龍の牙13
僕はアドフルと共に騎士団の練習場に着いた。
すると、体が丸い男が走ってきた。そして、僕の前でひざをついた。
「お初にお目にかかります。エルトン・カールトンと申します。不躾ですが、シオン・フォン・ランプレヒト子爵様の騎士にしてもらえませんか?」
僕は驚いて声が出ない。
「エルトンさん。急ぎすぎてシオン様には判断できません。それにまだ子供です。親であるランプレヒト公爵の許可がないとならないと思います」
僕の代わりにアドフルが答えた。
「それは失礼しました。ですが、考えてもらえませんか? これでも、力には自信があります」
エルトンは力こぶを作ってみせた。
「……その前に、牙を見せてくれませんか?」
僕はいった。
「はい。これがそうです」
エルトンは鎧の下からペンダントを出した。
そのペンダントは龍の牙だ。ちゃんと龍の気配を放っている。
僕もペンダントを見せた。
「これはご丁寧に出していただけるとは」
エルトンは頭を下げた。
「この龍の牙ですが、何の効力があるんですか?」
僕はきいた。
「それは長老はいわれなかったのですか?」
エルトンには意外なようだ。
「はい。お守りだと渡されました」
「そうですか……」
エルトンは沈黙した。だが、考えがまとまったのか声を出す。
「……龍族の長老にきいてください。私のような下賤な者には、お話しできません」
エルトンはかしこまった。
「でも、知っているのですよね? でも、話せない。それは僕が幼いからですか?」
僕はきいた。
「年齢は関係ありません。必要な者に牙は与えられます。それに龍族だけの問題ではありません。そのため、ただの騎士である私の言葉では納得してもらえません。絵空事にしか聞こえませんから」
「それは、詳しく知っているということですか?」
僕はエルトンが詳しい話を知っていると感じた。
「いえ。敵を知っているだけです。ですが、私の力では足りないのです」
「敵とは魔族ですか?」
一般的には人族の敵といえば魔族になる。
「いえ、違います」
「敵とは誰ですか?」
僕は素直にきいた。
「申し訳ありません。龍の長老から聞いていないので、私からは申し上げできません。それに敵を知るということは、敵にも知られるのと一緒なのです」
龍族の思惑が入っているようだ。だが、素直に信じていいかわからない。
「今は知らない方がよいのですか?」
僕はきいた。
「はい。長老が教えていないというのは、知らない方がよいと判断したのだと思います」
「この話は龍族が主導で動いているのですか?」
「人族はそうです。魔族は有翼族が担当しているようです」
大事のようだ。人族だけでなく魔族も関わっている。
「聖霊族については何か知りませんか?」
「それは詳しくきいてません。その代わり、進んで契約するように頼まれました」
「気まぐれな聖霊を悪用されないためですか?」
エルトンは驚いた顔を上げた。
「知っているのですか?」
「いえ、長老の言動で推測しました」
「その洞察力。私の主人になってください。お願いします」
エルトンに頭を下げられた。
「王直属の騎士団員ですよね? そんな勝手が許されると思いません。それに、僕は王の不興を買いたくありません」
「……申し訳ありません。考えが足りませんでした。ですが、希望していると考えてください。やがて、国だけの問題ではなくなりますので」
エルトンの言葉にはなぜか重みを感じる。同時に覚悟も感じた。
「今は騎士団をしてください。必要になったら、声をかけます」
「はい。ありがとうございます」
エルトンは納得してくれたようだ。だが、言葉を続ける。
「ところで、アドフルを私に任せてくれませんか?」
エルトンの申し出は、僕にはわからなかった。
「アドフルさんが何かしたんですか?」
僕はアドフルを見た。
しかし、アドフルは首を横に振って否定した。
「シオン様の護衛として弱すぎます。私が鍛えてもよろしいですか?」
僕は突然の依頼に言葉が出ない。
僕はアドフルを見た。
アドフルは気まずそうに、ポリポリとほほをかいている。
「アドフルさんがよいというならよいです」
「はい。では、今から稽古をつけます」
エルトンは立った。
「すみません。僕の稽古を先にさせてくれませんか?」
僕はあわてていった。
「それは気付きませんでした。アドフルの修行は明日にします。今日は見学させてもらってよいですか?」
「よいですが、つまらないですよ?」
「いえ、連係などを取るためには必要です」
エルトンは真面目な顔だった。




