遺跡と聖霊と勇者14
宰相と日にちを決めて集まった。
今までの傾向から龍族の行動は早い。即日に行動すると考えて宰相の空いている日を選んだ。
宰相は家の応接室で紅茶を飲んでいる。準備はできていた。
僕は出迎えの龍にコールの魔術を飛ばした。
『何だ? 急用か?』
『いえ。今回は知恵を貸して欲しいのです』
『それは長老と話したいということでいいか?』
『はい。お願いします』
『しばし、待て』
コールは切れた。
しばらく待っていると、コールの魔術が届いた。
『いつもの場所で待て。迎えに行く』
『わかりました』
コールが切れた。
「導師。いつもの場所で待つとのことです」
僕は応接室で隣に座っている導師にいった。
「わかった。正門までゲートを開こう」
「頼む」
宰相は立ち上がった。
導師のゲートの魔術で正門に着いた。しかし、衛兵に囲まれた。
街中でのゲートの魔術は厳禁だからだ。理由は街への密入を防ぐためだ。
城と街を囲む壁にはゲートや転移の魔術を弾くようにできている。しかし、導師や僕は外の荒野に行き来をしている。防壁はザルのようだ。
「宰相である。今回、龍族との話が合うため来た。道を空けてもらおう」
宰相は衛兵にいった。
衛兵は導師を見た。
「今、宰相がいった通りだ。通してくれ」
導師の言葉に衛兵は武器を引いて道を空けた。
衛兵は宰相の顔を知らないようだ。
宰相は普段は城で仕事をしているのである。門番が顔を知る機会はないに等しいのだろう。
「衛兵に通達はしておいたのだが、通ってないのかな?」
宰相はぼやいた。
「宰相の顔を知る衛兵は少ないですよ。普段、城で公務をしているんですから」
導師は宰相の斜め後ろを歩きながらいった。
「だが、君は顔が知れている」
宰相には納得していないようだ。
「シオンが衛兵と訓練していたので覚えられただけです。それに、ゲートでの移動なら、他の公爵でも止められますよ」
導師は苦笑した。
「そうか。それよりも、来るのが早すぎたか?」
「龍はすぐに来ますよ。大柄ですが、行動は早いです」
「それなら、待つとしよう」
宰相は満足そうにうなずいた。
僕たちは出迎えの龍に運んでもらって浮島に来た。
僕は長老に会おうと思い歩きだしたが止められた。
『長老は小さき子と、その母は許している。だが、お前には許しがない』
出迎えの龍は宰相を止めた。
『今回は国の代表として来ている。長老と面会させてもらえんか?』
『しばし、待て』
出迎えの龍は長老に指示を仰いでいるようだった。
出迎えの龍は宰相を見る。
『長老の許しが出た。通って良し』
『感謝する』
宰相はそういうと歩きだした。
宰相を先頭に広間に着いた。
宰相は驚いていた。
何頭もの龍に囲まれているのだ。怖がらない人族はいないだろう。
『ようこそ。今回は相談があると聞いたのだが、少し違うようだな』
長老は穏やかではないが、怒ってもいない。宰相という新たな客を警戒しているのかもしれない。
『初めまして。宰相をしているベランジェ・フォン・ボワデフルと申します。この度は知恵を拝借したくて尋ねました』
宰相は貴族の礼をした。
『ふむ。小さき子も悩んでいると聞いている。何が問題なのだ?』
『旧時代の遺跡です。我々には理解できないほど高度な兵器なのです。私たちはこれを破壊することに決めました。そのために知恵を拝借したいのです』
宰相は長老から目を離さずにいった。
『それなら、簡単だ。我々が使うブレスで消滅させればいい。小さき子は使えるぞ』
宰相は驚いていた。
宰相は僕を見た。
「できるのか?」
「はい。威力は龍族ほどではないですけど」
僕は答えた。
『母は使えるようになったか?』
長老は導師にいった。
『難しいですね。三回に一度は失敗します』
導師は苦笑いを返した。
『頑張って欲しい。小さき子だけでなく、母にも期待しているのだから』
長老は笑っているようだ。
『期待に応えられるように、精進します』
導師は苦笑いを返していた。
『私が見本を見せます』
幼い龍が一歩前に出た。
『やめておけ。また、痛い目に会うぞ』
そういう長老は笑っていた。
『あれから、練習しました。威力は上がっています』
幼い龍は自信満々にいった。
他の龍がガヤガヤと騒ぎ出した。
笑う龍から、あおる龍。会議の場は笑いの場に変わった。
『小さき子よ。今回も頼む』
長老にいわれた。
僕はうなずいて幼い龍を見た。
幼い龍は少し怯えるように引いた。だが、気を取り直して力をため始めた。
僕も動作発動でドラゴンシールドの用意をする。ための時間に比例して威力は上がるからだ。
「がー」
幼い龍はブレスを吐いた。
僕はドラゴンシールドで防御する。もちろん、導師と宰相は僕の背後にいる。
僕はブレスをシールドで受け止める。
思ったよりブレスの攻撃は長かった。幼い龍は本当に練習したようだ。
ブレスを吐き切った幼い龍は息を切らしている。そして、僕を見ると背中を見せた。
僕はドラゴンブレスを動作発動で放った。
それは幼い龍の尻に当たった。
幼い龍は悶絶した。
「ぐおぉー」
そんなうなり声が聞こえた。
他の龍たちは笑っていた。
「いいのか? 攻撃して」
宰相は心配そうに導師にいった。
「いつものやり取りです。気にしない方がいいですよ」
導師の顔は笑っていた。
『今回も相手にしてくれて助かる。これにこりて、大人しくなればいいのだが、期待ができない。小さき子よ。また来てくれ』
長老は微笑みながらいった。
『はい。今回はありがとうございました』
『うむ。また会おう』
長老は話を締めた。
『お待ちください』
宰相は焦りながらいった。
『まだ、何かあるのかな?』
『はい。いつもお世話になっています。そのお礼として、少しばかりですが、お納めください』
宰相は空間魔術で箱を取り出した。そして、前に出した。
『開けていいかな?』
長老は確認した。
『はい。確認してください』
そういわれて長老は箱を念動力で開けた。
『ほう。素晴らしいな』
長老は喜んでいた。
中身が勝手に浮かんだ。
他の龍たちが手を出したようだ。
空中に宝石がきらめいていた。
龍族は光る物を集める習性があると聞いていた。その話は本当のようだった。
『ありがたくいただく。また、何かあったら相談して欲しい』
『はい。この度はありがとうございました』
宰相は頭を下げた。
『小さき子よ。また来るのを待っている』
『はい。また来ます』
僕は答えた。
そして、龍たちと別れて広場から去った。




