表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/39

戦略級魔術師と養子03

 僕は導師の下に帰された。今後の仕事は全て騎士がするらしい。

 だが、僕の身内である父は逃げている。決着は自分の手でつけたかった。

「お帰り」

 導師が玄関で迎えてくれた。

「ただいま帰りました」

 僕は下を向いたままいった。

「……お前が気に病む必要はない。お前の父は道を踏み外した。それはお前のせいではない。だから、気に病むな」

 導師は詳しく知っているようだ。

「でも、肉親です。何かできることがあるはずです」

 僕は導師にいった。

「お前の歳はいくつだ?」

「もうすぐ、七歳になります」

「その歳で大人と同じことができると思っているのか?」

「……何かできるはずです」

「それは傲慢だな。前世の記憶があるからといって、大人と同じように考えるのは間違っている。今回、さらわれてよくわかったはずだ」

 確かに導師のいう通りだ。魔術を使えても、まだ、幼い体だ。大人と競い合っても勝てるはずがなかった。

「お前はお前のできることをすればいい。お前は背伸びをし過ぎだ」

「でも……」

 導師は近寄って僕の頭をなでた。

「今は私に頼れ。親代わりでもあるんだ。それに、お前には笑っていて欲しい。だから、何でも抱え込むな」

「……はい」

 僕のほほに冷たいものが流れるのを感じた。


 一つの子爵の家が潰れるようだ。

 朝の食事の席で導師は語った。

 僕をさらった盗賊たちは、逃げて背後にいた貴族の下に行ったようだ。

 そこを騎士団に乗り込まれたらしい。

 そして、大捕り物になったようだ。

「父はどうなりました?」

 僕は導師にきいた。

「捕まえた。……だが、生きていない。抵抗して死んだようだ」

「本当なんですか?」

「ああ。私の情報ではな」

 父が死んだ。僕にはそれをどう受け止めたらいいかわからない。僕は売られ、またさらわれて売られる。そんなことをした父を恨んではいない。父は生きるために金が必要だった。しかし、僕を犠牲にするやり方は人とは思えない。だから、もう父とは思っていない。だが、心に引っかかる。父には生きていて欲しかった。なぜ、そう思うのかわからない。だが、その感情は本物だった。

「泣くな。お前の責任ではない。お前の父であった男の生き方の結果だ。責任は男にある」

「……はい」

 僕は涙を拭くことしかできなかった。


 僕は部屋で何もせずにうずくまっていた。

 何もやる気が起きない。ただ、頭の中では父の荒んだ顔だけが浮かんでいた。

 ドダドダと音がする。家の中はあわただしくなったようだ。

 部屋を出てホールに向かう。だが、ホールには顔を出さずに隠れていた。

「やあ。借りを作りに来たよ」

 その声はジスラン・ラ・ヴィアルドー公爵の声だった。

「堂々というな。少しは隠せ」

 導師のあきれた声が聞こえた。

「君に借りを作れる機会なんてなかなかないからね。嬉しくてね」

 ジスランの声は本当に嬉しそうだった。

「それより、家に来る必要はないだろう。コールで足りる」

「ダメだよ。シオン君は傷ついている。なぐさめてあげないと」

「ああ。わかっている」

「でも、君は困っている。だから、私たちを家に上げた」

 導師の返答は聞こえなかった。

「娘に任せて。遊んでいれば少しは気がまぎれるはずだよ」

「では、失礼してよろしいですか?」

 カリーヌの声が聞こえた。

「ノーラ。案内しておくれ。お茶はその後でいい」

 導師はノーラに命令した。

 ノーラはカリーヌを連れて二階に上がってきた。

 僕はあわてて部屋に帰るとベットにもぐりこんだ。

 こんな時、どうすればいいかわからないからだ。

 ドアがノックされた。

「カリーヌ様がお越しになりました」

 ノーラはメイドらしく敬語を使った。だが、僕は返事をしていいか考える。しかし、答えは出ない。

「勝手に入りますよ」

 ノーラらしくいつものように勝手に部屋に入ってきた。

「お邪魔するわ」

 ノーラの声が聞こえた。

 僕は布団から顔を少し出して二人を見た。

「ダメですよ。来客なんですから迎えに出ないと」

 ノーラに怒られた。

「別に気にしていないわ。それより、お茶の用意をしてくれないかしら?」

「はい。わかりました」

 ノーラは退室した。

「こんにちは。……いや、午前中だからおはようでいいのかしら。でも、どちらでもいいわね。そっちに行っていい?」

 カリーヌは近づいてベットの上に座った。

「話は聞いたわ。誘拐されたって。でも、盗賊団は壊滅したから、もう安心よ」

 カリーヌは父の話を知らないらしい。

「近々に処刑が行われるわ。それを見に行きましょう?」

 父は死んでいる。だから、仲間の公開処刑だろう。だが、人が死ぬところを見るのは怖かった。

「怖いから、嫌です」

 僕は何とか言葉に出した。

「処刑が? 皆、見に来るわよ?」

「僕は嫌です」

「お父様がいっていたように繊細なんだ」

 カリーヌの手が僕に伸びてきた。

 そして、布団越しに頭をなでられた。

「昨夜に逃した盗賊も騎士団は捕まえているわ。だから、三日もすれば、安心して私の家にも来れるわ。それまで、ガマンして」

 布団越しになでられるカリーヌの手は優しかった。

「ごめんなさい」

「誘拐されたんだから、仕方ないわよ。よければ、家の衛兵に頼んで護衛をしてもらうわ」

 僕は誘拐されたことより、父の死が心に引っかかっていた。しかし、それに触れないカリーヌの言葉はありがたかった。

 カリーヌの手は僕の頭をなでる。それは、ノーラがお茶を持ってくるまで続いた。


 ドアが勢いよく開いた。

「やあ。元気になったかい」

 カリーヌの父であるジスランは無駄に元気だった。

「お父様。邪魔しないで」

 カリーヌの対応は冷たかった。

 なぜなら、トランプのゲームで負けているからだ。

「何だい? それは?」

 ジスランはめげずにきいた。

「トランプというの。カードゲームよ。タロットやカルタと似たようなものなの」

「ん? タロットと違うのかい?」

「ええ。数字とマークで表していて、タロットより簡単なの」

「初めて見るね。最近の流行りかい?」

「違うわ。シオンがタロットが複雑だからゲーム用に簡略化したらしいわ」

 ジスランはカードを見て考えている。

「これは売れるかな? タロットと差別化できて、おもちゃとして売れるかもしれない」

「それなら、シオンに遊び方をきくといいわ。遊び方は色々あるらしいから」

「そうなのかい?」

「はい。何種類か知っています。もちろん、博打にも使えます」

 僕は答えた。

「教えてくれないかね?」

 ジスランに頼まれて、バカラとブラックジャックとポーカーを教えた。

「これが博打ばくち用なんだ。どれも客の勝率が高いね」

「はい。五割に近いかと。でも、それでも親が有利です」

「ふむ。それなら、損はしないか……。わかった。遊び方の権利を売ってくれないか?」

「それって売れるんですか?」

 僕はきき返した。

「カードはすでに何種類もあって売れるのかわからない。だが、遊び方をセットで売れば売れるかもしれない。だから、権利を売って欲しい」

「それは導師にきかないとならないです。僕が作ったものは導師の許可がないと」

「それなら、許可をもらうだけだ。ちょっと、きいてくる。待っててくれ」

 ジスランは風のように部屋を出ていった。

 カリーヌは僕の手元からカードを引き抜く。見事にジョーカーだった。

 カリーヌはババ抜きは弱いらしい。

 その後は導師と入れて四人でカードゲームで遊んだ。

 ノーラはメイドらしく側に控えていた。だが、ノーラもやりたそうな目をしていた。僕は心の中でガマンして欲しいと願っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ