第十一話 お出かけ
ヴィラ=ホーネルの周りには、ゴブがうろうろしているんだけど、やけに強い。
ゴブリンソルジャーとかゴブリンコマンダーとかだ。
ふつうの雑魚ゴブリンよりも、遥かに強い。
オークもやけに背が高くて、額から角が生えてる。
ツノがつくと、隊長格らしい。
角がついて、身体が赤くなると三倍速くなるそうだ。
オーガなんかも、三メートルから四メートルもあって、硬ったい。
『でも、うまくいなしてるじゃない。』
そりゃあまあ、やらなきゃ死ぬじゃないか。
これも慣れだよね。
『なるほど。』
オーガくらいなら、ほとんどルーティンワークになってきた。
あいつら硬いけど、柔らかい場所もある。
目ン玉とくちン中と●ン玉。
これを攻撃されると弱い。
そこで新しい手を開発しました。
じゃじゃん
『新しい手?』
これです。
ゴブリンを穴に入れて、軽いファイヤーを放り込む。
『あれー?』
ふふふ
『火が消えない。』
そう、キャンプ用品からヒントを得た、粘着性ファイヤー。
チューブから練りだすあいつですよ。
『同じ場所でずっと燃えてるんだ。』
そう、減衰を設定しておいて、いずれ消えるんだけど、すぐには消えない。
『ほほう、賢者である私にも気づかなかったね。』
うひゃひゃ、賢者越えたよ。
『本当だ。』
しぶといオーガなんかにも有効じゃないかな?
『うわ~鬼畜~』
なんだよ~
オーガだって生き物のうちだ、息ができなきゃ死ぬ。
その前に、肺が焼かれてシム。
『そろそろ、向こうの町に行ってみるかい?』
町か…
出不精ってわけではないけど、まるで知らない町はちょっと怖いな。
『オークに比べれば、街の人なんかやさしいよ。』
比べるもんが悪いわ。
道はあるの?
『もうちょっと下れば、すぐに街道に出るよ。』
そうか、じゃあ行ってくるよ。
『そこの棚に金貨があるよ。』
これ?
じゃらりと皮袋が音を立てる。
うわ、たくさん入ってる。
『ああうん』
入りすぎじゃない?
『ないよりはあった方がいいだろう。』
限度問題。
『ただ僕の時代の金貨だから、いま使えるかわからないんだ。』
それはどうかな?
まあたくさんあってもいいよ、アイテムボックスにいれるから。
『そこのカバンを持っていきなさい。マジックバッグになっているから。』
これ?
『容量は大したものではないが、使いやすいだろう。』
わかった農業フォークを入れていこう。
『そ・それは』
あはは、ウソウソ・フォークは担いでいくさ。
『服は?それでいいの?』
ダンガリーシャツにオーバーオールのジーパン。
スニーカーだけどまあ、いいだろうね。
麦わら帽子もかぶってこう。
『完全な農民だな。』
肩にフォークを担いで、ヴィラを出る。
黒いドイツトウヒみたいな針葉樹の森に、細い道が続いていた。
けものみちみたいだけど、草が踏んであるのでそこそこの広さもある。
いでよケッタマシーン!
アイテムボックスから自転車を出した。
十キロも歩く気はないよ。
本当はバイクがいいんだけど、まだ持ってないし。
免許もない。
十五歳じゃね~、免許は十六歳から。
異世界じゃかんけーないか。
でも、背が低くて足が短いからなあ。
バイクなんて足がつかねえ。
下り気味の道だから、軽快に自転車は走る。
なんちゅうかゆるい道だよ。
ひゃっほう
帰りはどうしたもんだろうねえ?
ぎゅうんと曲がるとゴブリンを見つけた。
すれ違いざま、フォークを突き出す。
フィジカルブーストが発動して、一気に串ざしになった。
普段ならナイフを出して、魔石をとりだすんだけど。
今日はめんどくさいので、こいつはアイテムボックスに入れていく。
焼いてる暇はないからね。
あとでやるよ。
あと少しで街道だ。
森の出口付近にオークがいる。
オークジェネラルだな、けっこう強いよ。
普通の冒険者なら十人ほどほしいところ。
私にはザコだけど。
MS05改 ザコ?
邪魔くさいなあ。
オークには、粘着ファイヤーをかます。
「ごぼおおおお」
息ができない様子。
ちゃっちゃととどめを刺す。
これもアイテムボックスに入れる。
細かいことは、あとに回すよ。
私の体は自転車で走っても、ぜんぜん疲れない。
体幹が爆上がりのせいかな?
ほどなく街道について、指示された右へ曲がった。
道は石ころがごろごろしていて、土の間に草が生えてる。
轍のところだけ踏み固めた感じ。
黒い森を出ると、ずっと草原になる。
人間が少ないから、ここまで畑にできないんだね。
街道に出て、一キロくらい走っていたら、前方でなにかと戦っている人がいる。
定番だな。
お姫様でもいるのかな?
わくわく
襲っているのはシャドウウルフか、行動は早いけどあんま強くないんだよね。
噛みつかれるのはいやだけど。
狂犬病とかイヤだよね。
五百メートルほど手前で自転車を収納して、自前の足で走る。
前方で戦っているのは、皮鎧を付けた戦士が二人。
軽鎧の小柄な女の子と、ローブの女性。
けっこう善戦してるよ。
ただ相手が悪い。
牙を押し返すだけで必死だ。
オオカミの習性として、獲物の頭上をぴょんぴょん飛び越える。
飛び越えながらおしっこかけるらしいんだよ。
エモノ認定されちゃうらしい。
彼らは荷馬車を守っているようだけど。
オオカミの速さに翻弄されている。
だいじょうぶなのか?
私は走りながら声をかける。
「助太刀いるか!」
大柄な男が気づいて答えた。
「た・頼む!」
「よし!」
その場で高くジャンプ。
高さ三メートルほどの放物線を描いて、先頭のウルフに迫る。
自分より高いところから攻撃されたことがないのか、動きが鈍い。
私は、正面のウルフにフォークを突き立てた。
さっとフォークを抜いて、右に居る大振りな奴の頭を叩く。
フォークの先が、頭蓋をたたき割る。
「そこ!」
左から飛びかかってきたやつの顎から上に突き刺す。
「ファイヤー!」
小さな炎の粒を五発飛ばして、ローブの女性の前のウルフを貫いた。
「うそ…」
「エアバレット!」
どすどす!
空気の塊りを受けて、戦士の前のウルフがすっ飛ぶ。
「トドメさして!」
「お・おう!」
若いのが剣を縦に刺した。
「アイスアロー」
遠巻きにしていた四頭は、弾道軌道で上から串刺しにした。
「これで全部か?」
「ああ、すまんな。」
「あ~、毛皮がザクザクかなあ?」
遠巻きの四頭は、頭を中心に穴あきになってる。
「まあいい、しまっとこう。」
アイテムボックスに入れていく。
「あ・アイテムボックス?そんなに入るの?」
ローブの女性が目を見開いた。
自分の倒した奴は、ボックスにしまった。
彼らの倒したものは、そこに残す。
「けがはない?」
「う・うん…」
ローブの女性が答えた。
「なんだ、噛まれたのか?どれ」
私は、若いのの腕を持ち上げた。
「うう…」
「ムリすんな。」
噛み口からばい菌が入らないように注意しながら治癒をかける。
滅菌・清掃
傷口をきれいに流したら、縦に傷が走っている。
清掃で、血の跡が消える。
「ヒール」
私は、腕を持ち上げたまま治癒をかける。
見る間に割けた腕が元に戻った。
「すごい…」
「そっちは?怪我無い?」
大男に向かって声をかけた。
大男は手を持ち上げて言う。
「大丈夫だ。礼を言う。」
「なに、行きがけの駄賃ってやつだよ。」
「ありがとにゃ。」
ちっこい少女は、よく見れば三角のネコミミとシッポが付いている。
「おう、無事で何より。」
「ああ、あの!」
馬車の陰から三〇歳くらいの男が声をかけてきた。
「なにか?」
「危ない所を助かりました。私はウルト=ザクスと申します。」
「あ・ごていねいに、サヨです。」
「すごいですね、見ればお若いのに、魔法を駆使しての戦い。」
「なに、相手はシャドウウルフですからね、たいしたものではありませんよ。」
「ええ?冒険者でも手古摺るすばしこくてしつこいやつですよ。」
そうなのか?
慣れちゃったよ。
「失礼、ロナルド=ウイーズリーだ、助かったよ。」
でかい戦士が声をかけてきた。
右手を出す、手のひらもでかい。
「どうも。」
私は手を握り返した。
「いてててて、なんてえ力だ!」
「あ、ごめん。」
「どうも、オリバー=ウッドだよ。ヒールありがとう。」
若いのも自己紹介した。
「どういたしまして。」
「モリーよ。アイテムボックスすごいわね。」
ローブを着た魔法使いらしい女性が手を出してきた。
私は、気を付けて、そっと握った。
「ああうん。」
「ジニーだにゃ。」
よく見たら鼻の付け根にソバカスが散っている。
こっちは英国風の名前が多いのかな?
「よろしくね、サヨだよ。」
農夫然としたオーバーオール姿の私は、フォークを担いで笑った。
ま、それ以外はハンプティ・ダンプティみたいな体型なんだよ。
長い三つ編みが特徴なんだ。
「あなたたちはどこに向かっているのさ?」
「ああ、私たちは向こうのコッツウォルズと言う町を目指しています。」
答えたのはザクスさんだ。
「コッツウォルズ?」
どっかの湖沼地帯かな?
ウサギのいるとこ。
「はい、この辺では一番大きな商業都市ですよ。」
「じゃあ、魔石とか売れる?」
「ええもちろん。ギルドもありますから。」
ウルト=ザクスは、頷いた。
そりゃあ助かるよ。
「「う~ん」」
ロナルドとオリバーは、横倒しになった荷馬車を押していた。
「なにやってんの?」
「オオカミに襲われたときにこけちゃったんだ。」
なんとまあ、馬が無事そうで良かったよ。
「ウィンガーディアムレヴィオーサ。」
ひょいと手を振ると、荷馬車がふわりと持ち上がった。
「すごい浮遊魔法!」
モリーはいちいち驚いてウザい。
「すげえな、荷物満載の荷馬車を持ち上げるとは。」
ロナルドは、額の汗をぬぐった。
「簡単な初歩魔法だよ。」
「農民なのに?魔法を?」
オリバーが聞いてくる。
「農民だって魔法ぐらい使うさ。」
馬をみるが、けがはしていないようだ。
黒い大きな目がかわいい。
栗毛のがっしりした馬で、少し足が短い。
サラブレッドと言うより、ばんえい競馬の馬みたい。
私は角砂糖を出して二頭に食べさせた。
「なにそれ?」
モリーはフードをめくってこっちを見る。
「ああ、角砂糖だよ。」
「さとう?そんな高いもの馬に食べさせるの?」
「元気が出るんだよ。」
モリーは目の前の髪をかき上げた。
くすんだ金髪がきれいだね。
目鼻立ちもはっきりしているし、眉も太い。
「どこでそんな魔法を習ったの?」
「ああ、賢者の弟子って人に手ほどきしてもらったんだ。」
「わお!」
それから道中は、モリーの質問攻めにあってしまった。
「簡単な修理魔法ぐらいから始めたわ。」
「そうなの?」
「たとえば…オケラスレパーロ」
しゅるりと私の眼鏡のツルがつながった。
折れて、テープで巻いてたんだ。
「わお」
「ね。」
「私なんかこのフォークでスライム突き刺すところから始まったよ。」
「うひゃ~、スパルタだ。」
「それからクリーンとかアイスランスとかね。」
「攻撃だけじゃないんだ。」
「クリーンはできる?」
「できない、教えて。」
「きれいになれ~きれいになれ~って思いながら杖を振るだけだよ。」
「なにそれわかんない!呪文は?」
「そんなはずかしいものいらないって言われた。」
「うわ~。典型的な天才思考だ。」
「そうかな?」
やがて大きな壁に囲まれた、ステレオタイプな城塞都市が見えてきた。
「あれがコッツウォルズだにゃ。」
「へえ~、すごい壁だね。」
「ええ、近隣では一番大きな都市です。」
「ふおおおお」
入り口の門も立派で、兵士が見守っている。
上から扉が落ちてくるやつだ。
幅が十五メートルくらいあって、入り口は馬車二台が悠々と通れるくらい広い。
城壁の幅は五メートル以上ある。
特に検問も水晶もなしに素通りしている。
「こんにちはアモンさん。」
「ようザクスさん、お帰りなさい。」
二人は知り合いらしい。
「一キロほど向こうで、シャドウウルフが出ましてね、ひどい目にあうところでした。」
「それは災難でしたね、ロン、詳しいことを教えてくれ。」
「おう、シャドウウルフは十三匹いたんだ。俺たちはザクスさんを守りながら戦ってね。」
「うん」
報告を丁寧に書き留める。
「なんとか三匹やっつけたところで、オリバーが噛まれたんだ。」
それを継いで、オリバーが言う。
「防戦一方になって、まだ十匹も残ってる、モリーの魔力もすり減ってヤバかった。」
「そうそう、かなり大きなやつが多くてにゃ。」
「いよいよヤバいってときに、この子が飛び込んで来たんだ。」
ロンは、小夜を招いた。
「すげんだよこの子は!いきなり三匹串刺しにしてから、魔法を飛ばしてモリーを助けた。」
早口でまくし立てるロン。
私は、口をはさむ暇もない。
「で、俺たちの前に立って、もう一回魔法を飛ばして、のこりを吹っ飛ばした。」
いろいろ抜けてるけど、まあいいや。
「へえ~この農民の子がねえ。」
どうでもいいじゃん。
「じゃあ私たちはこれからギルドに報告に行くよ。」
「ああ、ありがとうございます。」
中に入ると大通りがまっすぐ伸びている。
「すごいな。」
「だろう?近在ではもっとも大きな街だからな。」
「ロン、あんたが自慢するな。」
モリーは手厳しい。
彼らはここを拠点として活動しているらしい。
パーティの家も持っていると言う。
「まあ、死んだ親父の残してくれたものだけどな。」
「ロン、それはすばらしいお父さんだよ。」
私は間もあけずに言った。
「そ・そうかな?」
「りっぱなお父さんだ、尊敬する。」
私の本音が炸裂する。
ウチのクソ親父に爪の垢でも煎じて飲ませてやりてぇ。
いまはどうしているか知らんが。
蟹工船かなんかに乗ってるだろう。
クソアマともども地獄に堕ちればいい。
ロンは、しきりに照れている。
「そんなこと言われたの初めてだよ。」
「その家を手に入れるために、きっと苦労したんだろう。その苦労に感謝だよ。」
「なんかすっげえうれしくなるな。」
ちびデブの私に言われても、あまりうれしくもなかろうよ。
「サヨの黒髪・黒目はめずらしいにゃ。」
ジニーが私に目を向けて言う。
「そうかい?」
「この辺じゃ見かけないな。」
オリバーも同調する。
「ふうん。」
なにやらみんな、アングロサクソン系みたいだもんな。
「そう言えば、モリーはアイテムボックス使えるの?」
「あ・まあごく小さいけど。」
「どのくらい?」
「衣装行李二個分くらい。」
「そりゃあ着替えとか不自由しないね。」
「もっと大きくならないかなあ?」
「あ~それも、おおきくなれ~倉庫くらいおおきくなれ~って唱えるそうだよ。」
「そうなの?」
「詳しいことは、また調べておくよ。」
「たのまい!」
私のは無限だけどね。
マジックバッグの作り方を調べた方がいいのかな?
オスカルの本棚にあればいいな。
ギルドに行くと、昼前なもんだから人もまばらだった。
「ミネルバ、護衛報告だよ。」
ロンは、カウンターに着いて、ミネルバ嬢に声をかけた。
「あら、ロン、お帰りなさい。」
軽く眼鏡のツルを持ち上げて言う。
「ウルト=ザクス商会の護衛、無事終了。」
「はい、承りました。いつものように等分でいいの?」
「ああ、それでよろしく。あと、シャドウウルフが十三匹出た。」
「まあ!それで?」
「全滅させた。」
ミネルバは、ロンたちの実力で全滅は難しいと思った。
「ぜんめつ…逃がしてないの?」
「ああ、この子が手伝ってくれたのでな。」
「まあ!」
ちっこい私におどろいているらしい。
カウンターからは顔しか出てない。
「魔法は飛ばす、串刺しにする、すげえ逸材だぜ。」
「まあまあそれは。」
「小夜です、冒険者登録をお願いします。」
「あ、はい!」
ごそごそと申請用紙を出してきた。
「ここに名前、ここに武器、魔法はここ。」
「はい。」
「武器は、フォーク?」
私は手に持った農業フォークを見せた。
「はあ~?」
「それで一刺し!すげえぜ。」
黙ってろよロン。
「まあ、手になじんでるからね。」
「わかりました。」
「あと買い取りをお願いします。」
「シャドウウルフが七匹?」
「そうそう、どこに出せばいい?」
「けっこう大きいアイテムボックスなのね。」
ミネルバに案内されて、倉庫の方に向かった。
「あ、あたしたちの分も。」
モリーが着いて来た。
「それじゃあここに出してください。」
倉庫の台を指していう。
「おお?買い取りか?」
フィルチと言う職人風のおっさんが出てきた。
「皮使いたいんだけど、だいじょうぶ?」
「ああ、こいつはいいが、こっちはむずかしいな。」
「取れるところだけでいいよ。」
「わかった。」
「ウチはまるごと売る。」
「モリーんとこは、まあまあだな。」
フィルチは顎をなぜた。
無精ひげがじょりじょり言う。
「あ!オークがあるんだ。」
私が言うと、フィルチは素っ頓狂な声を出した。
「はああああ?オークぅ?」
「なんで驚くの?」
「お前さん一人でやったとか言うんじゃないだろうな?」
「やったよ。」
「なんと!単独でオークを狩れるのか?」
「まあね、あ、ゴブもあったな。」
どさりと二匹を出した。
「本当にオークだな、しかも頭だけ焦げてる。」
「心臓一突きって、鮮やかすぎる。」
ミネルバは、オークを見て顔をひきつらせた。
「なんでえ?森にはオーガだっているよ。」
「森?黒い森か?」
「なんだよロン、あそこには森しかないじゃん。」
「あそこは黒い森っつって、シロウトは歩けないんだよ。」
「そうか?私は通ってきたぞ。」
「なんてえ子だ!」
「ゴブリンはどうする?燃やしちゃう?」
「ま、魔石以外は役に立たんからな。」
「わかった、じゃあ魔石出す。」
ナイフを出して、魔石を取り出した。
鶏の卵より小さい。
そして、ゴブは収納する。
「こっちで焼いとくよ。」
「ああ、頼む。魔石は?」
「ああ、こっちでナイナイしとく。たまったら頼むよ。」
「わかった。」
「じゃあ、査定の間ちょっと待っててください。」
ミネルバは、テーブル席に案内した。
ロンたちも席に落ち着く。
どっかのフードコートみたいだ。
シンプルな木のテーブルとイス。
待ってても、だれかが注文を取りに来るわけではないらしい。
「お茶とか、勝手に飲んでもいいの?」
ロンに聞くと、頷いた。
「ん?ああ、みんな自前の酒とか呑んでるぞ。」
「そうか。」
私は、ゲンキーで箱買いしたカフェオレ缶を出す。
一本五十八円とお得なやつだ。
ひと箱千三百九十二円とお買い得だ。
「なにそれ?」
さっそくモリーが喰いついた。
「なにって、私んとこのお茶だよ。
ぷしゅっとプルタブを引く。
「ふわ~、なんかいい香りがする。」
「飲む?」
「「「「くれ!」」」」
全員かよ。
しょうがないから、テーブルに四本出してやった。
「こ・これは指が入らん。」
ぶっといロンの指では、プルタブが引けない。
私は、親切にもあけてやった。
「すまん。」
「ナイフの先なんかでひっかけるんだよ。」
「そうか。」
ジニーは器用に爪をひっかけている。
「なにこれ!甘い!」
「おお、甘いな。」
「あまいにゃ~!」
「こんな高そうなもの!」
「ああ、高くないから騒ぐなよ。みんな見てる。」
周りにいる少ない数の冒険者は、みんなこっちを見た。
ついでに焼きそばパンを出してやる。
「こう持って、端を引っ張るんだ。」
みんな苦労しながら袋を破った。
「「「「うま~い!」」」」
「合唱するな!」
「いやしかし、なんだこのうまさは、すっげえ高級なパンだぞ。」
「柔らかすぎる!」
「ウチのパンは、みんなこんなもんだよ。」
私は不思議に思って聞いた。
ロンが私の手を握った。
「サヨ!店だしてくれ!毎日でも通う。」
「俺も俺も!」
「あちしもだにゃ~」
「こんなもの食べたら、今夜からあの固い小麦粉の塊りは食べられないよ。」
「そんなもんかねえ?」
焼きそばパンはファミマのが好きだけどね。
金銭的に余裕があるから、いろいろ買い込んできたんだ。
「まだ入る?」
「おお、なんか出るのか?」
「ちょっとピリ辛のやつね。」
チョリソーパンも出してやった。
「辛いけどうまい。」
「ほんと。ぴりぴりするわ。」
意外とカフェオレに合うんだよね。
私は片っ端からビニール袋を回収した。
これは、この世界にはあってはならないものだ。
「じゃあ、また作ってやるよ。」
「お願いね。」
モリーは自分で作ろうとは思わんのか?
そうこうしているうちにフィルチがやってきた。
手に持った紙をミネルバに渡す。
カウンターを出てきたミネルバは、こっちに来て読み上げた。
「ロンのところは、シャドウウルフが五匹で銀貨七枚半。サヨのところは銀貨十一枚ですよ。」
「あ~、私のはアタマがないもんね。」
「それでも取れるところが多かったので、通常に近いですよ。」
「けっこうですね、オオカミの皮はもらえる?」
「そうすると半額になりますよ。」
「ああ、いいんだ、ちょっと使いたいから。」
「では、ギルドカードに振り込みますね。」
「お願いします。」
私は、こっそりカフェオレ缶を渡した。
向こうで見ていたのを知っているからね。
「開け方はわかるね?」
ミネルバは、そっとうなずいた。
ミネルバがカウンターに戻ったところで、解散となる。
「ああ、サヨ、ウチを見てってくれ、次に来たときに落ち合いやすい。」
「わかった、お邪魔するよ。」
「サヨはこのあとどうするにゃ?」
「ちょっと市場を見たいんだ。」
「お供するわよ。」
「いいのかい?」
「いいわよ、荷物おろしたら行きましょう。」
私たちは、ちょっと西側にあるロンの家に向かった。




