
「ああ・こりゃあザクスさん。」
「この人は、大事な取引先だ、失礼のないようにな。」
「へい」
「おっちゃんもザクスさんの護衛かい?」
「ああ、そうだ、リヨンまでは遠いからな。」
「じゃあ、そうとう強いんだね。」
「おうさ、おうともよ。」
持ち上げられて、鼻が伸びる。
「悪いが、同行のロンたちは若輩者だ、よろしく頼むよ。」
そう言って、フリッツに銀貨二枚を握らせた。
「お?おう、まかしときな。」
にこにこと嬉しそうに笑う。
「たのんだよ。」
そこから離れてモリーを探す。
「モリー」
「あっサヨ」
「なんか嫌な予感がする、この火炎玉持っていきな。」
「火炎玉?」
「あぶないとき投げつけると火が出る。
オークぐらいなら効く。
用心して二十個入ってる。
「わかった、ありがとう。」
私は皮袋に戻して渡した。
「これは?」
「行李二個分の皮袋だ、首から下げてな。」
「うん」
『おたちー』
馬車一〇台のキャラバンは、がたがたとホロを揺らしながら出発した。
商人は五人ぐらいらしい。
それぞれに護衛も付いている。
道々小さな村で、売ったり買ったりするらしい。
私は、少し心配しながらそれを見送った。
夜明けの太陽が、向こう正面から差してきた。
「今日もいい天気だ。」
私は、ヴィラ=ホーネルに戻って少し寝た。
ザクスさんのくれた金貨一〇〇枚あるから、換金すると二七〇〇万円?
全部換金するのもなんだよ、ピアノの金だけ換金しようか。
しまむら楽器には、縦型のピアノしかなかった。
体育館にあるようなやつはいくらするんだろう?
ググったらすげえ、七〇〇万円!(彼女はスタインウェイのHPを見ちゃったみたいですね)
ハンパねえなあ。
でも欲しいから買っちゃおう。
車より高いんだなあ。
三月末になって堂本先生から入居のお話があった。
「今度の大安を見て入居しましょう。」
「大安っていつですか?」
「う~ん、明日ですねえ。」
「どないせえっちゅうねん!」
「掃除も草刈りも全部済んでいますよ、いつでも入居OKです。」
ダンドリはや!
私が頼もうと思っていたこと、すでに終了じゃん。
「急なことですが、引っ越し業者も手配しました。」
「なにからなにまですみません。」
「だいじょうぶです。」
母親にはメールで知らせておいた。
いまなら、金出せば暮らしているまま移動できるらしい。
さすが堂本先生は仕事がきっちり!
うちなんか、引っ越すと言っても箪笥はひと竿しかないし、洗濯機も冷蔵庫も小さいのしかない。
引っ越し業者も張り合いのない話だ。
おかげで、引っ越しなんか九時から十一時で全部終わってしまった。
まあ、距離も二キロくらいだし。
早いもんだ。
お茶を出す暇もない。
お母さんにポチ袋を持たせて、運転手に渡してもらった。
二人のお昼ご飯と言って。
えらい恐縮してたけど、ないよりあった方がいいよね。
「ようし、私の部屋にはベッドを置くぞ!」
「あ、小夜ずるい、私も欲しい。」
そんなこと言ってたら、表に幸太郎パパの車が来た。
家の前ばーっと駐車場で、五台は置けるよ。
この舗装部分は道だと思ってたら、ウチの駐車場なんだってさ。
「やあ、引っ越しは済みましたか?」
「おかげさまで、いま」
「それは良かった、食事がてら車屋に行きましょう。」
「ほえ?」
「このまえ頼んだやつが入ったそうですよ、ちょうど大安ですから納車しましょう。」
「ええええ~?」
いつのまにそんなんなってんのよ。
幸太郎も苦笑してる。
水郷市のちょっといいお店でごはん。
医者っていいもん食ってるなあ。
回らないお寿司とか。
『よん鳥』なんてお店、見たこともないぞ。
鶏懐石料理のお店らしいけど、わけわからん。
昔ながらの数寄屋造り、前庭の植木が黒ぐろしてる。
古くさい廊下を進むと、四畳半の部屋。
ナイフフォークのお店よりゃましか。
これも勉強しなきゃな。
テーブルマナーなんて知らなくても世間は通るが、どっこい人は見てるものだ。
高校に入ったらそれも勉強だな。
お腹膨れたら、次はディーラーだ。
かあちゃん、知らないうちに見に来てた。
ま、運転するのは彼女だからな、どれでも好きなの選べよ。
つか、注文はいってるってかい?
ちゃんと私にも言っといてほしいものだ。
車は新車でと言ったのは私。
そんくらい、苦労してきたお母さんにはご褒美さ。
幸太郎パパに教えてもらって、かなり運転の練習したそうだよ。
親切なんだな。
そう言えば私は、幸太郎ママに会ったことがない。
幸太郎と似てるのかな?
男の子は母親に似るって言うけど。
ディーラーが出してきたのは、シートにビニールのかかった新車。
白のツーリングワゴン。
すげー、2リットルだけど3ナンバー。
中も広い。
かわいいクッションがほしいな。
うれしいうれしいうれしい。
私はぴょんぴょん跳ねてしまった。
私たちはディーラーで別れて、車に乗って帰ることにした。
ほんの二〇分くらいのドライブだ。
幸太郎パパは手を振ってディーラーを出て行った。
さて、事故もなく無事家に帰ってきた。
スサノオ様の交通安全のお守りは強力だ。
車に付けておかなくては。
家に落ち着いたけど、あまりの家具のなさに泣けてくる。
フローリングのLDKには本当になにもない。
かろうじて古いテーブルとイスが二脚。
台所用品はやはり安物で、なんだかキッチンに似合わない。
「お母さん、お茶飲む?」
「そうね、頼める?」
「わかった。」
古いヤカンをコンロに乗せる。
最新式の、三口ガスコンロがビルトインされている。
いままでとは、かけ離れた設備に戸惑いが隠せない。
かと言って、華美に走るのは愚か者することだ。
私は、いつもの食事テーブルに湯呑みを置いた。
「せめてソファーくらいほしいわね。」
「そうね、真ん中にラグとか。おいおいそろえて行けば良いよね。」
「カネは天下の回らないもの。しめて生きましょう。」
「おっしゃるとおり。」
「そうだ、四月からピアノ習いたいんだ。」
「へえ、良いんじゃない?私も小学校のころ習ってたわ。」
「へえ〜、初耳。」
「途中で、進路を看護師に替えたから、ピアノはやめた。」
「そう?いままでできなかったことやってみたいんだ。」
「ピアノ買う?」
「さやかの先生に聞いてみる。」
「餅は餅屋か、そうだよね。」
最初の百万円からこっち、母にも考えが変化しているようだ。
家を買ってもまだまだお金は残ってる。
私は、二階に上がって自分の部屋を開けた。
なんちゅうか、広いよ。
吹き抜けの向こうに六畳間が四つあるんだけど、ふすまで切ってあるので、実質十二畳。
使う人もいないから、そのままブチ抜きにしてある。
すみにお布団が置いてあるだけのがらんとした空間。
こっちの六畳はフローリングで、奥は畳になってる。
お尻が痛いといやなので、畳の方に座る。
勉強机と椅子がほしいな。
「あ。さやか?悪いんだけど、さやかのピアノの先生、紹介してくれない?」
「いいけど、サヨちゃんが習うの?」
「そうだよ。さわりだけやってみたい。」
「ふうん、いいんじゃない?」
よかった。
「今日レッスンがあるから一緒に行く?」
「何時から?」
「夜七時から。」
「わかった、お願いね。」
「了解」
「お母さん、今夜ピアノの先生んとこ行ってくる。」
「なによ突然。」
「やると決めたら早いほうがいいんだよ。」
「はいはい、そいじゃごはんは早めにしよう。」
さやかとは近鉄駅で待ち合わせ。
先生のところはすぐ近くなんだそうだ。
…って、ほんまに近所じゃないか。
「こんばんわ〜」
「こ、こんばんは。」
「あらいらっしゃい、この子は?」
「レッスン希望?」
「なにそれ?見学?」
「はい、あのう十五歳からでも習えますか?」
「習いたい人は、六十歳からでも来るわよ。」
「へえ!そうなんだ。」
「まずは、さやかさんのレッスン見てね。」
千恵子先生は、年齢不詳・髪に白いものが見えるんだけど、着ているものは柔らかそうなブラウスと、フレアースカート。
ぱっと見、いいとこの奥さん。
あ。
この曲知ってる、ショパンの子犬のワルツだ。
さやからしいコロコロした可愛い曲だ。
先生は古い本を持ってきた。
「これがバイエルよ。」
「バイエル?」どっかの悪い製薬会社かな?
それ、バイオシンじゃないの?
「基礎の基礎で、これを全部弾けるようになると初級は終了して、さやかさんみたいに普通の曲になるの。」
「へえ~、じゃあそれ買います、どこに売ってますか?」
「島村楽器に行けば買えますが、新品ならありますよ。」
「それください。」
教本を手に入れた。
「あの、うちで練習するピアノを買いたいのですけど。」
「紹介しましょうか?」
「こ、こんなにするもんなんですか?」
私は昨日調べたHPを見せた。
「これ、スタインウェイですねえ。日本製ならこんなに高くないですよ。」
「へ?」
「あなたが見たのは、スタインウェイのグランドピアノ。現在はアメリカ(ニューヨーク・アストリア)とドイツ(ハンブルク)の2か国で生産されています。」
「舶来?」
「そうです、日本だとヤマハやカワイが作っています。」
「へえ~、いくらぐらいですか?」
「ウチはカワイですから、百五十万円から四〇〇万円くらいですよ。」
「じゃあ中間で二百万円前後のやつがいいな。」
「置く場所はあります?」
「はい、玄関のホールがありますので、大丈夫です。」
「小夜ちゃんとこ、町営住宅でしょ?」
「あ、この前家代わったの、近鉄の駅の北に家買った。」
「ほ~え~?」
「だからピアノ置けるんだ、それに習いたいと思ってさ。」
「そうなんだ、よかったね。」
「も~荷物がないからスッカスカよ~。」
「あはは」
「じゃあ、ちょっと体験レッスンしてみようか。」
このあと生徒はいないそうなので、体験してみた。
「ありがとうございました。」
「はい、じゃあピアノは注文入れていいのね。」
「はい、母も了承していますから。」
「わかりました、すぐ手配しますね。」
「よろしくお願いいたします。」
私たちは先生の家を辞して、家に向かう。
「ここだよ。」
「…大きいね。」
「まあね、幸太郎パパの紹介なんだ。」
「あ~なんとなく納得。」
「寄ってく?」
「う~ん、今日はまだごはん食べてないから帰るよ。」
「わかった気を付けてね。」
「うん」
音楽か、学校の音楽の授業は受けてるけど、楽譜が読めない。
どうすべ?
YOUTUBEで見てみると、意外と詳しくのってるな。
え~っと、こうか?
音楽の教科書の裏には、紙ピアノが付いてる。
これがこうか?
ふむふむ。
超理解が効いてるな、譜面が頭に入ってくる。
これなら楽勝だな。
右手・左手…並列思考でなんとか。
やりすぎるなよ、最初は下手にやれ、つたなくそこそこ…
私の目は、弾き手の指先に集中している。
目からの情報を目いっぱい引き込む。
よ~しよ~し、良い感じだ。
バイエルなんざすぐに覚えてやる。
リヨン大公は近日家督を継いで領主となった。
三十がらみの渋いおじさまである。
金髪碧眼、おひげも濃いめの金色。
褐色に近いけどね。
声はバリトン。
低いけどよくとおる。
なかなかのヤリ手と聞くが、今までの統治を踏襲して堅実に運営しているそうだ。
何しろ南東方面では随一の領地を持つすごい貴族で、大公というくらいだから昔は王様だったのさ。
リヨン地方(オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏)リヨン近郊や旧オーヴェルニュ地方に広がる農地では、畑作の輪作(サイクル栽培)が行われている。
夏(7月頃)になると、美しい黄色のひまわり畑と、ベージュ色に実った小麦畑がモザイク状に広がる美しい田園風景が見られる。
リヨン地方(リヨンを州都とするオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏)における年間の総穀物生産量は約310万トンであり、そのうち主力のパンコムギ(軟質小麦)の栽培面積は19万7,890ヘクタール(穀物・油糧・蛋白作物全体の約33%)に及ぶ。
地域圏全体で年間約310万トンの穀物が収穫されており、小麦(主に軟質小麦)は穀物全体の作付面積の40%以上を占める重要作物である。
域内では主にアリエ県やピュイ=ド=ドーム県などが生産を牽引しているが、北部盆地に比べると単収が低め(1ヘクタールあたり約3〜6トン前後)となる南部の特徴も一部併せ持つ。
現状を見ると、この地方の収量は現状日本の七割…は多いな、六割に目減りしているようだ。
肥料の概念がないことや、家畜がいないことが影響している。
家畜の糞は、絶対的な栄養素である。
せめて家禽がほしい。
鶏を大量に飼えば、その糞は代えがたい栄養素になる。
まだまだこの地方は発展の余地はある。
なんてぇ解説をギルドで聞いて、リヨンに興味がわいた。
たぶん、令和の日本よりはかなり遅れているんだろう。
日本より少なくても、人件費がべらぼうに安いから成り立つ。
リヨンの殿さまは、王国に収める税金を小麦で払う。
日本円に換算して、千五百億円ぐらいになる。
もちろん、それは寄り子寄り孫の納める税金も含まれるが、総収入で言えば五千億円くらいか?
すげえな、大公さま。




