遺跡と聖霊と勇者13
アドフルは馬車を追うように付いてきた。
僕は馬車を止めてアドフルを馬車に入れるようにいった。
「それはできません。私は護衛ですから」
アドフルは堅い調子でいった。
「話し相手になってください。それに敵は馬車ごと狙いません。あくまで僕個人を狙っていますから」
アドフルは迷っていた。
僕は手を出した。
「失礼します」
アドフルは僕の手を触れて馬車に入った。
「ふう」
アドフルはため息を吐いた。
「アドフルさん。大丈夫ですか?」
「慣れない環境で苦労しています。そのうち慣れると思いますが、衛兵が楽だったのがわかりました」
アドフルは力なく微笑んだ。
「アドフルさんでも騎士団は厳しいですか?」
「ええ。騎士団の皆は心も体も強いです。私は追いつこうと頑張っていますが、まだまだ力が足りません」
「でも、やめる気はないですよね?」
「もちろんです」
アドフルの顔は毅然としていた。
「ところで、シオン様の敵は誰ですか?」
アドフルは真剣な顔できいてきた。
僕はいうか迷ったがいうことに決めた。
「僕の実の父です。僕は父に奴隷と売られました。ですが、導師に拾われて、貴族になったのが受け入れないようです。スキがあれば、誘拐して奴隷として売ろうとしていました。それに、僕が幸せそうなのが不満であるようです。僕を売ることで、母を自殺に追い込んだのに」
僕は怒りを通り越して、ため息しか出なかった。
「そうでしたか。以前、誘拐されたのは、それが理由なのですね?」
「はい。それに、父はまだあきらめていません。また同じことが起きるかもしれません」
「それなら、私が守ります。必ず守ってみせます」
アドフルに真剣な顔でいわれた。
「はい。ありがとうございます」
僕は嬉しくなった。
父に会うことになったのは、すぐだった。
いつもの槍の稽古を終えた帰り道で、馬車を止められた。
僕とアドフルは馬車から降りた。
父は不敵な笑みを浮かべている。隣にいる勇者と仲間がいるからだろう。
「シオン。また、出世したようだな。順風満帆のようだな。何でお前だけが褒められる。オレたちは幸せになってはいけない。ローシェを忘れたか?」
父は断定的にいってくる。だが、全て父の思い込みだ。
僕は母を忘れていない。僕が奴隷と売られる罪悪感で自殺したのだ。そんな母を忘れるはずがない。
「まあ、いい。お前は生きていてはならない。ここで死ね」
父は宣言した。
「父なら子供の活躍を喜ぶものだ。父としての威厳は捨てたのか?」
アドフルは大声でいった。
「これはオレとこいつの間の話だ他人が口を出すな!」
アドフルは父に憤っている。父に文句をいっていた。
僕は聖霊のクーにコールの魔術を使った。
『クーさん。助けてくれませんか。敵が来ました』
『どこにいるの?』
聖霊には敵がわからないようだ。
『勇者たちと父です。アドフルは見方です』
『訓練でないの?』
『本番です。僕は死なないために、闘わなければなりません。力を貸してください』
『同族なのに?』
『はい。人族は仲間を助けますが、殺すこともあるのです。聖霊族と違って醜いのです』
『わかったー。力になる』
聖霊は起き上がった。
父は背丈ほどの卵型の物体を空間魔術で出した。
それは旧時代の遺跡にあった遺物だった。
おそらく、盗掘でもしたのだろう。そうでなければ、この短期間に手に入れられない。
『クーさん。あの卵型の物体には攻撃しないでください。起きたら被害がでます』
『わかった。バーン』
聖霊は動いた。
すると、風が吹いて勇者が潰れた。
地面にめり込むように、血を飛ばして潰れている。
その光景に全員が固まった。
どんな原理で潰したのかわからない。
その中でいち早く動いたのは父だった。背中を見せて逃げている。
『はい。バーン』
聖霊の力は絶対的だった。
勇者の仲間は勇者と同じように潰れた。
父は逃げながら雷の魔術を放った。
その雷は遺物である卵型の遺物に落ちた。
僕は走って遺物に触れると一緒に転移した。
遺物と共に荒野に来た。
ここなら、動き出しても、爆発しても他人を巻き込まない。
僕は遺物を見る。雷が落ちたのに動く気配がなかった。
僕はドラゴンフォースを使った。土の龍が現れた。
僕はその土でできた龍に命令した。龍は卵型の遺物を抱いて地面の下に潜った。
簡単な封印はできたが、まだ気が抜けない。やるべきことはあった。
僕は導師にコールの魔術で呼び出した。
『何だ? 急用か?』
僕は導師にコールの魔術は滅多に使わない。使う時は緊急事態の時だけだ。
『はい。父に襲われました。それで、父はロボットの遺物を持ち出したのです。それで、今はいつもの荒野に一緒に転移して封じています』
『わかった。今、行く』
導師の声は焦っていた。
十秒も経たずに導師は来た。
『敵になった?』
聖霊にきかれた。
『敵ではありません。僕の二人目の母です』
僕は聖霊を止めた。
『敵は?』
『今はいません。ありがとうございました』
『わかったー』
僕は聖霊は静かになった。
「シオン。遺物はどうなった?」
現れた導師は焦っていた。
「ドラゴンフォースで地中に埋めています。起動はしていません」
「そうか。わかった」
導師は息を吐いて平静になるように深呼吸をした。
導師は息が整うという。
「遺物を見せてくれ。確認したい」
僕はドラゴンフォースの魔術を操り地中から遺物を出した。
土の龍が抱きしめているのは、確かに卵型の遺物だった。
「起動はしていないようだな。ならいい。再度、地中に封印してくれ」
僕は土の龍を操って地面に埋めた。
「処分方法を考えなければならない。……それより、大丈夫か?」
僕は導師の言葉は理解できなかった。頭をかたむけるだけだった。
「父に会ったのだろう? 苦しくはないか?」
導師は確認するようにいった。
「大丈夫です。父には失望しかないです」
父は僕だけでなく周りを巻き込むのも気にしていない。どんどん悪い人間になっている。
「そうか。でも、無理はするなよ。お前は私の子だ。私を頼ってくれ」
僕は頭を抱きしめられた。
「はい」
僕は温もりを感じると安堵が広がった。
騎士団はその日は忙しかった。
勇者が死んだのだ。そして、子爵の命を狙ったのだ。衛兵も含めてあわただし気に街中を走っていた。
騎士団は宰相に命令されて動いた。
もちろん、アドフルにも僕のコールの魔術で説明をした。
アドフルは屋敷に来た。僕の顔を見ないと安心できないらしい。
導師はアドフルを見て感心していた。
「安心して欲しい。シオンはこの通り無事だ。遺跡の遺物が危険なので、シオンが処理に走った。お前に失態はないよ」
僕の代わりに導師がいった。
「ですが、危険にさらしました」
アドフルは気落ちしていた。
「それは覚悟の上だ。それに平時でも死ぬのが貴族だ。心配はするな。それより、シオンが世話になっている。今後もお願いする」
導師の言葉にアドフルは頭を下げて帰った。
ひと騒動が終わった翌日に宰相に呼ばれた。
理由は荒野にある卵型の遺物の話らしい。安全に処理して欲しいようだ。
しかし、導師は難色を示した。安全に処分する方法がないからだ。
解体はできない。そして、破壊するのが難しい。
一番強い帝級魔術でも生き残るのだ。導師の求める安全はないらしい。
だが、あのまま荒野に埋めて置くことはできない。対処が必要だった。
「仕方ないですね。龍族の長老に聞くしかないです」
導師の案に宰相はうなずいた。




