表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/33

異世界とコイルガン09

 磁力魔術の詠唱の呪文が完成した。これで、導師は堂々と王に報告できるだろう。

 しかし、この研究は戦争で使われるものだ。僕の前世の記憶が、戦争の悲惨さを思い出させる。死ぬのは、一般庶民と軍の下級兵だ。どちらも国にとって重要性は低い。僕程度の能力ならいくらでも代わりがいるからだ。だが、戦争を指揮する者は厳重に守られる。理由は国の有力者であり能力やコネがあるからだろう。だが、死んでも代わりがいるのは同じだが、命がけで守られている。その者の死が士気に影響するかららしい。僕は底辺にいるため、そんな理不尽は認めたくなかった。

 王は隣国との争いのために強力な魔術を欲しがっている。いまさらながら、導師に教えるべきではなかったかもしれない。でも、導師の苦労を考えれば、隠し通すのも気が引けた。

 後日、導師が登城して研究の報告をすると、王にほめられたようだった。

 帰ってきてからも、導師は満足げに笑っていた。そして、その日の夕食はせいたくな食事を振る舞われた。

「大人数での大規模魔術にしたからな。個人では使えない。あんなものが個人で使えたら剣士がいらなくなる」

 導師はワインを飲みながらいった。

「どういうことですか?」

 アナは導師に尋ねた。

「戦争になったら、長距離から指先程度の鉄の球を撃てばいい。術者の力量によっては鎧も貫通するからな。個人で使えるようになったら戦術が変わる」

「そういうものですか? 想像できませんよ」

「まあ、アナがそういっている内は安全だ。本当の脅威きょういをわかっておらんからな。その前に、個人でそれだけの威力を出せる魔術師はいないだろう」

「そうなんですか?」

 アナは導師のいった意味が分からないのか、上を向いて考えていた。

 だが、僕も同じ意見だ。何より、古くからある魔術の方が汎用性が高く強力だった。

 基本であり、最初に覚えるブレイクブレット《破弾》という攻撃魔術は優秀だった。風、火、水、土と基本の四属性に共通して存在している。この魔術は火なら、前世の知識でいうファイアーボールというところだろう。当たれば爆発してダメージを負わせる。風も水も土も同じだ。風なら凝縮した空気が破裂して爆風で破壊する。水も同じように破裂して水の粒によって破壊される。土も同じだ。土の球が破裂して飛び散った土で壊す。

 何より、複数展開できるし、一撃で家も破壊できるほど一つの弾に威力を持たせられる。それゆえ、汎用性が高い。それに込める魔力の量によって威力が段違いに変わった。もし、この魔術を極限まで極めれば、大魔術に匹敵する。燃え盛る隕石を落とすのと同じことができるからだ。

 これだけの潜在能力があるのに、初心者の技として伝わっている。偉い魔導士たちは、価値に気づいていないのかと不思議と思う。それとも、わざと隠しているのかと疑った。


 将来、傭兵になるとしたら、魔術も槍術も必要だが、一番に必要なのは修復技術だと思う。

 戦いは肉体を壊すことを目的にしていると考えている。だから、肉体の修復は必須な技術だと思う。手足を失っても、元に戻せる魔術が必要だった。だが、そんな便利な魔術はない。自分の思い通りに動かせる義手はあっても、元の戻せる魔術はなかった。

 だから、前世の記憶に頼った。その中では、仙道という魔術があった。不老不死を目的とする魔術だ。その中で、肉体を玄気を練って作った陽神という体に、魂を移して永遠の命を得る技術があった。こちらの世界では玄気とはマナであり魔力になるだろう。マナを凝縮して疑似的な肉体を作る。マナを通しやすい特殊な木を削って作る義手より完璧な義手ができる。

 これを応用すれば全身の器官をマナで代用できる。だが、問題があった。自分の体で試すには危険があった。陽神という疑似的な肉体を作っても、魂を移して生きられるかわからなかった。それに義手を作ってもちゃんと動くか試さないとわからない。

 だが、やらない理由はなかった。肉体を削る傭兵になるには必須な技術だからだ。

 それから、僕は研究に没頭した。やることはマナの操作の向上だ。そして、マナから魔力に。そして魔力を練って物質とする。

 肉体を再現するには扱い方が違った。技術の確立には長期間の時間が必要のようだ。


 ある日、アドフルが珍しく練習を途中で止めた。いつもなら、これから、ヒマをしている衛兵の練習台になる予定だった。

「どうしたんですか?」

 僕はきいた。

「七日以内に実践をしてもらう。もちろん、魔獣はこちらで用意する」

 アドフルは真剣な顔でいった。

「よくわからないのですが?」

 僕にはアドフルの真意がわからない。

「だから、闘技場に出すといっているんだ。魔獣との戦闘は闘技場で行われる。その試合に出てもらう。命がけだができるか?」

「導師の許可があれば、かまいません。……もちろん、魔術も使っていいんですよね?」

 僕は傭兵になる前より先に、闘技場で戦闘を経験するようだ。

「ああ。使えるなら何でもありだ。公爵様にはこちらからも手紙を出しておく。お前からも話をしておいてくれ」

「わかりました」

 僕は訓練と割り切って答えた。

「そうか、嫌がると思っていたが、案外、勇気があるんだな」

「いつか通る道ですから、覚悟ができていただけですよ」

 アドフルさんの目つきが悪くなった。

「普通は、逃げるんだがな。お前はよくわからん」

 アドフルは僕に顔を近づけた。

「導師にもいわれます。勇敢なのか、臆病なのか、それとも何も考えてないのか。どれに当てはまるのかわからんとぼやかれました」

「導師の苦労がわかる気がするよ」

 アドフルはそういって黙った。

 そして、ヒマな衛兵たちとの訓練が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ