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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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30/41

戦略級魔術師と養子04

 二人は夕食前に帰っていった。

 僕と導師は二人を玄関まで見送った。

「騒がしかったな」

 導師はボソッといった。

「そうですね。そういえば、カリーヌ様に公開処刑の見学に誘われましたが、行かないとならないですか?」

 僕は導師にきいた。

「必要ない。それにお前には過激だろう。私からも話しておくよ」

「はい」

「それより、カードゲームの権利を譲ってよかったのか?」

「ええ。売り出し方が問題です。多くの人に知られなければ普及しません。なので、僕が持っていても腐らせるだけです」

「そうか……。それより、前世の話はしていないだろうね」

「はい。でも、カリーヌ様たちが気付くのは時間の問題かと」

「そうだね。頭のいい友人を持つのも考えものだな」

「ですが、心は軽くなりました」

「そうか。この借りはいつの日か返すとしよう」

「はい」

 ノーラが二人を送って屋敷の玄関に戻って来ると、三人でダイニングに向かった。


 翌日からはカリーヌの家庭教師を再開した。

 何かしていないと、気が滅入るからだ。

 だが、城に槍の稽古には行っていない。まだ、アドフルたちは盗賊の捜索で忙しいからだ。

 カリーヌの騎士に守られて屋敷に行く。

 僕は術士として情けないばかりだった。

 一人前に認められたと思っていたが実情は違う。まだまだ、子供で保護される対象だった。

 隣にいる騎士のように民草を守る人間には成れていなかった。

「騎士さん。術士って弱いんですか?」

 僕は騎士にきいた。

「ん? まあ……、世間ではそうなっている。術士といえば魔術師だ。遠くから攻撃する印象が強い。だから、弓兵と変わらない。それに魔術師は頭で勝負する。戦略や戦術とかな。だから、強い術士は滅多に聞かないな」

「強い魔術師っていないんですか?」

「そうだなー。術士にはいないな。その代わり、傭兵に多い。二つ名を持つ魔術師は強いと思えばいい。後、冒険者に数名かな」

「冒険者? そんなギルドがあるのですか?」

「知らないのか? 冒険者といえば冒険者ギルドがあるぞ」

「詳しく教えてくれますか?」

「詳しくはないから、聞き知った話ぐらいだ」

「それでもいいです」

 僕はその話に食らいついた。

「おう……。冒険者には二つある。一つは何でも屋だ。誰もやりたがらない仕事をする。下水の掃除から屋根の修理。特別な能力がなくてもできる仕事をする。もう一つは本当の冒険者だ。未知の区域に入り薬草や鉱石、特殊な生物を発見し、必要なら持ってくる。こっちが本来ある冒険者ギルドの姿だ。だが、何でも屋という印象が強いな。本物の冒険家は少ないから。パトロンである貴族に金をもらって冒険する。だから、貴族にコネがあるヤツしか成れないみたいだ」

「他の種族に会ったりするんですか?」

「それは当たり前のようだ。人族と犬猿の仲である魔族の言語を話すヤツもいるらしい」

 僕の想像は膨らむ。

 神霊族、魔神族、聖霊族の滅多に見られない種族。それに獣人族に巨人族など知らない種族を見たかった。

「お前さんは術士だ。それに後見人は公爵。冒険なんてしなくても生きていけるよ」

「でも、興味はあります」

「それは危険と隣り合わせだぞ。せっかく爵位をもらったんだ。捨てるのは任命した王に失礼だぞ」

「ああ。そうでした。でも、冒険って惹かれませんか?」

「気持ちはわかる。だが、せっかく騎士に成れたんだ。文句はないね」

 さらに騎士に冒険者の話を聞いていると、カリーヌの屋敷に着いた。


 カリーヌに冒険者の話をきいた。

 カリーヌは嫌そうな顔をした。

「冒険者ってウソつきばかりよ。金をもらっても二度と顔を出さない。逃げたのか、死んだのかわからないけど、金の無駄よ」

 カリーヌの父であるジスランは投資先として見ていないようだった。

 出す金と戻ってくる金のバランスが悪いらしい。一攫千金になるような話はないようだ。

 だが、物好きは金を出すらしい。知らない土地の生物を飼うことは一種のステータスになるようだ。

 しかし、話は面白いらしい。一冊の本を渡された。この本は冒険の話らしい。出版された数も少ないので、貴重だが面白いとカリーヌはほめていた。

「でも、本の中身を本気にしてはダメよ。キレイごとしか書いてないから。まあ、自分の恥を書く人はいないわね」

 そういいながらも、カリーヌにはお勧めらしい。

 帰ってから寝る前に読もうと思った。

「それより、今日は日が落ちる前まではいられるでしょう? お母さまがカードゲームをしたいといっているの。だから、付き合って」

 夕方のアドフルとの稽古はない。付き合う時間はあった。

「はい。ですが、カードはあるんですか? 僕の持っていたカードはお父様が持っていきましたし」

「それなら、大丈夫よ。昨日の帰りに職人に頼んで、今朝、見本をもらったから」

 僕はジスランの行動の早さに感心した。

「本気で売るようですね。売れますかね?」

「お父様は売ってみせる気満々よ。期待してもいいと思うわ」

 この日のカリーヌはやる気があり、無詠唱魔術の練習は早くに始まり早くに終わった。


「誰よ。このラインを止めているの」

 カリーヌの母であるロズリーヌはいった。

 七並べで出せる場所もなくパスは使い切っていた。

「私の負け」

 ロズリーヌは手の中のカードを場に並べた。

「やった」

 カリーヌは手の中からカードを一枚出して並べる。

 通せんぼをしていたのはカリーヌだった。

「カリーヌのいじわる」

 ロズリーヌはすねたようにいった。

「これは真剣勝負。お母様にだって手加減しないわ」

 カリーヌは楽しそうだった。

 テラスに続くドアが開いた。

「やあ。見本はどうかね?」

 家長であるジスランが現れた。

「いい出来だと思います。乱暴に扱っても柄がかすれませんし、折れにくいです」

 僕は答えた。

「うん。わかってくれてうれしいよ。庶民が使うから安くて頑丈にしてもらった。もちろん、賭博でも使うからね。耐久性がないと困る」

 賭博の件はわからない。だが、貴族相手にはこのカードゲームは簡素すぎた。貴族は貴族らしく絵柄を見る。それは美術品を見るような目で見るからだ。しかし、今回のカードは簡素だった。貴族が見向きもしないのはわかっていた。だが、わかりやすい上に覚えやすい。取っつきやすいといえる。だから、トランプは平民に合うと思った。何より、前世では当たり前のように存在していたのだ。下手なことをしなければ売れると思う。

「それで、今は何のゲームをしているんだい?」

「七並べよ。お父様もしよう?」

 カリーヌは誘った。

「もちろん。シオン君には遊び方を教えて欲しいからね」

 ジスランも混ざり、お茶を飲みながら遊戯で午後を過ごした。

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