表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦略級魔法使いの日常  作者: 平画久遠
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/84

龍の牙04

『なぜ、家にいない』

 しばらくすると、父からのコールが入った。

『あなたがばら撒いた殺りく兵器の排除をしていたんです。家にいるはずがないでしょう?』

『他人など関係ないのではなかったのか?』

『人の心を持っているんです。動くのは当然でしょう? それに、あなたがそれをいいます? 人の心を失ったんですか?』

『なら、家族を殺すまで』

『使用人は他人ですよ。あなたの家族の線引きが理解できません。本当に狂ったのですか?』

『口だけは立派になったな。だが、どうでもいい。人を気取るなら、屋敷に来い。来なければ屋敷ごと使用人を殺す』

『呼べば行きますよ。あなたは賞金首です。お小遣いになりますから』

 僕は父が怒って怒鳴る前にコールの魔術を切った。

 僕はすぐに導師にコールの魔術で連絡を取った。そして、作戦を練った。


 僕は一人で自分の屋敷の前に転移した。

 玄関から執事を連れた父が現れた。執事の首にはナイフが当てられている。

 父は僕を確認すると執事を乱暴に離した。もう、執事には価値がないようだ。

「お前は何なのだ。オレにはお前のいうことがわかん。何を考えている?」

 父は怒鳴るようにいった。

「それぐらい察するのが親でしょう。それぐらいわかりません?」

 父は僕をにらんだ。

 だが、一人の男が奥から現れた。

 こちらは剣士のようだ。魔剣らしき物騒な形の剣を履いている。

「こいつがお前の子供か?」

 剣士は僕を見ながらいった。

「ああ。そうだ。失敗作だがな」

 剣士には父の怒りには興味がないようだ。

 玄関から出ると真直ぐ僕の方に歩いてきた。

「悪いが死んでもらう。いいかな?」

 剣士は当たり前のようにいった。

「死ぬ気はないのでいいですよ」

 僕は剣士が殺気がないのが気になった。

 剣士は剣を抜く。そして、僕に向けた。

 僕も杖を出している。しかし、石付きの杖だ。

 精神感応金属のノクラヒロでできた杖でないので不安だった。

「では、死ね」

 剣士が上段に構えると、剣から膨大な魔力が発した。それは天を突くような巨大な光の柱になった。

 剣士はそれを僕に倒すように切ってきた。

 僕はドラゴンシールドでそれを受け止めた。

 剣士は驚くが、剣に力を入れて押し込んできた。

 だが、ドラゴンブレスに比べたら弱い。九つの魔術を同時発動しているのだ。一属性の力より強かった。

 僕と剣士が力比べをすると、周囲に気配を感じた。

「シオン!」

 導師と騎士団がタイミングよく現れた。

「ちっ」

 剣士は力比べから身を引いた。だが、騎士団に囲まれている。剣士は囲まれたまま転移した。騎士団の数人が追うように転移した。

 僕は玄関を見て父を探す。その時にはすでに姿はなかった。

 二人の捜索は騎士団に任せた。

 僕と導師は罠に気を付けながら屋敷を確認した。

 父が捕まえていたのは執事だけだった。他のメイドと家庭教師には目もくれなかったようだ。

「すまない。私の家を狙うとは思わなかった」

 導師は使用人と家庭教師に謝った。

「いえ。これも貴族であるのなら仕方ないことです。海千山千の猛者が徘徊するのです。覚悟はできています」

 執事は胸を張っていた。

 その様は父に捕らわれた恐怖を感じさせなかった。

「すまないな」

 導師は泣きそうな顔でいった。

「いえ。私たちが不甲斐ないだけです」

 門番の二人の騎士がいった。

 二人は傷ついていた。だが、生きている。死傷者がいないだけよかった。

「こんな私に付いて来てくれて助かる」

 導師の目から涙が流れた。

 執事を始めとして、皆が導師を慰めていた。

 僕もその輪に近づく。すると、皆は間を開けた。

 僕にここに来いといっているようだ。

 僕は歩いて導師の側に行った。

 導師は僕を見ると抱きしめた。


 結局、父は捕まえられず逃がしたようだ。そして、剣士の方も同様である。

 騎士団は悔しさをにじませていたが、静かに自分の力を上げるために練習していた。

「申し訳ありません。またしても、逃げられました」

 僕はアドフルに謝られた。

 僕はアドフルが悪いと思っていない。悪いのは父であり僕だ。親子としてまっとうな関係を作れなかったのだ。責任は僕にあった。

「すみません。僕のせいで多くの人を傷つけています」

 僕は導師に謝った。

 すべては僕と僕の父との争いだ。導師は関係ないからだ。

「勘違いするな。傷つけているのは、お前の父だ。シオンではない」

「ですが、僕に関わる限り、父の暴挙にさらされます。今回は死んでいませんが、死んだとしたら僕はここに居られません」

 もし、人が死んだら僕のせいだ。父の狙いは僕である。だから、僕が消えればよいだけだ。

「それが、敵の狙いだ。戦略級魔術師はお前しかいない。だから、私の敵対する貴族は、お前を私から引きはがそうとしている。そのための嫌がらせであり、策略でもある。お前が罪悪感を持つほど敵は喜ぶ。お前の件は私の貴族としての戦いでもある。だから、自分を責めるな。そんな顔をされると、私が責められているように感じる」

「すみません」

 僕は謝ることしかできなかった。

「これは貴族としての争いだ。それに息子を巻き添えにしている。……まあ、貴族に生まれた限り当たり前なのだがな。だから、自分一人を責めるな。家族であり、貴族である私たち二人の問題だ。わかったか?」

「……はい」

 導師は僕を子供として一緒に考えているようだ。

 これが家族なのかもしれない。

 僕は温かいものを感じていた。


 数日して、騒動が沈静化し、いつもの日常が戻ってきた。

 僕はカリーヌの下に向かった。しかし、カリーヌの父に捕まった。

「試作品ができた。また、見てくれないか?」

 僕は断ることもできずに、新しいルーレットの試作品を見た。

 見た目から様になっている。これで、十分と思うぐらい作り込まれていた。

 僕はチップを置くテーブルを触った。手触りはいい。これなら、チップの移動に問題はないだろう。それに、数と図柄は前よりしっかりと描かれている。問題はない。

 肝心のホイールに触る。試しに回してみると、重いがスムーズに動いた。僕は止まるまで眺めた。目標の三分は越えている。これなら、ホイールを回してから賭ける余裕はある。

「球を弾いてよいですか?」

 僕は家長のジスランに球をもらった。

 僕は弾いて調子を見る。何度も溝を回る。そして、しばらくすると、ルーレットの一つの数字のポケットに落ちた。

 最低限の作りにはなっていた。

「後は高級そうにできれば、問題ないと思います」

 僕はジスランにいった。

 ジスランは微笑んでいた。

「テーブルの素材だが、私がいいと思った物を使った。それは問題ないか?」

 ジスランは見本を何個も出した。

 僕はそれらを触って確かめた。

「お父様が選んだのが一番いいです」

「そうか。良かった」

 ジスランは微笑んでいた。

「今度は試作品でなく見本を見せるよ。それを見て意見をもらいたい。何度も手直ししても限りはないのはわかっているが、必要でね」

「はい。僕でよければ」

 僕は仕事の終わりを感じた。

「うん。……それより、ザンドラの家に賊が入ったようだね」

 ジスランの声が低くなった。

「はい。留守を狙われました」

 僕は素直に答えた。

 ジスランの情報網は広いからだ。知っていて当たり前だった。

「うん。僕も本気を出すよ。期待して待ってくれ」

 ジスランの目は怒っているようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ