龍の牙10
僕はアドフルの迎えられて馬車に乗った。
槍の練習に騎士団の練習場に移動する。本来なら騎士であるアドフルは馬車の外にいないとならないが、僕のわがままで一緒に乗っている。
「シオン様。クンツ・レギーンとは何者でしょうか?」
僕はアドフルのいっていることがわからなかった。
「突然、現れたんです。そして、私を見て力が足りないといわれました。そして、模擬戦をしたのですが、魔術だけでなく、剣術でも軽くあしらわれました」
僕は騎士団に、アドフルを軽くあしらうような強い人がいるのか疑問に思った。
アドフルは王直属の騎士団が務まるので弱くはない。それを軽くあしらう人間は騎士団でも少ないはずだ。
それに、それだけの強さを持っていれば、仮にも貴族である僕の耳に入ると思う。
「いえ。冒険者と名乗っていました。今回はシオン様に会いに来たようです」
僕には心当たりがない。そればかりか、うわさも聞いたことがない。
「そうですか。失礼しました」
だが、アドフルをあしらうような強い人間には興味がある。アドフルの強さは本物だからだ。
クンツ・レギーンに興味を持った。もちろん、相手は興味を持つようにアドフルと模擬戦をしたのだろう。しかし、それ以上に、僕に用があるのはわかった。
僕はアドフルに連れられて、騎士団の練習場に来た。
そこでは、王直属の騎士団が練習していた。
騎士団の皆はそれそれ訓練をしている。その中から一人の騎士とは思えない人が歩いてきた。
「あれが、クンツ・レギーンです」
アドフルに耳打ちされた。
「やあ。君がシオン・フォン・ランプレヒト子爵かな?」
どこかとらえどころのない男はいった。まだ若く、おにいさんといった感じだ。ただ、スキがありそうで、まったくないのが気になった。
「はい。初めてお目にかかります。シオン・フォン・ランプレヒトと申します。以後、お見知りおきを」
僕は右足を引いて右手を胸に当てる。そして頭を下げた。
相手は貴族である僕に敬語を使わない。それなりの地位があると考えたからだ。
「オレはクンツ・レギーン。これでも、男爵だよ」
僕に用事があるのはわかる。だが、子爵より下の男爵なのに、敬語を使わないところを見ると、普通の貴族ではないのがわかる。男爵は平民でも功績があればなれるからだ。
「僕に何の用があるのでしょうか?」
僕はクンツ・レギーンにきいた。
「これを見た方が話が早い」
クンツは胸からペンダントを出した。
それは龍の牙だった。
この男も龍に関係する人間のようだ。一貴族としてあつかう人間ではない。
「お前も見せてくれないか?」
クンツは微笑んだ。
僕はペンダントにしている龍の牙を見せた。
クンツは納得した顔をした。
「少し二人だけで話せないか?」
クンツはアドフルを見た。
アドフルに聞かれたくないようだ。
アドフルは僕を見る。
「ごめんなさい。重要な話だから外してください。責任は僕が持ちます」
僕はアドフルにいった。
「わかりました」
アドフルは僕の側を離れた。
アドフルが離れるとクンツは大きく息を吐きだした。
「疲れないか? この貴族ごっこ」
クンツは首を回して音を鳴らしていた。
「まあ、それだけの責任がありますから」
僕は戦略級魔術師として重しを背負っている。だから、苦笑して返した。
「お前は貴族をしているのか? オレは冒険者のままだ。貴族なんてできないよ。まあ、それより、本題に入ろう。お前はこの世界が狭いと狭いと感じないか?」
クンツは冒険者らしい。だから、世界が狭いというのは理解できない。僕より大きな世界を知っているはずである。
「そう思うのも、当然だ。だが、オレたちの世界が平面説と思うか?」
僕はこの異世界が球体でなく、平面の世界と習った。だから、それが真実だと思っている。
「それだよ。オレの考えでは違う。世界はもっと広いはずだ。だから、龍の恩恵を受けた」
恩恵とは龍の牙らしい。だが、それが何の効力を発しているかわからない。
「そうか。お前はまだ目覚めたばかりか。それなら仕方ない。だが、長老が目をかける理由は何だ?」
僕には話が見えなかった。だから、首をかしげるだけだった。
「ん? 自覚はないのか? 変わったヤツだな。小人族の中では、そうなのか?」
「僕は人族ですよ。ちなみに七歳です。それに、小人族では貴族になれませんよ」
僕はいった。
「マジか……? それなら、知らなくても仕方ない。……まあ、オレを覚えておいてくれ。いつか同じ道を歩くかもしれん。その時は遠慮なくオレを呼んでくれ。力になる」
利害関係がないの力になる理由がわからない。
無償で手を貸すのは友達ぐらいだと思っている。
「それは龍の牙を持つ者だからだ。いつか、同じヤツ等に会える。その時に力になればいい」
僕は話が見えなくて頭をひねるだけだった。
「まあ。その内、わかる。仲間は世界に散らばっている。そいつらに会った時に本当のことがわかる」
クンツは手を振って去った。
僕は理解できずに、去っていくクンツの背中を、見送るだけだった。
アドフルが僕のもとに来た。
「彼は何なんですか?」
僕はアドフルの疑問を晴らす答えは持っていない。ただ、冒険者としかいえなかった。
僕は夕食の席で導師にクンツ・レギーンの話をした。
「龍の牙に意味があるのか?」
導師でも龍の牙は飾りとしか思っていないようだ。だが、何かしらの意味があるようだ。
「特別な効力はないぞ。ちゃんと調べた」
導師のいう通り、龍の牙は特別な力はない。だが、龍の牙とわかるような気配は放っていた。
「クンツ・レギーンは男爵といっていたな。その線で調べてみる。必要なら龍族の長老にも話を聞かないとならん」
導師の判断はわかる。だが、クンツの底知れなさは対面してわかる。それほど知恵と力を持っていると感じた。
「お前に、そういわせるほどの男だ。嫌でも有名だろう」
導師にしては気楽な言葉だった。普段は慎重な導師にしては珍しい。
「その名は少し耳にした。私たちが壊している遺物の発見者だ」
導師が軽く考えているのが理解できた。しかし、相手は無防備でないだろう。それぐらいのことはできる人だと思っている。
「お前がそう思うなら慎重になる。痛い目に会いたくないからな」
導師は面白そうに微笑んでいた。




