龍の牙12
僕はフローティングの魔法から、斥力を魔術として組み込んだ。そして、反対の引力の魔術を身に付けた。
これで、ドラゴンブレスは十一種類の同時発動になる。
だが、まだ力が足りないと思う。まだ、知らない魔術と概念があるはずだ。
僕は午前中の魔術の勉強は書庫で調べ物に当てた。
昼食後、魔術とダンスの練習にカリーヌの家に向かった。
今日はメイドと共に家長であるジスランに迎えられた。
僕は早く紅茶を飲んで安らぎたいが、無理のようだった。
「やあ。この前のサイコロの件を詳しく知りたいんだ」
僕は笑顔のジスランに連れられて遊戯室に連れて行かれた。
「簡単な話ですよ」
僕は丁半博打を教えた。
二つのサイコロを転がして、出た目を足して偶数か奇数を当てる。例外は二つ。一と一。一と六。この時はサイコロを転がす親の勝ちになる。
「それで、どう転がすんだい?」
ジスランはこれをききたかったようだ。
「カップにサイコロを二つ入れて回します。そして、カップを反対にして、サイコロを隠すように台に置きます。それから、客である子が偶数か奇数をチップで賭けます。本来なら、木の板なので縦か横で判断するのですが、チップは丸いので、ルーレットの黒赤に賭けるようにすればいいと思います。皆が賭けたらカップを開けて判定します。今までの博打の中では一番簡単かと」
ジスランはあごに手をやって考えていた。
僕はジスランの言葉を待った。
「……カップを使うのは理由があるのか?」
「あると思います。賭けた後でサイコロを振るのは、投げ手が調整できるからだと思います」
「だが、透視は防がないとならない。その対策は?」
「魔術なので、魔力を通さない物を使えばいいかと。もしかして、ないんですか?」
「いや、あることはあるのだが、高いんだ。カップ一つが金貨になる」
僕は内心驚きと共にあきれた。金貨が飛ぶようなカップは使えない。カップは消耗品だからだ。
「物にはこだわりませんよ。中身が見えなければいいだけですから」
「そうか、それなら、何種類かある。試しに作ってみるよ。それで、どうやってカップを使うんだい?」
僕は金属製のコップを渡された。
僕はカップを右手で持つ、左手にはサイコロが二つだ。そして、合わせるかのようにカップにサイコロを入れた。そして、軽く振ってから、台に逆さまにして置いた。
「ほう。シンプルだね」
「もっと、演出ができればよいんですが、僕には無理です」
「まあ、それは課題としておこう。それで、後は開けるだけかい?」
「はい」
僕はカップをあげた。
二と六の偶数だった。
「なるほど。これは簡単だね。もし、カジノに置くとしたら気を付けることはあるかい?」
僕のイメージでは和風なので、白い台に向かった半裸の男しか思い出せない。そして、張り詰めた緊迫した空気しか感じない。
「サイコロを透明にできたらいいかと。サイコロに重しを入れて確率を変えられますから」
「なるほど。そういうイカサマができるのか。参考になる」
「他には熱くなりすぎる人がいると思います。これはもう対処できると思いますが」
僕はジスランがわかり切ったことをいった。
「うん。腕自慢を雇っているよ。客の安全を保証できなければ商売にならないからね」
やはり、カジノの裏には屈強なスタッフがいるようだ。
「この博打は簡単です。ですから、簡単なので誰でもできます。なので、客の流動が激しいと思います」
「それは、飽きが早いということかな?」
「はい。ですが、のめり込む人はのめり込むかと」
ジスランは少し考えて答える。
「……それはやってみないとわからないね。サンプルを作ってみるよ。また、見て欲しい」
「僕でよければ」
「君の代わりは、他にいないよ」
ジスランに苦笑された。
僕は紅茶を飲んで一息ついた。
「なあなあ。今度の博打は何だ?」
アルノルトは好奇心を隠せないようだ。
「ちょっと、うるさいわよ。もう少し、静かにしなさい」
今日もアルノルトはレティシアに怒られていた。
「簡単なゲームですよ。サイコロを転がして、奇数か偶数を当てるゲームです。考える必要がないゲームです」
「そうなの? シオンにしては簡単なゲームね」
レティシアには意外なようだ。
「ええ。一番簡単なゲームと思います。でも、集客はできると思いますよ。考えないで済む博打です。ルールを覚えるのは簡単ですから」
「それでいいのか? 確率は五割だ。運営にうま味はないだろう?」
エトヴィンはいった。
よく考えているようだ。
「もちろん、例外があります。一と一。一と六はサイコロを振る親の勝ちです」
「また、五割を切っているー」
アルノルトはぼやいた。
「そうしないと、運営できない。何度、いえばわかるんだ?」
エトヴィンはアルノルトの頭を指で突いた。
「何か。博打に夢がなくなったー」
アルノルトはがっかりしていた。
だが、アルノルトは博打で身を持ち崩す未来はなくなりつつあった。
「もしかして、博打で生活しようと思っていたの?」
カリーヌはきいた。
アルノルトはうなずいた。
レティシアとエトヴィンはあきれていた。
「ちゃんと仕事をしないと、お嫁さんに逃げられるわよ。博打は仕事でないんだから」
カリーヌはしかった。
それでも、アルノルトは納得できないようだ。
「ギャンブラーとして名を成したい」
アルノルトはいい放った。
皆はあきれていた。
「ダメよ。ギャンブルは遊び。仕事ではないの。間違ったらダメよ」
カリーヌの言葉にアルノルトはあきらめられないようだ。
まだ、九歳である。どんな夢を見ようが自由でよいが、ギャンブルには関わって欲しくない。アルノルトの性格では、自滅する未来しか考えられなかった。
アドフルに迎えに来てもらい、城の訓練場に向かった。
「シオン様。王直属の騎士団の中で、龍に関わる騎士を見つけました。今日、あいさつに来るようです」
アドフルの言葉に僕は固まった。
導師でさえ情報を集められなかったのだ。なのに、アドフルは僕に紹介しようとしている。願ってもない機会だが、こんな簡単に会えるとは思わなかった。
「勝手に会う約束になったのは謝ります。しかし、相手はシオン様の名前を出すと喜んで約束しました」
僕は敵か味方か考える。だが、考えても情報がない。相手の名前を知っていても判別はできなかった。
「アドフルさんから見て、どういう人ですか?」
僕はきいた。
「人懐っこそうな騎士でした」
「ペンダントは持っていましたか?」
「それは確認できませんでした。ですが、シオン様の名前を出すと会いたいといってきました」
会わないとならないようだ。だが、これほど簡単に話が進むと違和感というか、恐れを感じる。




