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第十二話 城塞都市コッツウォルズ

賢者サヨリーヌの伝説 いじめの標的がエグい反撃をする、衝撃の結末に全米が哭いた

などと言うふざけた題名ができたのはこの話を書いているときでした。


城塞都市の中には大きな川が流れていて、その支流もしっかり流れ込んでいる。

魔物が入ってこられないように、川の入り口にはがっしりした格子がはまっている。

ゴブリンくらいはムリすれば通れそうだが、そこは気にしていないみたいだ。

なかなか神経の太い住民たちだ。

定期的に屈強な住民たちが、ごみを取り除いているらしい。

それも半分は、Fクラス冒険者の仕事なんだ。


そんな大河には、大きな橋が何か所もかかっている。

きれいな飾りのついた橋は、昔勇者が魔法でかけたそうだ。

綺麗な訳だよ、これセーヌ川にかかってる橋だ。

確かナントカ言ったな(ちっとも確かじゃない。)

そうそう、アレクサンドル三世橋。

黒い欄干の飾りが金色で、これを三百年も前にかけたそうだよ。

勇者って何者?


他の橋は、手すりも太い石でできた無骨なものが主流である。

賢者のかけたやつも、あんまり飾りっけはない。

何やってるんだオスカル。

大河の支流は網の目のように街を縫い、水運が物流を支えている。

イシュタール大陸南東の、暖かい地方は優雅にしかもゆったりとたゆたっている。

もう少し東に行くと、峻険な峰々が並ぶ山岳が横たわっている。

そこから豊富な水源が流れ込むんだ。

だから、ここの川は透き通っていて美しい。


そこはまた、豊富な鉱物資源を産み、上流部にはドワーフの町が栄えている。


「うはあ、これはしっかり異世界だわ。」

私は街の様子を見ながら、ロンの家に向かう。

石造りの街並みは、屋根瓦も石でできていて、火災に強くなるよう考えられていることがわかる。

日本も西洋も、中世は火災がもっとも怖いものなんだな。

商業都市らしく、町並みには明るい商店が立ち並び、その門口(かどぐち)には様々な花がここを千度と花開いている。

日差しも明るく、街角では外にもストーブに火が入っている。

焚火って、どうして人が集まるんだろうね?


こちらも、若干冬のようだ。


そう言えば、ロンたちの衣装も厚手のシャツだったりする。

モリーは寒がりなのか、ローブの裏側はウサギの毛皮だ、重くないのか?

運河の橋を二つ渡ったところで、ロンたちの家に着いた。

わさわさと家が立ち並ぶ一角で、石造りで二階建てのけっこう大きな家だ。

どの家も、家にはアイビーがはっていて、窓辺には花が咲いている。

「ほえ~、立派なもんだね。」

私の声に、ロンは照れてる。

「そうかあ?」

「周りがでかいからそれほどに見えないけど、これは立派なもんだよ。」


ロンは謙遜しながらも、若干嬉しそうだ。

中は、奥に向かって広い構造で、入ってすぐは応接セットも並んだLDKになってる。


「二階が寝室?」

「ああ、それぞれの部屋がある。」

「ふうん、この奥が台所かあ。」

思ったより使い勝手がよさそうな家だ。

ヴィラ=ホーネルと比べちゃかわいそうだ。

第一、ここには魔物が来ない。

あれだけ頻繁に魔物が来たら、普通の神経じゃ持たないよ。

オスカルが異常なんだよ。


その後、女のコだけで市場に向かう。

小舟に乗せてもらうと、市場まではすぐだ。

運賃銅貨一枚。

高いのか安いのかわからんけど。

「お~、見たことない野菜がいっぱいだ。」

「そう?」

ジニーが指さしながら説明してくれた。

「これはギリス、こっちはモニモニにゃ。」

「へえ~。」

「薬草だけど、野菜と一緒に売ったりする。」


「薬草?」

「これを使ってポーション作るのよ。」

「モリーは物知りだね。」

「なに言ってんのよ。」

モリーは少しほほを赤らめる。


店先にあった、ちょっと固めの桃みたいなのが気に入ったので、二籠買い込んだ。

「あら、それはマジックバッグ?」

「そうだよ、それこそ行李ひとつ分だけど。」

「買い物にはそのくらいが良いわね。」

モリーはしげしげと眺めた。


ま・あとで作れるか聞いてみよう。

賢者にできないこともなかろうけど。


お肉屋さんも三・四軒並んでいる。

「ここはオーク肉とか扱ってる?」

「おお、このへんがオークだよ、ロース・ヒレいい感じだろう?」

「そうだね、一匹いらない?」

「オークを?」

「ちょっと見てよ。」

私は裏手に回って、オークソルジャーを出して見せた。

「おいおい、これはオークじゃないぞ。」

「顔が怖いけど、オークソルジャーだよ。」


「二階級上じゃないか。」

「いらない?安くしとくよ。」

「買う買う、このくらいでどうだ?」

「いやいや、通常よりでかいんだよ。」

「そいじゃこのくらいで…」

「まてまて、ワシも買う。」

 隣の肉屋も参加した。

「おい、お前らだけずるいぞ。」

結局全部の肉屋が等分して買い取った。


「よし、もうかった。」

「サヨ、オークソルジャーも狩ったの?」

モリーが青い顔をする。

「まあ、弱い方だよ。」

「あんたんちは、どんだけ危険地帯なのよ。」

「うひゃひゃ」

笑ってごまかす。

なんだかんだ言って、彼女らも神経太いよ。

ジニーは、ナニ考えてるのか、よくわからないけど。


市場で売っている野菜は、おおむね、屋敷の裏に植わっている野菜と変わらない。

だから、野菜を買うのは控えた。

あの野菜、いったい何年生えてんだ?

枯れては伸び、枯れては伸びしてんのかな?

ナゾだ。

だいたい、屋敷の畑の野菜のほうがうまいんだよ。

わざわざ買う気にならんよな。

お母さんにも食べさせたら、なんか元気になった。


「そう言えば、大賢者って、何年くらい前の人?」

モリーはクビをひねる。

「だいたい三百年くらい前の人よ。いつ亡くなったかは、記録がないのよ。」

オスカル〜やっぱり変なやつなんだ。

「勇者も三百年前とか言ってたね。」

「おたがいパーティー組んでたんだよ。」

「ほえ~。」


わたしたちは、大通りのカフェに落ちついた。

「なんだか、なに飲んでもサヨのお茶と比べちゃう。」

「あはは、甘いからたくさん飲むと、太りやすいよ。」

「ひい!」

「だから、ほどほどにね。」


私に言われると、説得力あるだろ。

言わせるなよ、なんか情けなくなってきた。

「あんな甘いものは、たまに口にするからありがたいニャ」

「ジニーの言うとおりよ。」

私がジニーを褒めると、モリーはくちびるをとがらせる。

「じゃあ、こんどはあま〜いケーキをもってこようと思ったけどやめよう。」

「「それはダメ〜」にゃ」

二人して合唱された。


「アレでロンも、けっこうな甘党なんだから。」

「酒のほうが好きだと思ってた。」

「顔だけね。」

「じゃあ、こんどはキッツいのを呑ませてあげよう。」

「サヨも、人が悪いね。」

きゃはは

みんな美味いものには弱いのさ。

それからしばらく、街の中を散策して教会に来た。


「デカい教会だね〜」

「南部最大の教会だからね。」

「へえ〜」

一片が一メートルはありそうな石材が積まれた、すげー建物だ。

荘厳なゴシック建築で、雨風にさらされて黒くなってる。

この辺は、この前先生が言ってたから、覚えてる。

「中に、オシリス女神様の石像があるのよ。」

「オシリス?」

「そう」

「へ〜、この辺は女神さまなんだ。」


入口は、五メートルも高さがある。

「ほえ〜」

「こっちよ」

モリーに手を引かれて、石像の前に立つ。

お賽銭くらいあげておくか。

私は、サイフを出した。

「ナニしてるにゃ?」

「ああ、お賽銭はどこにいれるのかな?」

「お賽銭?なにかな?」

「教会に寄付するお金だよ。」

「それは、シスターに渡すといいよ。」

おおそうか、シスターは……あ、あそこにいる。


私は近くまで歩いて声をかけた。

「シスター?」

「はい。」

「献金したいが、みなさんどのくらい出してるの?」

「まあ、お気持ちですから。」

そう言って、黒い箱を持ち上げた。

私は、銀貨を三枚出してみせた。

「そんなに?ご無理はなさらないでください。」

「ムリはしてない。」

そう言って、箱の中に銀貨を入れた。


「あなたにオシリスサマの加護がございますように。」

シスターは、軽く膝を折って応えた。

「それから、これは女神の血。」

と言って大きなワインを出してやった。

一升瓶に入ったアカダマだよ。

封印はむいてある、こっちの人には開けられないから。

「さて、帰ろうか。」

観光もできたし、また来る楽しみもできた。

私は、大手門から出て、しばらく歩いてからママチャリを出した。


帰りは少し上り坂みたいで、前より力が必要だ。

「ぬおおおお」

坂道を、一気に駆け上がる。

「うお〜弱虫ペダル〜ケイデンスオッケー!」

森の中は、さらに傾斜がきつくなるので、ママチャリを収納して歩きにした。

今日は魔物の機嫌がいいのか、家まで出てこなくて良かった。

めんどくさいからなあ。

あいつら、ちゃんと戦い方を組み立てないと、スカタン食らうんだよ。

「ただいま~」


『おかえり、どうだった?』

おもしろかったよ。

すごいね、商業都市コッツウォルズだって。

『そうだね、水の都とも言うんだよ。』

そうなんだってね、冒険者登録してきた、ほら。

小さなプレートを見せる。

『おお、よかったね。』

そう言えば、マジックバッグの作り方ってどう?

『どうって?君のスキルの中に組み込まれているよ。』


そうなの?

詳しく知りたかったら、その棚の一番下に本があるよ。』

ここ?

『そう、それを読めばわかるはず。』

じゃあちょこっと読んでみる。

じっくりと読んでみると、つくりは単純だ。

魔力の制御にコツがあるようだ。

『はいはい、そこの引き出しに皮袋があるよ。』

私の視線に、オスカルは苦笑いで指さす。


ここか。


十センチくらいの皮の袋があったので出してみる。

十枚以上入ってるぞ。

これで?

『やってごらん。』

ふむ、これか…空間の把握?う~ん

知ってる大空間と言うと、アレか・体育館!

よし、これで行こう。

魔力制御…制御…せいぎょ…SEIGYO…

よしこいやぁ!

ぎゅうんん!


ぱああああんん!


あ、はじけた。


ぱらぱらと皮のかけらが舞っている。

『わはははは』

わらうなオスカル!

もう一回やる。

みょんみょんみょうんん

電影クロスゲージ明度二〇

みょんみょんみょん

広さは体育館…

よし、こいやぁ!


みょみょん!


できたあ!

『お~、おみごと。』

へへ~ん、どんなもんだい。

『おみそれしました。』

ふふふっうまく行った。

『もう一個作ってみよう。』

はい、師匠。

『なんだそれは?』

いや~地元の人に聞いたら、大賢者はスケベで有名だったって。


『おい!そいつを連れてこい!説教してやる!』

あはは、ウソウソ。

今も越える人がいないほどすごい魔導士だったって。

『そうだろうそうだろう。』

私の師匠は大賢者の縁者だって言っておいた。

『まあ、それでいい。』

私は、何枚も練習して、魔法の皮袋を量産した。

また一枚が爆散した。

今日はこれまでだね。

『ああ、お休み』

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