第十六話 神原屋のニッキもち
しばらくあっちのことは、フィルチに任せて、新学期が始まったので、そちらに集中することにした。
と言っても、三年のカリキュラムはすでに終了しているので、登校しても自習時間しかない。
クラスから一三人が減ってしまい、なんともさみしい状態。
いくらなんでも、三クラスしかないのにこれじゃね。
実に私のせいなんだけどね。
新学期初日、教室に入るとみんな怪訝な顔をしている。
「おはよ〜」
後ろからみどりの声がする。
「おはようみどりちゃん。」
ふりかえった私を見て、みどりは犬のうんこ踏んだみたいな顔をしている。
「だれ?」
「やだなあ、小夜だよ。」
「えええ〜!サヨちゃん?」
「「「「「なんですと〜!」」」」」
「そんなに変か?」
「変って、別人じゃん。」
「そうかな?」
「痩せたってレベルじゃないよ。」
「そうかな?」
「サヨちゃん、痩せたらすごい美人だよね~」
「そうかな?」
「そうだよ、冬休みに何したの?」
「え〜断食?」
「ラマダンかよ!」
「はけるパンツがなくて、買いに行ったよ。」
「や〜ね、男子も居るのよ。」
みどりが赤くなった。
ああ、そうか〜。
「でもさ〜、ブラもガバガバで使い物にならないのよ。」
「それだけ痩せたらそうなるわね。」
ひとしきり痩せた話で盛り上がったが、空の席を見てみどりが口を開いた。
「梨沙、泣きわめいて床屋にいたらしいよ。」
「泣きわめく?」
「丸坊主にされたらしいよ。」
「ああ、あれか。」
「知ってるの?」
「冬休み最後の日に、校長と担任に呼ばれた。梨沙と和泉が丸坊主になってた。」
「どうして?」
「全部バラしてやったんだ。三年になってから梨沙たちのやったこと。」
「シラ切らなかったの?」
「弁護士さんに入ってもらった。証拠山盛り積んでやったから、逃げられない。」
「スゲ」
「担任は、クビだな。」
「え?今日は、だれが来るのよ。」
「知らんし」
「ま〜だれでも良いか、どうせ自習だし。」
「進路相談もないからね。受験まで一ヶ月だし。」
「そうだね、」
みどりは、真顔で切り出した。
「小夜ちゃんが、ヤケ起こさないか心配だったんだ。」
「ある意味ヤケ起こしてるね。」
「ぷっ、よく言うよ。」
「ビンボー人をいじめるとどうなるか、よくわかっただろうさ。」
さやかが参加した。
「あの子たち、高校はどうなるの?」
「少年院送致だよ、一年か二年は、遅れて進学かね。」
「富田か済美女子にでも入るかな?」
「中京市にでも行くんじゃない?」
「あ〜そっちか。」
みどりは、キッツいなあ(笑)
「茶ブスとかさ〜あいつらのアタマでも入れるところはたくさんあるよ。」
さやかも負けずにキッツい。
「ま、道は分かたれたってことさ。」
「あんた、恨まれてない?」
「こんど何かしたら、すぐ捕まるさ。」
二人は、ちょっと首をひねる。
「弁護士さん入れてるんだよ、当然接近禁止つけてもらってるよ。慰謝料も、ガッツリ請求してやったから、少なくとも梨沙は親に返さないといけないぞ。」
「慰謝料……」
「ふひひ、高校の学費には困らないな。」
「小夜ちゃんが、悪人笑いしてる。」
「えへへ〜てれますやん」
「「ほめてないって!」」
もっともこの事件を境に、田舎町本郷中も北中も東中も、いじめがぴたっとなくなったらしい。
同時に、大野中・池野中でも大小のいじめが、すっかりなくなったようだ。
そりゃあ本式の裁判にかけられて、慰謝料とられて、少年院に送られるとわかったらアホなことしてられないわよね。
幸太郎くんは、京都に行ってから、なにか吹っ切れたように見える。
明るくなったし、よく話す。
男子の中でも、うまく輪に入れている。
数吉と馬淵伸二がいい味だしてくれたみたい。
良かったね。
さて、数学の掘り起こし、みどりが遅れた分を追いかけるから、一日中数学漬けだ。
さやかもアタマから煙吹いてる。
幸太郎は、数学得意だからな〜。
「でも、なんでサヨちゃんは痩せちゃったの?」
またそこに戻るか〜
「半分体質的に痩せられない状態だったそうだよ。それが、年齢と共に改善されてこうなったと。」
「ふうん、すごいね、高校デビューだね〜。」
そんなことになりたくないなあ(笑)
つか、地味な学校で地味に生活したい。
眼鏡も分厚いフレームにして、面積も広げて、三つ編みで行こう。
前髪で顔も隠してな。
それじゃ今と変わらないって?
地味オブ地味が持ち味です。
うちのかーちゃんが妙に美人なのがイカン。
病院では入院患者が言い寄ってくるらしいが、健康じゃないのになにができるんだよ。
金は一グラムで相場二三〇〇〇円前後こっちの金貨は十二~十三グラム前後なので、換金にかけると二十七万六千円。
いつもの癖で財布も持たずに学校に来たので、帰りに神原屋で大福を買おうと思ったのに現金がない。
いやゴメン、私のスマホはおサイフケータイじゃないから、それもない。
と言うわけで、手持ちの金貨を換金に入れたら、二十七万円くらいになった。
やっほい。
そんなに大福もニッキもちも買わんわ!
一個百六十円だぞ。
せいぜい十個ずつだわ。
モリーとジニーが喜びそうなので、こんどは和菓子を買っていくことにした。
あ~ロンが喰うから、やっぱ三〇個くらい必要か?
草餅も大福も買っておこう。
喜んでくれるといいな。
プラスチックのパックに入った大福とニッキもちと草餅を自転車のかごに入れて帰る。
お金があるっていいなあ。
盗られないのもいいなあ。
レジ袋に入った大福がカシャカシャ音を立てる。
大野町の百均で皿をたくさん買ってきた。
スープ皿とかカップとかも買ってある。
市場で売れるかなあ?
たぶん、大福とか売りだしたらすげえことになるんだろうな。
やらないけど。




