魔術と魔法02
僕はカリーヌの屋敷に来た。
しかし、お出迎えに家長であるジスランがいた。
「やあ、この前のゲームの試作品ができたんだ。ちょっと見てもらいないかい?」
僕は早くカリーヌたちとテラスで、まったりと紅茶を飲みたがったが、ガマンする。ジスランにとって賭博は重要な仕事である。無下にはできなかった。
ジスランに連れられて遊戯室に行く。そして、中に入ると、新しい台があった。
「ルーレットと同じものにしたよ。客にストレスを感じさせないように」
ジスランのいう通りルーレットをマネて作られている。新しい色や素材だと、違和感がありストレスになるようだ。
僕は台に触る。台に書かれている模様はよくできている。そして、手触りはいい。後は台に並んでいるカップだ。色々な種類と素材でできている。
僕は素材に注目して選別する。軽くて頑丈。そして、透視ができない。この三点で選んだ。
残ったのは、三つだ。木のツタで編まれたもの。軽石でできたもの。金属だが軽いものだ。
僕はその三つを残して、後は横に寄せた。
「ほう。その三つか」
ジスランの感嘆した。
僕はサイコロを掴んで試しに振ってみた。
「ちょっと待ってくれ」
ジスランにとめられた。
「君の左手は肌色に塗ったのかい?」
ジスランは驚いているようだ。
「いえ。導師に再生の魔術で生やしてもらいました」
「本当かい?」
ジスランに僕は手を見せてうなずいた。
ジスランはコールの魔法を使う。そして、誰かと話しているようだ。
僕はその間に三つのカップを試した。
やはり、ツタで編まれたカップがしっくりする。前世の僕の先入観もあると思う。しかし、金属と軽石では台を傷つける。それにサイコロにも優しくない。自然とツタのカップで決まっていた。
サイコロは透明なサイコロはない。まだ、試作もできていない段階のようだ。
僕はジスランを見る。まだ、コールの魔術で話し合っている。僕は除外した他のカップを見て時間をつぶした。
やはり、ツタのカップだなと思っていると、ジスランがコールの魔法を切った。
「すまない。ちょっと驚いてね。思わず、確認してしまった。近い内にパーティーをしよう」
ジスランは喜んでいた。
「そうですね。再生魔術を復元したんです。導師の偉業を祝ってもいいですね」
僕はジスランに笑った。
「えっ? 君の左手だよ」
「はい?」
ジスランと僕の認識は違うらしい。
「カリーヌが心配していたんだ。君は自分を大切にしないところがあるからね。他の友達も喜ぶと思うよ」
僕はカリーヌたちに心配させていたらしい。手がなくなってあきらめていたら、再生魔術のウワサが回った。それで、期待していたのだろう。僕としては読めない本に期待はしてなかった。だが、あの本を翻訳した人が気になる。後で導師にきいてみようと思った。
「導師の頑張りも褒めてください。僕は元に戻れただけですから」
僕はほほをかいた。
何か恥ずかしい。
「今日はもういいよ。カリーヌたちにその手を見せてあげて。喜ぶから」
僕はジスランに背中を押されて遊戯室を出た。
僕はメイドに連れられてテラスの席に来た。
「いらっしゃい」
カリーヌに笑顔で迎えられた。
僕はいつもの席に座る。
どう、左手の話を切り出すのがいいのか考える。素直に「手が生えました」といえばいいのかわからない。
「シオン。手を見せて」
カリーヌは僕の方に体を向けた。
「はい」
僕は迷ったが、左手を出した。
カリーヌは僕の手を握る。そして、自分のほほに当てた。
僕の体温を感じているのかわからない。ただ、カリーヌの目から涙が流れた。
「よかった」
カリーヌは涙を流しながら微笑んだ。
「ごめんなさい」
僕はそういうことしかできなかった。
「ううん。……ダンスの練習をしましょう」
カリーヌは手を放さずに立った。
僕も立ち上がった。
二人して、テラスから庭に出る。そして、手を合わせてダンスを踊る。
僕はまだダンスは下手だ。でも、カリーヌは気にしていない。そればかりか幸せそうな顔をしている。
僕はカリーヌの体温を感じながら踊った。
どれぐらい、経ったのかわからない。しかし、カリーヌの温かい笑みをみると、時間など、どうでもよくなった。
「うん。今日はお終い」
カリーヌは満足そうだった。
「ありがとうございます」
僕は微笑んだ。
「お茶しよ」
カリーヌにうながされて席に向かった。
「満足した?」
ほほ杖をついているレティシアはカリーヌにきいた。
「うん」
カリーヌは元気にうなずいた。
「でも、再生魔術をよく復元したな」
エトヴィンはいった。
「ええ。導師が頑張ってくれました」
「でも、爪がないが?」
エトヴィンには爪がないのが不思議らしい。
「髪の毛と一緒で死んだ細胞なんです。だから、生えるまで待たないとなりません」
「死んだ細胞?」
「はい。髪の毛は切っても、切り口から生えないでしょう。その代わり、髪は根元から伸びます。それと一緒で爪も根元から伸びるんです」
「なるほど。爪が割れても治療薬で治らないのと一緒か」
エトヴィンは納得したようだ。
「でも、これって凄い魔術だろ。ケガで騎士をやめたヤツも騎士に復帰できる」
アルノルトは興奮していた。
「今は、実験の最中です。他言はしないでください。それに導師の仕事がこれ以上増えると導師は倒れます。そのうちに申請すると思いますから待っていてください」
僕はアルノルトにいうと、静かになった。
「そっか。まだ、実験中か。なら、完成してからでないと危ないな」
「いつ頃、買えるようになる?」
エトヴィンは興味深そうだった。
「申請するのはまだ時間がかかりそうです。実験の結果が出るのに、僕の手のように時間がかかります。なので、まだ時間がかかると思います」
「そうか。それなら、待つしかないか」
「エトヴィンは欲しいの?」
カリーヌはきいた。
「ああ。我が家で雇っていた騎士がいるのだが、ケガが原因で剣が振れずに雑用係になった。それが、ちょっと不憫でな」
「それは残念ね。でも、期待できるわね。再生の魔術なら元に戻るんだから」
「ああ。期待している」
エトヴィンは冷静な顔をしていても、どこか喜んでいた。




