龍の牙03
アドフルの後を追うと、近くの衛兵の詰所にたどり着いた。
「子爵様。私と共に来てください。発見した遺跡の遺物のもとに飛びます」
一人の術士が礼をした。
術士にしては筋肉があり鍛えている体だった。実戦向きな術士であるようだ。
僕はアドフルを見る。
アドフルはうなずいた。
知らない人間ではないようだ。
「わかりました。お願いします」
アドフルは僕の肩を背後から触った。
「それでは」
術士が差し出した手を取った。
そして、転移の魔術で移動した。
出た場所は静かな住宅街である。しかし、一角が明るく騒いでいた。
「こちらです」
僕はそういった術士の後を追った。
そこには起動している遺物があった。
ロボットであるが、体は小さかった。聖霊が入っているロボットとは少し違った。
ロボットはレーザーを放つ。すると、鎧に赤い線が走った。
体と同じく出力は低いらしい。鉄の盾を焼き切れていなかった。
「ドラゴンスレイヤーをお連れしました」
術士は叫んだ。
すると、ロボットを囲んでいる衛兵たちはロボットから距離を取った。
僕はフローティングの魔術と共に飛び上がった。そして、上空からロボットを視認するとドラゴンブレスを放った。
ドラゴンブレスの力の塊はロボットを飲み込んだ。
ロボットは手足を残して消えた。だが、問題はある。聖霊族が出てくる可能性があるからだ。
だが、ロボットが消えた後は何も変化はなかった。
『クーさん。仲間の聖霊族は近くにいませんか?』
僕は頭の上の聖霊に話しかけた。
『いないよ』
『そうですか。わかりました』
ロボットは聖霊をエネルギーにして動いていると思ったが違うのかもしれない。それに小型だったから、聖霊は使っていないと考えられる。
僕は地上に降りた。
衛兵たちは喜んでいる。しかし、負傷者はいるようだ。担架を持ってくるように叫んでいる衛兵がいた。
「次は?」
僕は術士にきいた。
術士はドラゴンブレスを見て驚いているようだ。魔術師ならドラゴンブレスの威力を理解できる。僕でも破壊力があり過ぎと感じていた。
「……はい。次に行きます」
我に返った術士は手を伸ばした。
僕はアドフルが肩に触ったのを確認して、術士の手を取った。
二度目の転移で訪れたのは鍛冶屋が並ぶ工業地帯だった。
そこでも、ロボットが暴れている。
だが、このロボットも小さい。レーザーも威力が低く鎧を焼き切れていなかった。
「ドラゴンスレイヤーをお連れしました」
術士は叫んだ。
皆はこちらに気づいてロボットから離れる。しかし、ロボットと接近戦している衛兵がいた。
僕は構わず、上空に飛んで狙いを定める。
『三秒、離れて』
僕は闘っている衛兵にコールの魔術で伝えた。
「無理!」
衛兵は防御するだけで離れられないようだ。
僕はロボットの懐の地面に降りた。そして、手のひらで突くようにドラゴンブレスを放ち、体を消した。
極太の光線のようにしたので足が残るだけで体は消え去っている。
僕はまた周囲の魔力の変動を感じる。しかし、大きな気配はない。聖霊はいないらしい。
『クーさん。ロボットの中に仲間がいたら感じますか?』
僕は聖霊にきいた。
『わからないー』
やはり、ロボットには聖霊を封じるような装置があるようだ。魔力を遮断する何かの物質があると思う。
僕は術士の下に戻った。
「次、お願いします」
僕は術士にいった。
「お待ちください。他の三体は倒したようです」
術士にはコールの魔術が届いているようだ。他の誰かと話しているようだ。
僕は導師が動いたと思った。導師なら僕より早くロボットを潰せる。だが、他の要素も考えに入れておかないと失敗する。僕と導師ではなく、他の騎士や術士が倒した可能性がある。
僕はアドフルを見た。
アドフルもコールの魔術を使っているようだ。こめかみを押さえていた。
「子爵様。五体とも片づけたようです。これで、終わりです」
術士は笑った。
僕は術士のように喜べない。
父が宣戦布告したのだから、あっさり終わることはない。他の策が動いているはずである。
「アドフルさん。遺物であるロボットがいない地域はありますか?」
僕はきいた。
「ありますが、多いです。把握できません。……子爵様はこれで終わっていないと思っているんですか?」
僕はうなずく。
「父なら、本命が他にあるはずです。嫌がらせにしては小さいです。本命を探してくれませんか?」
アドフルはうなずいて、コールの魔術で連絡を取った。
「私も、確認した方がよいですか?」
ここまで連れて来た術士はいった。
「はい。お願いできますか? 余りにも簡単に終わっています。撒き餌でしかないと考えられます」
「わかりました。詳しい情報をもらいます」
術士もコールの魔術で連絡を取っていた。
僕は導師にコールの魔術を使った。
『シオンか。こちらは二体、消した。それともう一体は騎士団で潰したらしい』
『消し去ったのですか?』
『いや、普通に破壊した。そして、一人の術士が壊れた遺物を転移の魔術で廃棄した。そこで、爆発したらしい。転移した術士は火傷を負うぐらいだったようだ。爆発の規模は小さいようだ』
聖霊が出てきたロボットとは作りが似ていても、力は小さいようだ。
『そうですか。これで終わると思いますか?』
僕は本題をきいた。
『ないな。準備していたのなら、もっと大きな花火を打ち上げる。まだ、続くぞ』
『わかりました。僕はアドフルさんと行動します。ケガをしないでください』
『それはこちらのセリフだ。それより、深追いはするなよ。相手が相手だ。罠ぐらい張っているのは容易にわかる。だから、逃げられてもよい。本来なら、騎士団や衛兵の仕事だからな』
『わかりました。気を付けます』
僕はコールの魔術を切った。
僕は術士を見る。
「新たな情報はありません」
術士は顔を振った。
「こちらも一緒です」
アドフルはいった。
「では、少し休みましょう。本命の花火が上がるまで」
僕は二人にいった。
「終わりではないのですか?」
術士は驚くようにいった。
「本命はまだです。それは、導師も同じ意見です。……あっ。僕の親であるランプレヒト公爵の意見でもあります」
僕は二人を見る。
二人は話し合っている。そして、すぐに話はまとまったようだ。
「子爵様は詰所でお休みください。そこまで、お送りします」
術士はいった。
僕とアドブルは詰所に行った。




