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第十九話 家を買う

なんて思った日もありました~

でも、人生が終わった訳じゃない。

この一か月は高校の予習が入ってた。

教科書だけじゃない、サブ教材の参考書や問題集がぎっしり。

それを片付ける日々である。

高校に入学前にこんな宿題があるってどうよ!


そんなある日、幸太郎がやってきた。

「どうしたの?」

「ああ、うちのお父さんが少し話したいんだって。」

「お父さん?幸太郎の?」

「うん」

幸太郎の父親は、そこそこいい家柄の跡取り息子だった。

いい大学を出て、田舎町総合病院で内科医をしている。

言ってみれば『ええとこの坊ちゃん』である。

幸太郎を少しふっくらさせたような、温厚な顔をしている。

髪の毛をぴしっと七三になでつけて、ゴルフウエアでまとめている。

ジャケットも高そう。


田舎町総合病院は、のんびりした雰囲気のよく言えば平和な、うがってみれば年寄りの社交場という感じ。

そこの内科医である、風邪薬と高血圧、糖尿病の薬を出していれば終わりのような。

私は、幸太郎のあとについて外に出ると、黒いセダンにその父親が乗っていた。

人のよさそうな顔で、にこにこしている。

「おはようございます。」

私は真面目に挨拶をする。

しっかり頭を下げる。

母の勤め先だしね。


「おはよう、ちょっと見せたいものがあるから車に乗って。」

私は幸太郎を見た。

「はい。」

幸太郎もうなずくので、後部座席に乗り込む。

「受験では幸太郎が世話になったようで、ありがとうね。」

「いえ…たいしたことは。」

「なに、君がいてくれたおかげで落ち着いて試験が受けられたと言っているよ。」

「それほどのことはしていません。」


ものの十分もかからず、車は目的地に着いたらしい。

近鉄駅のすぐ裏手くらいか。

田んぼの中に一軒の家があった。

「ここ?」

「うん」

車を降りて、家の前に立つ。

築十年くらいの二階建て。

庭も広く、車なら五~六台は入れそう。

広いが、草が生い茂っている。

空き家になって一年ぐらいか?


「どうだいこれ。」

幸太郎パパが手のひらで指す。

「これって…」

「ああ、ウチの患者さんの家なんだけど、今買い手をさがしてるんだよ。」

「へえ、ズバリおいくら万円でしょうか?」

「あはは、楽しい子だね。一五〇〇万円で、値引き可。」

「お金はないわけではないですが、お安いほうが良いです。」

なんだかんだ言って、五千万以上あるんだ。

「一二〇〇万円までは下げてもいいそうだよ。」

「いいですね、母を説得してきます。この家、気に入りました。場所もいいし。」

ただ、中が見えないと困るな。

「そう?鍵を借りてるから、中も見てみようか。」

「中が見えるなら、見たいです。」


広いLDK、これだけで町営住宅が入りそう。

玄関ホールも広いし、ホールの奥にバス・トイレ。

横に田の字の八畳六畳の四部屋ある。

真ん中に四尺廊下。

二人暮らしにはデカすぎる。

これに二階があるなんて、料理旅館じゃないよ。


床の間・押入れ、掃き出し廊下、雪見障子に唐襖絵。

欄間も入って、すごい造り。

左奥の方が仏間、右は客間か?

押入れデカいやつ。

「この家好き!」

私は、躍り上がる。

スカートが、ふわりと巻き上がる。


幸太郎が少し赤くなった。

こりゃあデカいわ。

お母さんが、びっくりしそうだ。

でも、安いよ〜。

土地も含めて、この値段なら言うことないよ。


「おじさま、ありがとうございます。この家なら、申し分ないです。」

「それは良かった。おうちでよく話し合ってね。」

「はい、そうします。」

車に戻って走り出す。

「入試はみんな合格したみたいだね。」

「はい、おかげさまで。」

クルマは、小さな喫茶店で止まった。

幸太郎パパに促されて、店にはいる。


開口一番、感謝された。

「息子から聞いたよ、いろいろと世話をしてくれたんだね。」

「どこまで話したのよ。」

「ぜんぶ、お母さんには話せないこともあったからね。」

「そうか〜、男の子もいろいろあるよね。」

男同士の話ってやつですね。

男親がいてよかったね。


男の子も強姦されたら、ああなるのかと思ったことも。

荻野目姉妹は逃げたけど、本当はどうしたらいいのかな?

犯罪には違いないぞ。


「私としては、このまま有耶無耶にはしたくないと思っているよ。私の立場からは、あまりきつくは言えないけど。」

「でも、逃がすことではないです。あいつらのしたことは、許せない犯罪でもあります。それから、強盗された金品については、速やかに返却されなければなりませんし。」

「君は、けっこう堅いね。見たところ、可憐な感じなのに。」


「ふふふ、私は、新年まではすごく太っていたんです。それでいじめられていました。最初は、死のうとも思っていました。ある日を境に、考えが変わって地味に反撃の機会をうかがっていたんです。」

「そりゃすごいですね。」

「頭から水をかけられて、びしょびしょの制服を写真に残し、取られた金額を記録し、破られた教科書を写真に撮りました。」

「すごい精神力だね。」

「彼女らは、自分たちが私の精神力を鍛えているって、最後まで気づきませんでした。」

精神力って言うのは、一部魔力にもなるんだよね。

幸太郎パパは、少し目を開いてそして笑った。

「私に情け容赦を期待したのが間違いです。彼女らのこうあってほしいと言う希望を私がかなえてあげる必要を感じません。」

「きみは…強いね。」


幸太郎パパの感想はまあ、そんなもんだよ。

「関わり合いになってしまった以上、ちゃんとした解決を見たいと思いますよ。」

「そうだね、もう少し学校とも相談するよ。」

「私は、弁護士をはさむことをお勧めします。」

「そうかい?」

「うやむやでも好いとおっしゃるならそのままで。」

幸太郎パパは、考え込んでいた。


やがて、私を家に送り、二人は帰って行った。

幸太郎パパ、うちの懐事情まで知ってる模様。

油断ならないなあ。


「幸太郎」

「うん」

「おまえ、前途多難だなあ。もし浮気でもしようものなら…」

幸太郎も青くなったようだ。


家に帰って、母を待つ。

その時間は無駄にすることもない。

高校で買ってきた教科書を猛烈な勢いで読み込んだ。

けっこうな量があるんだけど、これを読むのはかなり時間が消費される。

お母さんが帰るまでに、夕飯の支度を済ませる。


「いえ~?」

「うん、すごい良い家なんだよ。私気に入っちゃった。」

「そんなにいいの?」

「うん、土地が二〇〇坪ある。」

「うへえ?そんなに広いの?」

「すごく広いLDKがあって、アイランドキッチンになってる。」

「ふうん。」

「LDKだけで、この住宅ぐらいある。」

「それ、いくらするの?」


「千五百万円のところ、おまけして千二百万円なんだって。」

「土地も含めて?」

「そう」

「大バーゲンじゃない!」

「そうだよ。」

「買いよ!買い!」

「現物も見ないで?」

「あんたが良いって言うならオッケーだよ。」

「わかった、幸太郎パパに言っておく。契約関係はあとで立ち会って。」


「おう!まかしときな。」

「中の清掃作業は、お掃除本舗に頼んどく。」

「たのまい。」

「外回りもきれいにしないとね。」

「その辺は、シルバーに頼むし。」

「おお~、手回しがいいね。」


「この際だから、お母さんの車も買おうよ。」

「ええ~?車あ?」

「だって、お出かけするにしても、買い物に行くにしても車ほしいよ。」

「車かあ。」

「軽でもいいんだ、どうせ二人だけだし。」

「そうね、幸太郎パパに聞いてみよう。」

「なんで。幸太郎パパ?」


「だってセンセイって顔が広いし、意外としっかりしてるからね。」

お母さんはしれっと言う。

「意外はひどいなあ。」

「車屋にも知り合いがいそうだしね。」

「そりゃそうか。ああいうお商売は、顔が広いね。」

私も評価は微妙だな。

「お商売かよ。」

「ありゃあ、技術を売る商売さ。」

「あはは、そいじゃ私も同じじゃん。」

「そうか~。」


みんな自分のスキルを売って暮らしてるんだな。


まだ日にちに余裕があるので、コッツウォルズに遊びに行くことにした。

飛翔の魔法を使うとき、カラダのみで飛ぶのは、カタチが合わない。

いろいろ思案して、椅子にしてみた。

椅子に座って、そのまま飛翔する。

これもカッコ悪いかな?

船と言うのも考えたんだけど、う〜ん。

ディレクターチェアに座りながら、考えているよ。

ヴィラの前で考えていると、オスカルに追いたてられた。


「下手に考えているより、行動しなさい。」

は〜い

ふよふよと、飛んでいるとハーピーが来た。

『ぎゃぎゃ〜』

うるせえ

がん

ふらふらと落ちていく。


北の空に、大きな影が見えるが、かなり遠い。

ワイバーンだろうか?

点みたいなものだが、私の視力には捉えられた。

鷹の目スキルだよ。

賢者の能力は多彩だけど、一気に使えるようにはならない。


使ったことないスキルは、少しずつ慣らしてやらないと使えないんだ。

自身のレベルにも影響される。

ディレクターチェアに座ったまま、街道脇をすいすい飛んでいると、たまに商人が見上げたりしている。

馬車は、馬が道を知っているから、よそ見していても平気なんだ。


ま、空飛んでる子どもは珍しいかもしれないけど。

オーバーオールは、新しく買ったよ。

デカすぎて、ガバガバだったから。

ダンガリーシャツも新調した。

コイツも、ガバガバでシャツの肩が二の腕の真ん中まで来てた。

自分がどれだけ太かったのか、実感したよ。


一番変わったのは、パンツ。

グンゼのおばさんパンツが、ずり落ちたので、かわいいパンツ買って来ちゃった。

下着専門店ってところにも、はじめてはいった。

さすがに合わせてもらわないと、自分ではさっぱりわからない。

ふつうの十五歳って、こんなもんかな?

なにしろ、エルエルサイズばっかしだったからな〜(笑)

(くるよちゃんキャッチャーでLL?)


閑話休題


キャンプ用のディレクターチェアは、さっさと折りたたんで収納して、モリーたちを訪ねる。

家がバタバタしている。

「こんちわ〜」

「あっサヨだにゃ」

「サヨ〜ごめ〜ん、あしたから護衛で出かけるんだ。」

「そりゃあ忙しいときに来てごめんね。」

「そろそろ片付くから、いいよ。」

「仕事があるのは、いいことだよ。」


「サヨ、ズボン新しいのにゃ?」

「おお、わかるかいジニー、前のがガバガバになったから変えたんだ。どうだい?」

「似合ってるにゃ。」

「よかった。」

片付けが済んで、モリーがお茶をいれてくれた。

「サヨがくれたカバンにものを詰めるのに、いらないものや新しく入れたいものを選んでたんだ。」

「なるほど、じゃあこれ持っていきなよ、お湯を入れるだけで食べられるよ。」

おなじみ、カップヌードルを四つ出した。

「これは?」


「スープだよ。この線までお湯を入れて、三分待ったら出来上がり。」

「へえ、おもしろいね。」

「いま喰うにゃ!」

「え~、いま喰うの?」

「喰うにゃ、おなかすいたにゃ。」

「まあいいか、じゃあこうやってふたをめくって…」

魔法でお湯を出す。

「サヨ、器用すぎじゃない?」


「こんなもん、応用なんだよ。」

「へえ。」

「モリーは頭が固いなあ。」

「ほら、ジニーはこのフォークで食べな。」

「にゃにゃ」

「あ、熱いよ。」

「うにゃ!」

「ほら~」


私は冷たい水を持たした。

「熱いにゃ。」

「元祖猫舌なんだからな。」

「にゃ。」

少し冷ましてから食べるようだ。

「お、いい匂いだな。」

ロンが奥から出てきた。

「ロンも食べるにゃ?」


「あるのかい?サヨ」

「あ~るよ~」

俳優のあの人みたいに言ってみる。

「食べるの?」

「腹減った。」

「ふむ、オリバーも食う?」

「あるかい?」

「あ~るよ~」


結局遠征用に出してやったのに、おやつになってしまった。

「じゃあこっちは遠征用ね。夜に喰うんじゃないよ。」

「「は~い」にゃ」

どうだかね

「もう一個は雇い主用だ、ザクスさんだろう?」

「そうだよ、今回はリヨンまで行くんだそうだ。」

「へえ!馬車で何日?」

「東地区じゃ最大の街だからな、十日はみないとな。」

「それじゃ食料もなかなか調達できないな。」


「う~ん、途中にはそこそこ街もあるからな、知らんけど。」

「しらんのかい?」

私はがくりと肩からコケた。

「しょうがないな、これがガーリックソルト、ニンニク味だよ。肉焼くとき使いな。」

「うわ~すげえもの持ってるな。」

「これが『焼肉のたれ』薄切り肉に最適、食いすぎるなよ。」

「すごい瓶だな、ガラス製じゃないか。」

「まあ、その辺に棄ててきたらあかんよ。」

「もったいなくて捨てられないよ。」


「う~ん、これ持ってく?」

一個の瓶を出した。

「これは?」

「塩コショー」

「そんな高級品!」

ロンが目を見張った。

「なんだよ、いま喰ったスープにも入っていたろうに。」

「夢中で食ってたからわからなかった。」

「まあいいや、これも持ってきな、ザクスさんによろしく言ってくれ。」


「わ・わかった。」

「サヨはどこいくにゃ?」

「ああ、市場へ物売りに行こうかとね。」

「へえ、何売るの?」

「あんたたちにあげた皿。」

「あれ売るの?」

「今日は何種類か仕入れてきたんだ。」

「ど・どこから?」


「商人の仕入れ先はシークレットだよ。」

「そ・そうだった…」

「どんなのか見せてくれよ。」

オリバーが言うけど見せたやらない。

「見たら、あんたたちが全部買うって言うからだめ。あんたたちにはまた持ってきてやるよ。」

「はうううう」

「じゃああたしたちも着いてくよ。」

「準備は終わったのかい?」


「ええ、大丈夫。あとは、市場でイモ買うんだ。」

「わかった、じゃあ行こう。昼までに入りたいよ。」

「よっしゃ、俺も行くぞ~」

「うちもにゃ」

「なんだよそれじゃ全員じゃないか。」

ぞろぞろと出かける。

市場の顔役に銅貨五枚払って場所をもらった。


青物は売り切れたようで、その後に入る。

板を並べてテーブルを作って、白いシーツを広げた。

「なんだか豪華だね。」

「見栄えは大事さ。」

モリーは私の手元をのぞき込む。

私はちゃちゃちゃっと、小さな皿やカップを並べた。

一枚、大きな花柄の皿を真ん中に置く。

これは客寄せだ。


その横に、ちょっと見た目の好い鉢。

これも、高くて庶民には手が出ないやつ。

そうやって並べていると、横でモリーがよだれを垂らしている。

「ダメ、マテ!」

手のひらで制止する。

「きゃ~ん」

モリーがノリ好く鳴く。

そうしたら、ロンがウルト=ザクスを連れてきた。


「おお、こんにちはサヨさん。」

「あ、ザクスさん、こんにちは。」

「サヨさんは、焼き物も売るんですか?」

「ええまあ、ちょっといいものが手に入ったので。」

「どれどれ、おおこれはセットものですか?」

「まあ、似たようなものを買ってきたので、そろって見えますが。」

「これは好いものですな、リヨンの街でも評判になりそうだ。」

「そうですか?」


「よし、全部買いましょう!」

「はあ?」

ザクスさんはにこにこしている。

「いやでも…」

「好いものは仕入れる、商人の鉄則ですな。」

「並べたばっかしなんですけど。」

「いいじゃないですか、全部買いますよ。」

「はあ、そいじゃどうぞ。」


ちょっと面食らってしまった。

百均のたいしたことない皿だよ。

大皿と鉢は別のところで仕入れたけど。

「この大皿の繊細な筆遣い、さぞかし名工の作品に違いない。」

それ一三八〇円のカレー皿だよ。

「こちらの器は見たことのない意匠だが、大胆な色遣いが美しい、どちらも甲乙つけがたい名品ですぞ。」

その菓子鉢も、一五八〇円で買ってきたんですけど。

知り合いの陶芸おばさんの作品です。


「リヨンの殿さまに良い土産ができましたよ、いやサヨさんには助けられてばかりですな。」

ザクスさんは景気よく皿と鉢に金貨を払ってくれた。

「じゃあおまけにこちらの小皿もどうぞ。」

「いやいや、こんな良いものをおまけなどと、こちらも一つ銀貨一枚でいかがですか?」

「いや~それは…」

「やはり安かったですか、では銀貨二枚でお願いします。カップもそれでよいですか。」

というわけで、ぞろぞろ並べてあった皿やカップは全部お買い上げだ。

銀貨三〇枚以上になったな。


「これじゃ店出すまでもなかったじゃん。」

あとは、ちんけな一輪挿しとかしか残ってない。

つまようじ入れとか、おばちゃんの手すさびで作ったものだ。

「おじょうさん、これは何?」

横のおばちゃんが聞いて来た。

「ああ、これは一輪挿しと言って、窓なんかに花さして飾るものです。」

「それはいいわね、じゃあこれで。」

銀貨二枚出してきた。


「え?こんなに?」

「ザクスさんが認めたものですからね。」

「さすがザクスさんの目利きですね。」

「ふふふ」

おばちゃんは嬉しそうに一輪挿しを持っていった。

さすがにカエルのつまようじ立ては売れないな。

一個だけ残ってもしょうがない。

「おばちゃん、これおまけ。」


「あらかわいいのに、いいの?」

「残ってもしょうがないからどうぞ。」

「ありがとう。何を入れようかしら?」

どっかの商家の女将さんじゃないかと言うくらい物腰が柔らかい。

「まいどあり」

きょうはこれで店じまいか…

「サヨさん」

「あれ?ザクスさん、どうしました?」


「折り入ってお願いがあるのですが。」

「はあ、ではロンの家でお話ししましょうか?」

「それがいいですな、路上で話すことでもないですから。」

私たちは、店じまいしてロンの家に戻った。


「サヨさんは、マジックバッグをお持ちとか?」

私はロンをにらんだ。

ロンは脂汗をかいている。

「ロンが変わったカバンを持っていたので問い詰めたのです、ロンのせいではありませんよ。」

「そうですか?」

「そこでですね、ぜひカバンを分けていただきたいのです。」

「だってこれ、金貨二五〇枚しますよ。」

「ええ、なんでも荷馬車三台入るそうですね。」

「そこまで大きいかな?」


「けっこうな大きさですよ、その値段にふさわしいですね。」

「どうしても?」

「どうしてもです。」

「師匠から安売りはするなと釘をさされているんですが。」

「そこをまげてお願いします。商売を広げるにはどうしても必要なんです。」

「そこまでおっしゃるなら、お譲りします。そうですね、金貨一〇〇枚でいかがです?」

「おま!」


ロンだまれ、お座り!


「そんなに安くて良いのですか?」

「ほかならぬザクスさんのことですから。」

「わかりました、すぐに届けます。」

「余分に入れちゃだめですよ。」

「こ・これは…」

「ダメですよ」

「はあ、わかりました。」


「その代わりと言ってはなんですが、ロンたちのことよろしくお願いします。」

「かしこまりました、かならず。」

「あ、こんなのどうです?」

私は丸い缶に入った飴ちゃんを出した。

「これは?」

「飴ちゃんです、ご存じですか?」

「いえ、噂に聞いたことはありますが…」

「おまけに差し上げましょう。旅のお供にどうぞ。」


「こ、こんなに?」

「なに、子供のお菓子です。」

子供の私が言うのもおこがましいが。

「えっとあとは、ポテトサラダか~これも出そうか。」

「ま、まだあるのですか?」

「あ・焼きそばパンがあった、これもどうぞ。」

マジックバッグにいろいろ詰め込んできたからな、放出してしまえ。

「こ、これは?」


「あ~!サヨ・それを出すのか?」

「あ?なんだよロン。」

「おれも欲しいぞ。」

「そうかい?じゃああんたたちの分はモリーに預けるよ。」

「ほっ」

胸をなでおろすな。

「そんなにおいしいのですか?」

「めちゃくちゃおいしいです。」

ロンはこぶしを握って力説した。



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