龍の牙06
今日もカリーヌの魔術の家庭教師と、僕のダンスの練習のために、カリーヌの家に訪れた。
「やあ。待っていたよ」
ジスランは玄関まで出向いていた。
ジスランの意気込みを感じて、僕は怖かった。
「やっと見本ができたよ。まずは確認して欲しい。それと試遊してくれないか?」
ルーレットを使って遊ぶらしい。
もちろん、それは意味がある。賭け率の設定とか実物で計りたいのだろう。
ジスランに連れられて遊戯室に来た。
いかにも、カジノにありそうな存在感と高級感を感じた。
「さっそく見てくれ」
ジスランに頼まれて、僕は台を見る。
テーブルに使っている木は高そうである。下から見るとはりぼてではない。しっかり見えないところにも気を使っていた。
僕はテーブルを触りながら、図形や番号を見る。どれも、しっかりわかるように描かれていた。そして、手触りもいい。文句はなかった。
肝心のホイールを見る。これも高級な雰囲気を出している。そして、作りは細かく均等に作られていた。これなら、客に文句はいわせないだろう。ポケットの大きさで操作しているとは思われない。
僕はホイールを回した。
重いが安定して回る。時間にして三分は超している。問題はなかった。
僕は球を持ってルーレットの溝に弾いて入れた。
球は何周もして、コロンとホイールに落ちて転がり、一つのポケットに入った。
僕は何度かホイールを回して球を投げ入れた。球は色々な数字の場所に落ちた。
「これなら、お客も納得すると思います」
僕はジスランにいった。
「ありがとう。これでカジノに置ける。分け前は期待してくれ。必ず、売り上げてみせるよ」
ジスランは安心したのか微笑んだ。
「あっ。客が置く飲み物の台がなかったです。申し訳ありません。気付きませんでした」
僕はすっかり忘れていた。
「それなら、個別に小さな台を用意しているよ。長いと何時間もするからね。これがそうさ」
ジスランはわきにあった小さな台を示した。
小さなテーブルだった。
「それなら、底をへこますなり、穴を開けて固定できるようにしては、どうですか?」
僕は思わず口に出していた。
「ほう。それはどうな物なんだい」
僕はいらない紙にドリンクホルダーの絵を描いた。
「なるほど。これならこぼさないな。参考にさせてもらうよ」
ジスランは紙を書類入れにいれた。
「ところで、遺跡のあった領地が他の公爵に渡ったのは知っているかい?」
僕はジスランに尋ねられた。
「はい。王様から僕と導師に遺物の破壊の命が下りました」
「あの領地は僕たちと対立している公爵の領地だった。でも、その領地はごそっと遺跡を中心に僕の友人のものにした。これで、あちらは力の一部はなくなったはずだ。あちらはまだ余裕があるけど、今回のことで痛手を負った。しばらくは静かにしているはずだ。だから、今は気兼ねなく屋敷に来て欲しい」
ジスランは微笑んでいる。
ジスランは何かしらの手を回したのだろう。その結果、敵対している貴族の力を削った。それが、貴族の争いなのだろう。
僕はジスランの怖さに何もいえず、こくりとうなずいた。
「さて、試遊してもらうから、娘や友達を呼んでおいで」
ジスランがいうと、側にいたメイドが扉を開けた。
「はい」
僕はカリーヌやレティシア達を呼びにテラスに行った。
「やったー」
アルノルトは喜んで立った。
「行こうぜ」
アルノルトは急かした。
「ちょっと、紅茶ぐらいゆっくり飲ませてよ」
レティシアは不満そうにいった。
「シオンはまだ来たばかりなの。落ち着いて遊べないから待って」
カリーヌは僕に座るようにいった。
僕はいつもの席に着いた。
すると、メイドが紅茶が運んできた。そして、テーブルに置くと下がった。
僕は砂糖を入れて口を付ける。相変わらず、美味しかった。
ただ、ジスランに呼んでくるようにいわれているのに、休んでいいのか不安になった。
「いこーぜ」
アルノルトは落ち着きなく急かす。
「静かにしろ。ルーレットというのは逃げないんだ。シオンの休憩が終わるまで待て。つい先ほどまで仕事をしていたんだから」
エトヴィンはアルノルトを止めた。
「仕事って何だ?」
「ルーレットの検査だ。ちゃんと動いて失敗がないか見ていたんだ。それで、いつもの時間にいない。だから、少しぐらい休ませてやれ」
「そうなのか?」
アルノルトは体を揺するのをやめた。
「はい。お父様に頼まれてチェックしていました」
僕は答えた。
「それで、検査は上手くいったのか?」
アルノルトはガマンができないらしい。体が動いている。
「はい。問題ないとお父様にいいました。それで、試しに遊んで欲しいといわれました」
「なら、遊びに行こうぜ」
アルノルトはまた立ち上がった。
「そうですね。紅茶は遊戯室で飲みます」
僕は答えた。
「シオン。甘いわよ。こいつを付け上がらせても良いことないわよ」
レティシアは冷静な目でいった。
「ですが、お父様には呼んでおいでといわれたので」
「まあ、シオンがそういうなら移動しましょう。お茶ならどこでもできるから」
カリーヌはメイドに指示を出した後に、遊戯室に皆を連れて行った。
「これが、ルーレットか」
アルノルトははしゃいでいた。
皆は台の周りに立って模様と数字を見ていた。
「ご自由に、お遊びください」
遊戯室にいたメイドにいわれた。
ジスランはメイドに頼んだのか姿はなかった。僕たちが自由に遊べるように気を使ったのかもしれない。
「これは、どうやって遊ぶんだ?」
アルノルトは早く遊びたいようだった。
僕は簡単にルールを教えた。
ホイールの中のどの番号に球が落ちるのを予想するだけだからだ。
僕は用意されていたチップを配る。色によって誰が賭けたかわかるようになっている。
そして、台の上にチップを置くことを教えた。置き方によって、帰ってくる倍率を教える。
皆は戸惑いながらもチップをテーブルに置いた。
僕はホイールを回すと皆は注目した。
僕は球を弾いて溝に回した。そして、溝からホイールに落ちるのを待った。
球は黒の三に落ちた。
誰も当たっていない。なぜなら、番号を当てるという先入観で、一点しか賭けていないからだ。
僕は他の賭け方を教えた。赤と黒の二択。ラインや四点など色々と教えた。
皆は戸惑いながらも色々と賭けていた。
なぜか、メイドは的確に倍率を計算していて、チップを払っていた。そして、何かを書き込んでいる。おそらく、遊戯の結果をかいている。試遊で得た結果を知りたいからだろう。




