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戦略級魔法使いの日常  作者: 平画久遠
第一部

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龍の牙09

 僕と導師は公爵家御用達の墓地に来た。

 日は落ちてオレンジ色の空を青色に変えていた。

「シオン。怖いのか?」

 導師にいわれて、僕はうなずいた。

 僕は導師のズボンを掴んでいる。

 僕は手を放したくはない。

 僕にはオバケが出るかもしれない墓地は、怖い場所だ。夜の仕事なので、なおさら怖かった。

「相手は魔物だぞ。倒せるのに、なんで怖がるんだ?」

 導師には僕の心境は理解できないようだ。

 わからないから怖い。それが、理解できないようだ。

「本で読んだのだろう。確かに存在している。想像の産物ではないぞ?」

 僕は首を振った。

 相手がわからないから怖いのだ。だから、知っている魔物は怖くはない。それは倒せばいいだけだから。

「それで、怖がる意味が分からない」

 導師には考えがおよばないらしい。

 ふくらんだ想像が僕を恐怖させるのだと。

「おっ、さっそく出た」

 僕は導師の足に巻き付いた。

 墓の下から骨だけの手が出てくる。そして、土を押しのけて出てきた。

 骨だけの人間だ。いや、死んでいるから魔物である。

「あれが、怖いのか?」

 導師は頭をかたむけた。

「出てくる瞬間は怖いです。でも、あからさまに歩いてくるのは怖くはないです」

 僕は答えた。

 導師には理解できないようだ。

 導師は簡単にサンライト《陽光》の魔術で、ただの骨に変えた。

「お前が怖がる基準がわからん」

 認識の違いがはっきり出た。

 導師には想像で怖がることはないようだ。現実主義といえばいい。だが、僕は怖い想像をふくらまして怖がる人間だった。

「まあ、この仕事は簡単だ。親玉のテナイデス《死の否定》を倒せば終わる。今日は勉強として見学でいい」

 導師一人でもよゆうな仕事のようだ。

 僕の力は必要ないらしい。だが、いつか仕事になるかもしれない。そのための見学でもあるのだろう。

『我々の復讐をはばむのは、お前か?』

 頭に声が響いた。

 ディナイルブデスが現れたようだ。

 スケルトンと違って存在感がある。人の形をしてぼうっと光っていた。

 その光は、人を憎んでいるような攻撃的な気配を感じさせた。

「ピアファイ」

 僕は光を放った。

 ディナイルブデスは光に包まれて形を崩していく。そして、光の中で存在が消えた。

「終わったな」

 導師は僕に笑顔を見せた。

 今日の仕事は終わったようだ。

 僕は帰れると思うと安心した。だが、僕は導師のズボンを離さなかった。


「おはようございます」

 僕は朝食の席て導師にあいさつをした。

「うん。おはよう。夜は寝れたか?」

「はい。でも、夢に出ました」

「亡霊か?」

 僕は夢の内容を話した。

 僕が墓地にいると、足元から手が出て掴む。そして、動けないところに後ろから「こっちにおいで」とささやかれる。僕は逃げようとしたが、足を掴む手は離さない。そして、血に染まった大きな女が、ゆっくりと刃物を持って近づいてくる。そういう夢だった。

「それは、仕事とは違い過ぎる。何でそんな夢を見るんだ」

 導師には理解されなかった。

 僕でもそんな夢になったのかわからない。だが、夢でも怖いのは変わらなかった。

「ふむ。想像力が豊かなのはいいが、すぎると危険だな」

 導師はいつものように解析していた。

「まあ、シオンはそれでいい。魔物の存在を知れば怖がる必要はなくなるだろう。あいつらは確かに存在しているからな」

 導師は言い切ったが、僕は慣れそうもない。

「まあ、経験でカバーできる。……でも、お前にも苦手なものがあるのだな。安心したよ」

 導師は当たり前のことをいった。


 僕はカリーヌに墓地での話をした。

「シオン。怖いわ。でも、倒せるのね。やっぱりすごいわ」

 カリーヌは話の始めは怖がっていたが、最後には喜んでいた。

 他の三人も怖がっていた。

「ディナイルブデスといえば、上級の魔物だろう? よく討伐できたな」

 エトヴィンの言葉は僕には意外なものだった。

「魔物としては、それほど強くないですよ。それより、墓地にいる方が怖いです」

 僕はいった。

「え? ディナイルブデスが怖くないの? 下手したら、死者のお仲間になっているのよ」

 レティシアは驚いていた。

「魔物としては弱いと思いますよ。一撃で倒せましたから。それより、何か出そうな雰囲気の方が怖くないですか?」

 僕はいうと、四人は考え出した。

「魔物としてのディナイルブデスは怖いわ。でも、墓地にいるだけは怖くないわね。ただ、いるだけだから」

 レティシアの話から考えると、僕の感性は違うらしい。

 何もないところに想像して怖がる。それがないようだ。

「いつ、死人に足を掴まれたり、後ろにオバケが現れたりしたらと思うと怖くないですか?」

 僕はきいた。

「シオンが想像力が豊かなのはわかったわ。でも、ゴーストも元は人間。怖がる要素はないわ」

 カリーヌには恐れる要素は違うらしい。

 魔物としての恐ろしさ。つまり、魔獣とかと一緒らしい。物理的な危険があるのが怖いらしい。

 異世界では僕の感性は違うらしい。やはり、前世の記憶は良くも悪くもあった。

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