遺跡と聖霊と勇者08
『では、聖霊を起こす。不用意な手出しはしないように』
長老はその場にいる龍たちにもいった。
長老は咆哮した。それは大きな咆哮だった。
僕は耳をふさいでも、耳がキーンと鳴った。
頭の上で動く感じがした。
『なーに?』
聖霊が起きたようだ。
『この小さき子は、わしが先に目を付けた。後から盗むのはやめてもらおう』
長老は僕の頭の上の聖霊にいった。
『やだ。僕が見つけた』
『先に見つけたのはわしだ。返してもらおう』
『やだ。僕のものだもん』
『所有権はこちらにある。小さき子は龍の力を使う』
『本当?』
僕は聖霊にきかれた。
『はい。ブレスとシールドが使えます』
『やってみせて』
『はい』
僕はドラゴンシールドを展開した。
頭の上で不愉快そうな気配を感じた。
『僕にちょうだい』
聖霊は龍の長老に我がままをいった。
『ダメだ。わしの物だ。その代わり、小さき子から魔力をもらうのは許そう。もちろん、小さき子が許す範囲でだ』
『……わかった。それでいい』
聖霊はすねているようだ。
『もちろん、小さき子が魔力をあげるのだ。小さき子の願いもきいてくれるな?』
『僕にできることならいいよ』
『なら、小さき子を守ってくれ』
『もちろん。魔力は美味しいからね』
『それと、小さき子の行動を邪魔はしないように。でないと、取り上げるから』
『わかっているよー』
聖霊は不機嫌だ。ふて寝するように頭の上で寝たようだ。
龍と聖霊との会話は終わったようだ。
終わってみた僕の感想は勝手に者扱いしないで欲しいというものだった。
『母よ。わかったか? これが人族ではできない取り引きと』
『はい。力がものをいうのがよくわかりました』
導師は真剣な顔で答えた。
『まあ、人族の常識は通用しない。ガマンしていてくれて助かった』
『いえ。口出しする方が危険でした。ご助力、感謝します』
導師はそういうものの表情は硬かった。
『いや。それには及ばない。わしたちも願いがあるからな』
『それは何でしょうか?』
『今はいえん。時を待って欲しい』
『……わかりました』
僕は導師の気持ちがわかるような気がした。僕は利用されていると感じている。
龍族にも何かの狙いがある。だが、わからない。
龍族が僕に干渉するのは龍族の願いが関係するようだ。
『それから、小さき子にはこれを身につけさせてくれ。お守りになる』
長老は小さな牙を二つ念動力で導師に渡した。
『一つは小さき子に。もう一つは母に。細工は任せる』
長老は微笑んでいた。
『何から何までお世話になります』
導師は頭を下げた。
『それより、長へのお土産は何がいい?』
『こちらが助力を求めたのです。それ以上のご厚意は受け取れません』
導師は毅然としていた。
『気にしないで欲しい。それに、今回はおぬしの長の機嫌を取った方がいい』
『はい。それでしたら、抜けたうろこを。それで防具が作れます』
『わかった』
僕は空間魔術の倉庫から箱を出した。すると、龍たちは競うように落ちているうろこを箱の中に入れた。
『ありがとうございます』
僕と導師は頭を下げて長老と別れた。そして、街の正門のところに連れて行ってもらった。
送り向かいをしてくれた龍に手を振っていると、宰相が供を連れて現れた。
宰相は怒っていなかった。その代わり、混乱しているようだ。
「……ランプレヒト公。なぜ、勝手に龍族に会った?」
宰相はいいたいことがたくさんあるなかでそういったようだ。
「遺跡で聖霊族に会いました。そして、シオンを気に入ってくっ付いています。そのため、龍族に助力を頼みました。勝手に事を進めたのは謝ります。しかし、私には優先すべきことでした」
導師は謝っていた。
宰相は僕を見る。そして、視線を頭の上に移動した。
「これが聖霊族と?」
僕はゆるキャラを見た宰相の言葉に心の中で同意した。
「はい。今は寝ていますが」
導師は答えた。
「ランプレヒト公。わかっていると思うが説明をしてくれ。王に報告ができない」
「それでしたら、遺跡の件から話さなければなりません。話が長くなります。時間をください」
「わかった。私の家に寄る。そこで話してくれ」
「わかりました」
導師はそういうと僕に手を伸ばした。僕はその手を取って、宰相の後に続いて馬車に向かった。
宰相に対する報告は勇者と遺跡の危険性、そして聖霊族だ。
三つもある。それを宰相に説明するには時間がかかった。
特に勇者の悪行には目に余るものだった。
宰相は三つの話を理解したようで、苦い顔をしていた。
この後は登城して王への報告をしなければならなかった。
僕も王に面会することになった。理由は頭に乗っている聖霊が関係していた。王だけでなく、謁見の間のにいる他の貴族に周知させる必要があるようだ。
僕は間抜けにも、頭にゆるキャラを乗せて謁見をしなければならなかった。後で笑いものになるのはわかった。
王はうなずいて話を聞いていた。そして、後日に伝令を出すとして帰された。
別れ際、宰相には「無理をするな」といわれた。
だが、問題はあちらからやってくる。望んで危険に関わっていないはずだった。
僕と導師は遺跡に戻った。
今後の方針は、王の命令を聞かなければわからない。だが、避難している皆に指示を出さなければならなかった。
「公爵様。これはどういうことだい?」
休憩中の導師はお茶を楽しんでいた。その導師に突っかかるように冒険者のリーダーはいった。
「勇者が暴走した。それで私たちは、その尻拭いをするはめになった」
導師は紅茶から目を離さずに淡々といった。
僕も同じ気持ちだ。何で遺跡の調査で戦闘するのか理解できない。
「勇者と一緒ではなかったと?」
冒険者の怒りは疑問に変わったようだ。
だが、僕には冒険者の考え方はわからない。少なくとも、勇者と同じではないと考えて欲しい。
「ああ。ただ飯を喰らっているから、帰ってくれといったのだが聞かなかった」
導師は紅茶から目を離して冒険者を見た。
「公爵様は勇者を嫌っていたんですか?」
「もちろん、そうだが?」
導師は何を確認しているのかわからないといったような顔をしていた。
勝手に危険な兵器と考えられる遺物を目覚めさせたのだ。好きになる人間はいないだろう。
「公爵様にとって勇者とは、何ですか?」
「勇者とは皆を扇動して戦争を起こす厄介な人間でしかない。私の派閥ではそういう認識だ」
冒険者のリーダーはやらかしたと思ったようで顔に手を当てる。
「申し訳ありません。オレの勘違いでした。これまでの貴族様は勇者を喜んで囲っていましたので」
冒険者のリーダーは納得したのか、今までの攻撃的な姿勢を正した。
「まあ、あちらの派閥はそうだ。だが、私の派閥は違う」
導師は敵意がなくなったのを感じたのか表情は柔らかくなった。
「その派閥の貴族様を教えてくれませんか? 今後、声をかける貴族様の名前が知りたいです」
冒険者のリーダーはひざをついた。
「悪いが、簡単には教えられない。お前が信用できる人物かわからないからな」
下手な紹介は相手に迷惑だ。導師は慎重になるしかないだろう。
「それなら、働きを見てください。失望させません」
冒険者は胸を張って答えた。




