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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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異世界とコイルガン06

 後日、僕の要望もあり、魔術を教えてもらうことになった。魔術といっても生活で使う魔術でなく、軍用の魔術だ。

 簡単に言えば、戦闘用の魔術である。戦っている最中に詠唱を行う時間はない。だから、無詠唱で放たなければならい。難易度は高かった。

 最初は、生活用の魔術を詠唱なしに行う。詠唱しながら、魔力の動きと変化を察知して記憶する。そして、今度は何も唱えずに同じように魔力をあつかい変化させる。

 僕はマナの集め、マナから魔力に変換できる。そして、変換点での変換の仕方は、初級魔術なら四属性の地、水、火、風はできている。

 だが、今後、他人に教えるためには基礎を覚え直せといわれた。

 導師がいうには、魔術の源である魔力の扱う感覚は人それぞれで、自分の感覚で覚えなければならなかった。何度も失敗して、何の成果も得られない日が続くらしい。それでも、何度も練習して身に付けるようだ。

 一か月が経った頃だろう。魔力の動かし方を他人に教える方法が理解できた。しかし、変換の方がわからない。水を出すだけなのに、どう教えていいかわからない。

 導師は詠唱と無詠唱を交互に行って水に変換する感覚を覚えこませるらしい。

 ここでも、忍耐が必要のようだ。

「思ったより早い。一年は覚悟していたが、順調に進んでいるな。だが、他の属性でも同じように覚えてもらうぞ」

 属性は簡単にいって五つだ。風、火、水、土、その他に分類される。その他以外の四つは必修だ。それに属性に分類されない魔術は高度だ。その一つの魔術だけで成り立っている。転移の魔術などが例に挙がる。それも、魔術師とは無詠唱でできるようにならなければならないようだ。

「魔術だけでなく、棒術を覚えてもらう」

 導師はいった。

 僕は棒術より槍術を習いたいと導師に伝えた。理由は槍術をかじっているからだ。

 しかし、導師がいうには城内の魔術師は棒術を使うらしい。槍をメインで使うのは貴族ではいないようだ。その代わり、高い宝石を付けた杖を持っているようだ。

「家庭教師は剣だったか。だか、バカ高い剣を差しているのは身分があるのだろう。まあ、お前は貴族でないからいいか。だが、武術は修行してもらう。……まあ、本格的になるけどな」

 導師の勧めは、身体能力の向上魔術を、身に着けさせるためらしい。

 剣士は普段から身体向上魔術を使っているからだ。

 この世界では身体能力が並では生き残れない。剣士は剣術をみがくと共に、無意識で身体向上魔術を使っているらしい。そうでなければ、自分より大きな魔獣と戦えない。

 槍術の指南者を呼んで、一対一で修業が始まるようだ。

 僕は生きるために力が欲しい、と思っているが、修行は嫌がっている。辛いのは嫌いなのは前世と一緒だった。

 それから、地獄のような日々が始まった。学校に行きたくない前世の僕の気持ちがわかった。だが、教師はあちらから来た。導師の監視下にいる僕には逃げる場所がない。修業をする以外に道はなかった。


 実戦形式で修行を付けてくれる兵士は魔術剣士だった。身体向上魔術以外に攻撃魔術も使える。しかし、欠点はあった。剣術に特化するか、魔術に特化するのが簡単で上を目指せる。その二つを両立させるには、並の努力では足りないらしい。

 二つの頂点を目指しているものだから、どちらかにしぼる方がいいが、あえて両立を選んでいるらしい。前線でも、後援でも活躍できるからだ。

 半端者といわれるが、それはそれで誇りがあるらしいようだ。

「初めまして、ジェフ・ステリーと申します」

 その剣士は僕に対して礼儀正しかった。下男の僕に敬語を使ったのは、この人が初めてだった。

 しかし、導師が気持ち悪いと一蹴いっしゅうして直した。

 僕は導師の注文の元、魔術を重視するスタイルで修業した。そのため、槍術は受けや流しなど、防御に特化した。そして、相手のすきをついて近接攻撃魔術を使う。そのための無詠唱魔術だが未熟で発動が遅い。そのため、そのすきに木刀で刺されていた。

 導師が雇ってくれた剣士は優秀だった。剣の扱い方は二流でも、魔術は一流だった。無詠唱の魔術や身体向上の魔術はすごかった。普通の人の数百倍まで上げられるらしい。付近の森では、練習の相手になる獲物がいなくなったとぼやいていた。

 これだけの人が城で働けないのが不思議だった。

 導師が言うには、古い習慣らしい。剣士なら剣士。魔術師なら魔術師としてはっきりさせたいらしい。それゆえにどちらでもない魔術剣士は立場は弱いようだ。なので、ジェフは傭兵をしているようだ。

 騎士や術士に召し抱えられない半端者といわれるが、戦場では実践的な集団のようだ。先頭に立つのはいつも傭兵だという。そして、戦闘も傭兵同士が一番多いらしい。近衛兵などは指揮官を守るだけで何もしないらしい。常に戦争は傭兵同士で血が流れているといっていた。

 なんとなく僕の死に場所は戦場で、傭兵という名もない雑兵だと思うようになった。


 三か月が経った。

 僕は公級の四属性と空間魔術を無詠唱で発動できるようになった。だが、槍術は上手くはならなかった。どうやら、魔術の方に適性があるらしい。でも、槍術の防御は上手くなったとジェフに褒められた。そして、厳しい稽古を耐えしのいだ記念だと魔術師用の槍をもらった。

 長く黒い柄と簡素な穂がついている。よく見ると、宝石も埋め込まれていた。

「その柄は硬くて軽い。鋼の刃でも受け止められる。下手な受け方をしなければ一生ものだよ」

 ジェフの解説にうなずいた。

 黒い柄は特別な木らしい。魔力の通りが良かった。

「ありがとうございます。導師」

「おい。それを持ってきたのはジェフだ。お礼をいうのは、そっちだろう?」

 導師は苦笑いをしていた。

「あれ? これだけのものなら導師がお金を出したのでは?」

「……まあ、金は出した。だけど、選んだのはジェフだ。礼をいってあげな」

「はい」

 ジェフに向き直って、「ありがとうございます」と頭を下げた。

「それは何の意味だい? 頭を下げる習慣なんて聞いたことないぞ」

「……昔の習慣です。お礼を言う時、頭を下げる国にいました」

 前世の習慣といわれても、ジェフにはわからないだろう。それに導師の実験を広める訳にはいかなかった。

「そうか。……まあ、苦労しているみたいだな。これからも頼むな」

「はい」

 僕は再度、頭を下げた。

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