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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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23/31

龍と人間爆弾07

「早速だが、登城して欲しい。これは緊急の案件だから、王もすぐに聞きたいだろう」

 宰相は馬車にうながした。

 導師と共に馬車に乗る。

 席に座ると宰相はすぐに話を聞いてきた。

「何の話をしてきたか簡潔に教えてくれ」

 宰相は身を乗り出した。

 よほど、気になるらしい。

「僕がこれから作る魔道具に、人類を滅ぼすかもしれない物ができるといわれました。それは、龍の長に未来視で見たと教えられました」

 宰相の顔はくもった。

「それで?」

 宰相は続きをうながした。

「龍族は人族が滅びても問題ないが、その魔道具を作って欲しくないようです」

「その魔道具とは何なんだ?」

「魔力を貯蔵する魔道具です。それはここの王都を焦土に変えるほど強い爆発物になると教わりました」

「ふむ。君は知らないようだが、昔から魔力を貯蔵する道具は使ってはならないと禁止されている。それがその答えなのか?」

 宰相の目は鋭かった。

「たぶん。魔力のかたまりは爆弾でしかなかったようです」

「爆弾とはブレイクブレットが戦略級の爆弾になるという認識でいいかな?」

「そうですね。僕の想像では、人間ほどの大きさで魔力がぎちぎちに詰まっているという魔道具になります」

「……なるほど。そんなものが作られたら戦争は滅ぼし合いになるな」

「はい。龍族はそれを気にしているようです」

「龍族は何でそこまで介入する? 龍族はその爆弾が恐ろしいのか?」

「いえ。一生懸命に生きている生物を応援しているだけです。ですので、人間の愚かさで滅びても、それは人間のせいでしかないようです」

「そうか、お節介を焼かれたということか。理解した。……それで、作れる見込みはあるのか?」

「ないです。まだ、頭に浮かびません」

 僕はウソをいった。

 本当なら、自分のように腹に魔力をためて人間爆弾にすればいい。そして、人間でダメなら他の生物に仕込めばいいと考えていた。

「そうか。わかった。王にはそう報告するが、謁見の間でも同じように話して欲しい」

「はい。わかりました」

 宰相は身を乗り出していた体を戻した。

「それで、何をしてきた?」

 導師はいった。

 言葉にトゲがある気がした。

「話し合いですよ」

「ほう。それで龍が咆哮ほうこうするのか?」

 導師にはウソがつけないようだ。

「ちょっと、幼い龍と争いました」

「はあっ。君は何をしている。龍族と戦争する気か?」

 宰相は驚いていた。

「あっちから申し込まれたんです。それに龍族の長の許しもありました。おまけに手加減するようにいわれました」

「それでその勝負は、どうなった?」

「咆哮した顔を空気の塊で殴って、ブレイクブレットの魔術で攻撃したら立たなくなりました。三十歳の幼い龍なので、防御膜がありませんでした」

「そうか、龍でも子供では弱いか」

 導師は感心していた。

「ランプレヒト公爵。感心しないで欲しい。外交では問題だ」

 宰相は怒っていた。

「売られたケンカを買っただけです。それに龍族の長も了承している。問題はないと思いますが?」

「その幼い龍が根に持っていたら、どうするんだ? 将来、復讐に来るかもしれない。その時は、人間では敵わないほど成長していると思わないのか?」

「まあ、その時はその時です。しても意味がない心配をする必要はないでしょう。……それより、もっと土産話はないのか?」

 導師は僕を見た。

「あ、龍のうろこをもらいました」

 僕は答えた。

 空間から箱を出す。その箱にはうろこが盛られていた。

「ほう。希少品ではないか。半分は王に献上しよう」

 導師はうろこを手に取って見ている。

「半分もいらんよ。三十枚ほどあればいい。それで兜は作れるだろう」

 宰相は空間から箱を出した。

 導師はうろこを見比べながら良いうろこを宰相の箱の中に入れていた。

 その後はそのまま馬車に乗って城内に入る。そして、謁見の間で宰相と話した会話と同じように王に報告した。

 王は納得したのかうなずくだけで、何もいわなかった。


 導師の家に帰り、夕食を食べていると、導師はいう。

「シオン。後で私の書斎に来い。話がある」

「……はい」

 導師には隠し事があるのがバレているようだ。

 僕は素直にいうしかないようだ。

 夕食後、いったん、自分の部屋に帰った。

 そして、イスに座ると、目を閉じで腹の中の魔力を感じた。

 今の腹の中の魔力は気体である。それを液体にして、やがて固体にする。それをするためには修行が進んでいなかった。

 意思のある念でもって腹の魔力を固める。だが、すぐには固体にはならない。よくて液体だった。

 仙道の修行が足らない。だが、安全のためには早く修行を進めるしかなかった。

 一日では魔力を固体にできないのを悟ってイスから降りる。そして、導師の書斎に向かった。


 導師の書斎のドアをノックする。

「入れ」

 導師の声が聞こえたので、ドアを開いて中に入った。

 僕は中に入ると机の前に立った。

 導師は机越しに僕の顔を見る。しかし、すぐに書類に顔を落とした。

「わかっていると思うが、何を隠しているか話せ。お前のことだ。重要なことを隠しているだろう?」

 導師は断定した。

 やはり、バレていた。

「……はい。魔力の貯蔵はできています。それが僕の腹の中にあります」

 僕は怖くて導師の顔を見られなかった。

「腹の中に魔力をためているのは知っている。だが、それは危険とわかった。お前はどうするんだ?」

「はい。修行を進めて魔力を固体化して安定させます。魔力を放出しても、体が勝手にマナから魔力へと変換されるようなので」

「ふむ。では、修行が進むまでは危険ということか。……もし、お前が死んだら、どれほどの災害になる?」

「この王都は消えます。そう龍族の長にいわれました」

「そうか。なら、仕事より修行を進めろ。必要なら、私も手を貸す」

 導師の言葉は予想とは違っていた。

「街から出ていけとはいわないんですか? 爆弾を持っているようなものですよ?」

「ふん。その程度で逃げる気はない。そして、逃す気もない」

「僕は逃げませんよ」

「そうか? 安全な山奥にでも行って修行する気だったのだろう? 違うか?」

 導師の指摘は図星だった。導師に捨てられたら、そうするつもりだった。

「何でわかるんですか?」

「お前の性格を考えればわかる。一人で解決しようとするな」

「……はい。申し訳ありません」

「わかっているなら、お前からいえ。私は逃げも隠れもしない」

「……はい。ありがとうございます」

 導師の器の大きさに頭が下がるばかりだった。

「いい忘れたが、槍の修業は続けろ。急に辞めたのでは怪しまれる」

「……はい」

 僕は槍の修業で殺される可能性があるのを思い出した。

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