遺跡と聖霊と勇者09
導師の指示がなくても、冒険者のリーダーの指示で仕事は回った。
仕事の中身は採掘でなく、すでに掘り出した遺物の管理と調査だった。
危ない遺物が埋まっている可能性が高いため、王令が下されない限り採掘はできなかった。
僕は導師の後に続いて遺物を調べる。どれも、魔力に反応しなかった。
「魔術のない文明のようだな。だが、動力源がわからない。シオンはどう思う?」
遺物の並んだテントの中で調査していると、導師に話を振られた。
「僕の前世での動力は電気とか燃料ですね。それで動いていました。でも、これらは理解できません。解体して中身を見てみたいです」
「シオンにも心当たりがないか……」
導師は思考の海に入った。
しばらく、戻って来なさそうだ。
僕は黙って待つことにした。
「……シオン。今までの中に危険なものはあるか?」
導師は長考から帰ってきた。
「必ずあると思います」
遺跡は軍事施設だ。当然あるに決まっている。だが、魔力に反応しない以上、別の動力で動いている。だが、問題は火薬など爆発物がある可能性は高い。それは魔力と関係なく爆発する。危険はなくなっていないのだ。
「爆発物か……。前では、どんなのがあった?」
導師は僕を見る。
「銃という鉄を火薬の爆発で飛ばす物があります。それに、手りゅう弾ですね。六秒ほどで爆発して鉄の粒をばら撒いて人体を壊します。それと、地雷です。踏むと爆発して足がなくなります。後は爆弾とか……。爆発物が多いですね」
僕は知っている限りの知識を話した。他にも音波兵器やドローンとかあるが、卵型のロボットを見た後ではかすんで見えた。
導師はまた考え込んでいる。
僕は遺物を見直す。そこにはネジのようなものはない。少なくとも僕の前世より進んだ文明と推測した。
そもそも、自律式のロボットであり、空気中で減衰するビームを放って肉体を焼き切っている。前世と比べるのが間違いのようだ。
「ここの施設では無理だな。爆発しても問題ない場所で解体するしかない。後は本職の研究者に任せよう」
導師は危険と価値を秤にかけて判断したようだ。
テントから出ようとしていた。
「シオン。テントに帰るぞ。試したい解析魔術があるのは知っているが、試すのは安全な魔道具にしてくれ。爆発したら私でも責任を取り切れん」
僕は『好奇心は猫を殺す』という言葉を思い出した。
「はい」
僕は導師の後を追ってテントを出た。
王令が届いたのは三日後だった。
命令では発掘の中止になっていた。そして、ここを封鎖して封印するようだ。
ここを発見した冒険者には悪いが、仕事は途中で終了となった。
「何でですか?」
冒険者のリーダーは導師に抗議していた。
王令なので、貴族である導師は従うしかない。なので、文句を付けられても中止なのは変わらない。
「その代わり、今まで発掘した遺物は王が引き取る」
導師は冒険者をなだめることしかできなかった。
冒険者のリーダーをなだめても、導師にはやるべきことはあった。
発掘に携わった人々の今後の生活だ。
遺跡があったため、仕事が生まれた。そこで働くことで賃金をもらえる。それで、衣食住をまかなっていた人々は、放り出したのと変わらない。新しい受け皿が必要だった。
「それなら、オレが何とかしますよ」
冒険者のリーダーは得意そうにいった。
心当たりがあるのなら、導師がテコ入れする必要はない。安心して任せることにしていた。その代わり、導師の派閥でお金を出しそうな貴族の名前をねだられた。
導師は仕方なく、ジスランの名前を出していた。
ジスランは賭博を運営してもうけているので、ちょうどいいのかもしれない。
こうして、遺跡に関わる仕事は終わった。
「かわいいー」
カリーヌは僕の頭の上の聖霊を見て、目を輝かしていた。
「お人形ではないの?」
レティシアの態度は冷静だった。
「好きで人形を頭に乗せて歩き回りません」
僕はレティシアに抗議した。
いつもの魔術とダンスの練習のためにジスラン宅に来たら、家長のジスランとその妻のロズリーヌに失笑されたのだ。
「触っていい? 触っていい?」
カリーヌは聖霊にゆっくりと手を伸ばしていた。
『聖霊さん。触っていいですか?』
僕は寝ている聖霊にコールの魔術できいた。
『……ん? いいよ。それより、お腹が減った』
聖霊はいつものように腹を減らせていた。
「聖霊さんは何を食べるの?」
カリーヌは積極的だった。
「魔力だよ。でも、底なしだから、加減した方がいいよ」
僕は糸のように魔力を聖霊に与えた。
聖霊はそれを飲むように吸収していった。
カリーヌも同じように魔力を手から出して、聖霊に与えていた。
「それより、何で聖霊と関わっているのよ」
レティシアは責めるようにいわれた。
「僕だって、懐かれるとは思わなかった。その前にロボットから出てくるんだよ。理解できないよ」
僕は望んで今のようなことになっていない。
「ねえねえ。名前は何ていうの?」
カリーヌはまだ興奮している。よほど聖霊が気に入ったようだ。
『聖霊さんの名前は何ですか?』
僕は聖霊にきいた。
『名前? なにそれ?』
聖霊は自然現象の象徴だ。名前はないようだ。
「名前はないみたいですよ」
僕はカリーヌにいった。
「だったら、クーちゃんでいい?」
カリーヌは嬉しそうにいった。
「いやいや。ペットでないんだから」
余りのことにレティシアは止めた。
相手は格上の種族である。ペットになるのは人族の方だ。
「でも、名前がないと不便だよ」
カリーヌはカリーヌで考えているようだ。
『名前がないと不便なので、『クー』でいいですか?』
僕は聖霊にきいた。
『いいよー』
聖霊は魔力を食べるのに集中していた。
「やった」
カリーヌは喜んだ。
「クーちゃん。よろしくね」
カリーヌは聖霊に微笑んだ。
その日は聖霊に魔力を与えすぎて、カリーヌは魔力切れでダウンした。そのため、お茶を飲んで終わった。




