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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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戦略級魔術師と養子07

 有翼族の男は剣を収めると龍族に向き直った。

『族の者が失礼を働いた。これで許して欲しい』

 有翼族の男は龍族の長老に頭を下げた。

 空には仲間と思う有翼族が集まっていた。

『一番迷惑をかけられたのは人族だ。私が許しても人族が許すとは思わんが?』

『そうか。わかった』

 いきなり現れた有翼族の男は片ひざを着き頭を下げた。

『私の同胞どうほうが迷惑をかけた。許して欲しい』

 男はあやまるだけだった。言い訳をする気はないようだ。

『今回の件はどういういきさつだ?』

 導師は怒っていた。

『人族が爆弾を抱えている。それを排除するのは我々の使命だと、先ほどの女は仲間を扇動せんどうした。そして、有志を募って、ここに来た。だが、龍族は無視できない。我々と同じぐらい力がある。ゆえに、龍族と話をするのはわかっていた。我々は龍族との話し合いで終わると思っていた。だが、強硬策に出てしまった。そのため、私が動いた』

『有翼族は私たちを、人族をどう思っているんだ?』

『他の種族と変わらない。人族が己の愚かさで滅びるなら仕方ないと考えている。だが、力を貸したい仲間もいる』

『それで、今後も今回みたいな騒動になるのか?』

『今後はないといいたいが、わからない。我々も色々な考え方を持つので保証はできん。だが、今回のように愚かな行動をするのなら断罪する』

 導師はため息をついた。そして、言葉を飛ばす。

『なら、早めにそうしてくれ。死んでからでは遅いからな』

『わかり申した』

 男は立ち上がると、僕を見る。何かいいたそうだが口は閉じていた。

『失礼する』

 有翼族の男は空に飛んでいった。

 僕は有翼族が浮かぶために使う魔力の流れを見ていた。

 有翼族は魔力のあつかいに長けているようだった。

『小さき子とその母よ。危険は去った。だが、小さき子の使った魔術が気になる。小さな魔力で大きな力を振るった。私には理解ができない』

 導師は僕を見る。

 理由は僕が話さなければならいようだ。

『えーと。物理法則なので、理解できないかと。光に速さがあると知っていますか?』

『知らんな。光に速さがあるのかい? 想像もできない』

『はい。なので、理解できないかと……』

『ふーむ。だが、あのような魔法を作られると身の危険を感じる。龍族でも危機感を感じるぞ』

『シオン。やり方を教えてくれ。私で試す』

 導師はコールの魔術でいった。

 僕は導師に鉄の玉を渡した。そして、説明した。

「やり方はわかる。だが、その法則は理解できないな。その前に光に対する考え方が違い過ぎる」

 わかっていたが、導師でも無理があったようだ。

 導師が何度やっても何も起きなかった。

『シオンしかわからない概念のようだ。その概念が私たちの世界で力になっている。この魔術はシオンしか使えないだろう』

 導師はいった。

『それなら、よい。だが、あの力は強すぎる』

 僕は前世の核爆弾を思い出した。これ一つ持つだけで、外交は強気に出られるだろう。それだけ、危ない魔術でもあった。

『それで、どうする? おぬしの長に報告が必要だろう。何と話す?』

 長老はいった。

 導師は考えていた。だが、なかなか答えは出てこなかった。そして、僕を見てあきらめたような顔をした。

『素直に報告する。シオンが戦略級魔術を作ったと。それを危惧して龍族に呼ばれたという』

『ふむ。有翼族の話はどうする?』

『龍族と同じで、危惧した有翼族が早まったと話す』

『それでよいのか? 小さき子は息苦しいことになるだろう?』

『シオンは爵位を持つので仕方ないかと。必要なら私が何とかする』

『ふむ。わかった。それで、お土産は前と一緒でいいのかな?』

 龍族の長老は落ちているうろこを念動力で持ち上げた。

 僕は空間魔術で倉庫から箱を出した。

 導師は僕を冷ややかな目で僕を見ていた。こんな時にも土産をもらうのかといいたいようだ。


 龍族の島から正門に送ってもらった。

 そこには宰相がいた。それも、怒っている。

 特に置いてけぼりにされたことに怒っているようだ。

 馬車の中では、宰相にはことの詳細をきかれた。

 終始、導師が説明していた。僕はうなずくだけだった。そして、そのまま城に行った。

 今回は謁見の間には直行せずに応接室に通された。そして、宰相と話をする。宰相は僕を見て難しい顔をしていた。

 戦略級魔術など一人の人間が持つのは怖い。だから、危険視されたようだ。

「お前は王に誓えるか? 民草のために働くと」

 宰相は真剣な顔で真直ぐに見られた。

 それは貴族として振る舞えということらしい。それに逃げることはできない。逃げたら暗殺される可能性がある。理由は簡単だ。危険人物を野放しにできないからだ。

「僕は生きたいのでしたがいます。ですが、政治や戦争には使わないでください」

 僕はこの国で生きていくにはうなずくしかなかった。だが、せめてもの抵抗はした。

「わかった。その条件をのむ。だから、その誓いは命を懸けて守ってくれ」

 宰相の言葉は重かった。

 戦略級魔術を持つ重みが背中にのしかかる。

 僕が魔術を使うだけで大事になる可能性が高い。決闘など申し込んだら、関係ない貴族は城から逃げ出すのが容易に想像できる。もし、他国に旅をするとしたら、逃亡と考えられて暗殺される可能性がある。そして、下手な冗談は命を縮める。もう、以前のように何も考えずに振る舞うことはできなくなった。

 その後は謁見の間で王に会った。そして、あらかじめ決めていたやり取りをして退室した。

「ランプレヒト公爵。貴君はこれでよかったのか?」

 宰相は別れ際に導師にきいた。

 導師は苦笑いをする。

「ええ。覚悟はしています。それに退屈をしなくてすむでしょう? 毎日が新鮮ですよ」

「私は胃が痛くなる。もう少し、静かにしてくれ」

「できたら、しています。ですが、また近い内に龍族の島に行くと思います。カンでしかないですけど」

「その時は同行させてくれ。今回みたいに仲間外れにされたくない」

「はい。緊急時でなければ待ちます」

「ああ、そうしてくれ」

 僕たちは宰相と別れて城を後にした。

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