表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/74

遺跡と聖霊と勇者13

 アドフルは馬車を追うように付いてきた。

 僕は馬車を止めてアドフルを馬車に入れるようにいった。

「それはできません。私は護衛ですから」

 アドフルは堅い調子でいった。

「話し相手になってください。それに敵は馬車ごと狙いません。あくまで僕個人を狙っていますから」

 アドフルは迷っていた。

 僕は手を出した。

「失礼します」

 アドフルは僕の手を触れて馬車に入った。

「ふう」

 アドフルはため息を吐いた。

「アドフルさん。大丈夫ですか?」

「慣れない環境で苦労しています。そのうち慣れると思いますが、衛兵が楽だったのがわかりました」

 アドフルは力なく微笑んだ。

「アドフルさんでも騎士団は厳しいですか?」

「ええ。騎士団の皆は心も体も強いです。私は追いつこうと頑張っていますが、まだまだ力が足りません」

「でも、やめる気はないですよね?」

「もちろんです」

 アドフルの顔は毅然きぜんとしていた。

「ところで、シオン様の敵は誰ですか?」

 アドフルは真剣な顔できいてきた。

 僕はいうか迷ったがいうことに決めた。

「僕の実の父です。僕は父に奴隷と売られました。ですが、導師に拾われて、貴族になったのが受け入れないようです。スキがあれば、誘拐して奴隷として売ろうとしていました。それに、僕が幸せそうなのが不満であるようです。僕を売ることで、母を自殺に追い込んだのに」

 僕は怒りを通り越して、ため息しか出なかった。

「そうでしたか。以前、誘拐されたのは、それが理由なのですね?」

「はい。それに、父はまだあきらめていません。また同じことが起きるかもしれません」

「それなら、私が守ります。必ず守ってみせます」

 アドフルに真剣な顔でいわれた。

「はい。ありがとうございます」

 僕は嬉しくなった。


 父に会うことになったのは、すぐだった。

 いつもの槍の稽古を終えた帰り道で、馬車を止められた。

 僕とアドフルは馬車から降りた。

 父は不敵な笑みを浮かべている。隣にいる勇者と仲間がいるからだろう。

「シオン。また、出世したようだな。順風満帆のようだな。何でお前だけが褒められる。オレたちは幸せになってはいけない。ローシェを忘れたか?」

 父は断定的にいってくる。だが、全て父の思い込みだ。

 僕は母を忘れていない。僕が奴隷と売られる罪悪感で自殺したのだ。そんな母を忘れるはずがない。

「まあ、いい。お前は生きていてはならない。ここで死ね」

 父は宣言した。

「父なら子供の活躍を喜ぶものだ。父としての威厳は捨てたのか?」

 アドフルは大声でいった。

「これはオレとこいつの間の話だ他人が口を出すな!」

 アドフルは父に憤っている。父に文句をいっていた。

 僕は聖霊のクーにコールの魔術を使った。

『クーさん。助けてくれませんか。敵が来ました』

『どこにいるの?』

 聖霊には敵がわからないようだ。

『勇者たちと父です。アドフルは見方です』

『訓練でないの?』

『本番です。僕は死なないために、闘わなければなりません。力を貸してください』

『同族なのに?』

『はい。人族は仲間を助けますが、殺すこともあるのです。聖霊族と違って醜いのです』

『わかったー。力になる』

 聖霊は起き上がった。

 父は背丈ほどの卵型の物体を空間魔術で出した。

 それは旧時代の遺跡にあった遺物だった。

 おそらく、盗掘でもしたのだろう。そうでなければ、この短期間に手に入れられない。

『クーさん。あの卵型の物体には攻撃しないでください。起きたら被害がでます』

『わかった。バーン』

 聖霊は動いた。

 すると、風が吹いて勇者が潰れた。

 地面にめり込むように、血を飛ばして潰れている。

 その光景に全員が固まった。

 どんな原理で潰したのかわからない。

 その中でいち早く動いたのは父だった。背中を見せて逃げている。

『はい。バーン』

 聖霊の力は絶対的だった。

 勇者の仲間は勇者と同じように潰れた。

 父は逃げながら雷の魔術を放った。

 その雷は遺物である卵型の遺物に落ちた。

 僕は走って遺物に触れると一緒に転移した。

 遺物と共に荒野に来た。

 ここなら、動き出しても、爆発しても他人を巻き込まない。

 僕は遺物を見る。雷が落ちたのに動く気配がなかった。

 僕はドラゴンフォースを使った。土の龍が現れた。

 僕はその土でできた龍に命令した。龍は卵型の遺物を抱いて地面の下に潜った。

 簡単な封印はできたが、まだ気が抜けない。やるべきことはあった。

 僕は導師にコールの魔術で呼び出した。

『何だ? 急用か?』

 僕は導師にコールの魔術は滅多に使わない。使う時は緊急事態の時だけだ。

『はい。父に襲われました。それで、父はロボットの遺物を持ち出したのです。それで、今はいつもの荒野に一緒に転移して封じています』

『わかった。今、行く』

 導師の声は焦っていた。

 十秒も経たずに導師は来た。

『敵になった?』

 聖霊にきかれた。

『敵ではありません。僕の二人目の母です』

 僕は聖霊を止めた。

『敵は?』

『今はいません。ありがとうございました』

『わかったー』

 僕は聖霊は静かになった。

「シオン。遺物はどうなった?」

 現れた導師は焦っていた。

「ドラゴンフォースで地中に埋めています。起動はしていません」

「そうか。わかった」

 導師は息を吐いて平静になるように深呼吸をした。

 導師は息が整うという。

「遺物を見せてくれ。確認したい」

 僕はドラゴンフォースの魔術を操り地中から遺物を出した。

 土の龍が抱きしめているのは、確かに卵型の遺物だった。

「起動はしていないようだな。ならいい。再度、地中に封印してくれ」

 僕は土の龍を操って地面に埋めた。

「処分方法を考えなければならない。……それより、大丈夫か?」

 僕は導師の言葉は理解できなかった。頭をかたむけるだけだった。

「父に会ったのだろう? 苦しくはないか?」

 導師は確認するようにいった。

「大丈夫です。父には失望しかないです」

 父は僕だけでなく周りを巻き込むのも気にしていない。どんどん悪い人間になっている。

「そうか。でも、無理はするなよ。お前は私の子だ。私を頼ってくれ」

 僕は頭を抱きしめられた。

「はい」

 僕は温もりを感じると安堵が広がった。


 騎士団はその日は忙しかった。

 勇者が死んだのだ。そして、子爵の命を狙ったのだ。衛兵も含めてあわただし気に街中を走っていた。

 騎士団は宰相に命令されて動いた。

 もちろん、アドフルにも僕のコールの魔術で説明をした。

 アドフルは屋敷に来た。僕の顔を見ないと安心できないらしい。

 導師はアドフルを見て感心していた。

「安心して欲しい。シオンはこの通り無事だ。遺跡の遺物が危険なので、シオンが処理に走った。お前に失態はないよ」

 僕の代わりに導師がいった。

「ですが、危険にさらしました」

 アドフルは気落ちしていた。

「それは覚悟の上だ。それに平時でも死ぬのが貴族だ。心配はするな。それより、シオンが世話になっている。今後もお願いする」

 導師の言葉にアドフルは頭を下げて帰った。


 ひと騒動が終わった翌日に宰相に呼ばれた。

 理由は荒野にある卵型の遺物の話らしい。安全に処理して欲しいようだ。

 しかし、導師は難色を示した。安全に処分する方法がないからだ。

 解体はできない。そして、破壊するのが難しい。

 一番強い帝級魔術でも生き残るのだ。導師の求める安全はないらしい。

 だが、あのまま荒野に埋めて置くことはできない。対処が必要だった。

「仕方ないですね。龍族の長老に聞くしかないです」

 導師の案に宰相はうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ