遺跡と聖霊と勇者17
「導師。動作発動の特許はとれたのですか?」
僕は夕食の席で導師にきいた。
「それなら、昔の文献にある。だが、後継者がいなくて廃れたようだ」
「使い手はいなくなったのですか?」
僕は存在した驚きと共にもったいないと思った。
「ああ。やはり、難しんだろう。シオンはどうやって覚えている?」
導師は平静なままだった。
「無詠唱で一度、使います。そしてその魔力の流れと変換を感じます。そして、その感触を再現します。それを繰り返していますと動作でもできるようになります」
「そうか。お前でも動作発動は難しんだな」
導師は静かに食べている。取り立てて感想はないようだ。
「ですが、一度、体で覚えると練習はいりませんよ」
「そうか……。私はまだ無詠唱にこだわっているようだ。思い込みが邪魔しているのかもしれん」
導師は難しい顔をした。
「導師でも苦労するのですか?」
「私をどう見ている? これでも、普通の人間だぞ」
導師はそういうが、出会う貴族からは天才と聞きおよんでいた。
数日後、遺物の破壊の日が来た。
そこには宰相がいた。
僕は国の偉い人がここに居ていいのか疑問だった。
失敗すれば命の危険にかかわるからだ。
それに、物好きな貴族がテントを張っている。理解できない。
僕は導師に視線を送った。
「失敗しなければいいだけだ。それに王直属の騎士団がいる。万全を期しているよ」
導師は優しくいった。
だが、破壊するのは僕だ。責任感に体は不調を起こしたのか重かった。
僕は導師と共にテントの中で待機していた。
遺物の破壊には慎重を期するようだ。何重もの保険を張っているようだ。
「シオン。大丈夫か? 緊張しすぎだぞ」
導師の顔は心配そうだった。
「大丈夫といいたいのですが、緊張します。こんなにも大事だと思いもしませんでした」
僕は人が行き来する現場を目にして、緊張感で体は重くなる。
「貴族になれば、人の目にさらされる。今は難しいが慣れてくれ」
「わかりました」
そう答えるが、気が重いのは変わらなかった。
段取りがあるのか、始まりまでは長かった。朝に始めて昼になっている。
それほどのことかと疑問に思う。
さっさとドラゴンブレスで破壊して終わりのはずだ。
だが、使いの人は走り回っていた。
いつ始まるのかわからない。僕は緊張で押し潰されされそうだった。
昼食を胃袋に押し込んで、紅茶で渇いた口の中を湿らせていると、使いの者に呼ばれた。
僕は導師と共に宰相の下に行った。
「待たせてすまない。ようやく準備が整った。そちらも準備をして欲しい」
宰相は微笑みながらいった。
「いつでも問題はないですよ。そればかりか、待つのに疲れました」
導師は僕の代弁をするかのようにいった。
「まあ、貴族が見物に来たんだ。時間がかかるのは勘弁してくれ」
「そうですね。では、開始の合図をお願いします。私たちにとっては魔術を一度発動するだけですから」
「わかった」
そういうと、宰相は使いを何人も走らせた。
僕は遺物のある場所に行く。地中にはドラゴンフォースで埋めてある。それを掘り起こさなければならない。
「シオン。いけるか?」
導師が心配そうにしていた。
「やるしかないので、やるだけです」
僕は空間魔術で倉庫から黑い杖を出した。
「始めてくれ!」
宰相の大声が聞こえた。
僕はドラゴンフォースで地中に埋まった遺物を地上に出した。
卵型の遺物は土でできた龍に抱かれて出てきた。
「おおー」
外野から聞こえた。
僕は一呼吸ついて杖を遺物に向けた。そして、動作発動ためを作った。そうすると、速さを犠牲に威力が上がるからだ。
僕はためられるだけためて、ドラゴンブレスを放った。
力の塊は大きく太い。卵型の遺物より大きな力は遺物を飲み込んだ。
卵型の遺物は土の龍と共に消え去った。
僕はやりすぎたと感じた。
だが、消えたので爆発する心配はない。全てはこれで終わるはずである。
『いったーい』
頭に声が響いた。
『誰よ。私を殴ったのは』
遺物の中に聖霊がいたようだ。
クーとは違う聖霊であるが、形はゆるキャラなのは変わらない。
放っている気配はクーとは違って火のような感触を受けた。
『あなたね。私をぶったのは』
聖霊の敵意は頭にいるクーに向かっていた。
『何もしていないよー』
『なら、誰なの?』
クーは僕を見た。
『龍の物ね。でも、何で龍の持ち物に引っ付いているの?』
聖霊は僕を見ずにクーにいった。
僕を龍の物と聖霊はいった。だが、クーの時と違って龍と取り合っていない。前と何が違うのかわからない。
『魔力がおいしいから』
クーはいつものようにのん気に答える。
『確かに美味しそうね。私にも分けなさい』
『だめ。ぼくのもの』
『分けなさい』
新たに現れた聖霊とクーはにらみ合っていた。
『叩いて申し訳ありません。だが、危険な遺物を放置できないのです。それに聖霊が入っていようと』
導師は間に入った。
『あなたも龍の物ね。私を叩いた理由がそれ?』
また聖霊は龍の物といった。僕だけならわかる。導師もそういう理由は一つしか思いつかない。僕と導師は龍の牙をお守りとして持っている。それぐらいしか思いつかない。
『はい。旧時代の危険な遺物です。心当たりはありませんか?』
導師は答えた。
『そうね。そこら辺をぶらついていたら人族に捕らえられたわ。そうしたら、箱の中に閉じ込めれた。まあ、そんなのどうでもよかったから寝ていたけど』
聖霊族とは自由な種族らしい。人に捕まっても問題視をしないようだ。
『兵器の動力源にされた可能性が高いです。心当たりはありませんか?』
導師はロボットの動力源が聖霊の力と考えているようだ。だが、魔力を食べる聖霊なら魔力に反応するはずだった。しかし、遺物から現れたからには内部にいたのだろう。
僕は魔力を遮断する物質で、聖霊を囲っていたと推測した。
『人族のやることを理解する気はないわ。それより、お腹が減ったのよ。魔力をちょうだい』
『私でよければ』
導師は魔力を聖霊に与えた。
『まあ、悪くはないわね』
そういいながらも、導師の魔力を食べていた。




