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戦略級魔法使いの日常  作者: 平画久遠
第一部

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龍の牙05

「おそーい」

 レティシアに文句をいわれた。

「お父様に試作品の意見を求められたんです。勘弁してください」

 僕はイスに座りながらいった。

「おっ。ルーレットってヤツで遊べる日は近いのか?」

 アルノルトは少し興奮した。

「今度は見本になるようです。お父様の許しがあれば触れると思いますよ」

 僕は答えた。

「アルノルトは博打ばくちは禁止よ。性格からして、博打で身を持ち崩すのが簡単にわかるから」

 カリーヌの意見は厳しかった。

「でも、遊びならいいだろう?」

「それで、こりるのならいいけどね」

 カリーヌは納得していなかった。

「博打は開催者が一番勝つし儲かる。だから、客は負ける確率の方が高い。それを含めて遊ぶのなら止めない」

 エトヴィンには博打の勝率がわかっているようだ。

「オレが負けるというのか?」

「確率の問題だ。五割を切る勝負に手を出すのか?」

「それは不利だな。二回に一回は負ける。それより低いのはずるいとしか考えられない」

「お前がしようとしているのは、それと一緒だ。五割を切るのが博打だ」

「そうなのか?」

 僕はアルノルトにきかれた。

「はい。そうでなければ、商売になりませんから」

 僕は笑ってみせた。

「うわ。それって詐欺さぎだろ」

 アルノルトには事実は受け入れられないらしい。

「それが博打だ。現実を知れ」

 エトヴィンはあきれたようにいった。

「一攫千金は無理なのかよ。夢がないー」

 アルノルトはうなだれた。

「そんな夢を見る方がバカなのよ。もっと、現実を見なさい」

 レティシアはあきれたようにいった。

「夢がないとつまらないだろう?」

「もっと現実的な夢を見なさいよ」

 夢を追うアルノルトと冷めた性格のレティシアのいい合いは続いた。


 遺跡の管理者が変わったらしい。

 その遺跡を含む一帯の領土は、他の公爵の管理下になったようだ。そして、遺跡は発掘が再開した。

 理由は危険な物を排除したいらしい。

 遺跡の遺物は研究対象になるはずだが、王都でバラまかれた件で、危険と判断されて廃棄が決まったようだ。

 その決定には、安全に遺物を廃棄できる人間がいるのが一番の理由らしい。過去からは考えられないようだ。

 僕と導師は登城して、王から直々に遺物の破壊の命令を下された。

 理由は遺物を安全に破壊できる魔術を持っているからだ。ドラゴンブレスの使い手は導師と僕しかいないようだ。

 僕は王からお土産をもらって喜んでいた。

「そんなに嬉しいか?」

 僕の喜びように、導師はあきれるようにいった。

「はい。タダでノクラヒロの杖をもらえるんですよ。お金がかからなくていいんですよ」

 僕には杖は消耗品であると、龍との戦いで理解した。だから、無料なら、それに越したことはない。

「我が家は貧乏ではないぞ。それくらい買えるぞ」

 導師はあきれている。

「でも、金貨が何十枚も飛ぶんですよ。あれは見ていて嫌になります」

 僕は金貨が入った袋を、どさっと渡す場面を見たのだ。それは恐ろしかった。

 あれだけあれば、何年も贅沢な一人暮らしができるだろう。それを、杖一本という武器に払うのだ。そんな高級な武器を乱暴にあつかえない。それどころか、大事にして武器のためにケガをする可能性がある。それだけは嫌だった。

「お前は前世の記憶に引きずられているな。まあ、平民なら当然だが、今のお前は貴族なんだ。出す時に出さないと、名が泣くぞ」

 導師のいう通り金銭感覚は、前世の貧乏なままである。

 前世では外食をするなら、自分で作って好きなものを作って食べる。そういう人間だった。

「貴族の金銭感覚ってわからないです」

 僕は素直に答えた。

「まあ、その内に教えるよ。今は子供のままでいてくれ」

 導師は僕のほほをなでて笑った。


 遺跡の発掘は順調に進んでいるようだ。たまに呼ばれて遺物を破壊している。

 だが、別件で仕事が入った。

 導師がいうには、墓地にディナイルブデスという魔物が出たようだ。それの討伐とうばつを頼まれたらしい。

 魔獣などの討伐は、傭兵ギルドが募集してチームに任せるはずだ。

 なぜ、導師の下に依頼が入るのか理解できなかった。

「ディナイルブデスは死の否定という通り、不死者の化け物だ。それが、公爵家がそろう墓地に現れた。本来なら傭兵ギルドに頼むのだが、場所が公爵家の墓だ。傭兵には荒らされたくないらしい。それで、仕事を回された」

 導師はやりたくない仕事らしい。デスクの向こうで、あからさまに嫌がっている顔をしている。

「断れば、よいのでは?」

 僕は素直にいった。

「そうもいかん。私も公爵なので付き合いがある。その流れで頼まれたのだ」

 導師はフンと鼻から息を吐いた。

 導師も納得してはいないようだ。だが、断れない。

 僕はこれが貴族だと理解した。

「ところで、その不死身の化け物は、どうやって倒すんですか?」

 僕は魔物を相手にしたことはなかった。

 導師は席を立った。そして、本棚から一冊の本を引き抜いた。

 僕はその本を渡された。

「これに載っている。勉強はゆっくりでよいぞ。急いで仕事を片付けたら、何を押し付けられるのかわからん」

 導師はドスンとイスに座った。

 今日の導師の機嫌は直りそうもなかった。

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