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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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21/28

龍と人間爆弾05

 待機室から出て正門をくぐった。

 そこには龍がいた。西洋の龍が三頭も並んで立っている。

 どっしりした足に細い腕。背後には羽が生えている。そして、首は長く、顔はカッコよかった。

 東洋の龍でなく西洋の龍。ワイバーンとは違って魔獣ではない。それに、意志ある目で見られた。

『その者が例の者か』

 先頭に立つ龍の言葉が頭に流れた。

 コールという魔術だ。遠く離れた人に連絡する魔術である。

 宰相は返事を返しているようだ。

 龍はうなずいていた。

『わかった。では、運ぶのでこちらに来い』

 龍は前かがみになった。

 導師が宰相を抜いて龍の前に立った。

 僕も続いて龍の前に行った。

 龍は導師と僕を手で包むようにつかんだ。

 龍の手には空きがない。だから、宰相は他の龍が連れて行くみたいだ。

 宰相が龍の手に包まれると龍は飛んだ。

 大きな翼で羽ばたいている。しかし、翼だけで飛べるほど龍の胴体は重そうだった。

 おそらく、無意識に魔術を使っていると思った。


 浮島にはすぐに着いた。

 それだけ、龍の飛ぶ速度は速いということだ。

 浮島の地面に立たせられた。

 ここでは普通に立つことができるらしい。

 浮島がどういう原理で浮いているか疑問に思った。だが、それを解消してくれる人はいないと感じた。

 導師は興味深げに周囲を見ている。導師らしく知的欲求を刺激するものばかりのようだ。

「行くぞ」

 宰相は龍が歩くのを見て、僕たちをうながした。

 導師は我に返って宰相の後に続いた。

 僕も遅れないように導師の後に続いた。

 浮島を歩いていると、結晶した石が多いのに気が付いた。地上では見られない鉱石だ。だが、無駄話をする機会はないようだ。二人とも黙って歩いているからだ。

 ふと、龍は止まった。

『ここから先は小さき子だけで行ってもらう。用があるのは、その子供だけだから』

 龍のコールが聞こえた。

 宰相は何かを伝えている。だが、顔をゆがめた。

 交渉は失敗したのかもしれない。

『小さき子よ。この先に長がいる。そこまで一人で行ってくれ。連れはなしだ』

 僕は導師と宰相を見た。

「力がなくて申し訳ない。一人で行ってくれ」

 宰相はいった。

「すまない。私も立ち会いたかったが、無理そうだ」

 導師はいった。

「ん-。僕の問題でもありそうなので、責任を感じないでください。では、行ってきます」

 僕は歩を進めた。


 やがて、龍族が集まっているのが見えた。

 数では二十を超すだろう。だが、僕を待つようにぽっかりと中心は空いていた。

 僕は開いたところに進んだ。

『ようこそ、龍族の島へ』

 目の前の白い龍のコールが届いた。

『初めまして。シオンといいます』

 僕は答えた。

『小さき子よ。今回、君を呼んだのは他でもない。人族の滅びの危機が近づいていることを警告するためだ』

『話が見えません。どういうことでしょうか?』

『過去、人族は自分自身が作った魔術によって滅びかけた。その魔術を君は作っている。それゆえに君を呼んだ』

『コイルガンのことでしょうか?』

『違う。もう何年か前に作られている』

 僕には思い当たる節はない。だが、龍は断定的に話している。知らぬ間に何か物騒なものを作ったのかもしれない。

『すいません。心当たりがありません。教えていただけませんか?』

『うむ。君の腹の中に作られている。そういえばわかるかね?』

 腹の中といえば、仙道の要領で作った魔力の貯蔵庫だ。だが、それが危険だとは思えなかった。

『腹の中には魔力をためています。ですが、魔力の貯蔵量なら龍族であるあなたの方が多いと思います』

 僕は答えた。

『ふむ。認識が違うようだね。私たちは魔力を貯蔵しない。普段は自然体で魔力をまとっている。魔力が必要ならマナを吸い込んで魔力に変える。だが、魔力として無理やり体内に貯蔵しない。わかるかな?』

『はい。普段は魔力を自然体で持っているんですよね。でも、魔力を必要とする時にマナを吸い込んで魔力にする。ですが、僕の考えでは、普段から魔力を体内にためて持っている方が、いざという時に対応できると思います』

『それが間違えだ』

 白い龍でなく脇にいた龍が話に入った。

『よせ。この子はわかっていない。だが、理性はある』

 脇にいた龍は不満そうに顔を背けた。

『我々が事前に魔力をためない理由がある。それは魔力が爆発物と同じで危険だからだ。マナを油に例えれば、魔力は揮発した燃焼ガスと同じだ。着火すれば爆発を起こす。だが、君はガスのまま体内にためて持っている。それは人間爆弾と同じだ』

 シオンは意外な言葉に言葉が出てこなかった。

『今の君を殺せば、魔力が暴走して爆発を起こす。それは君の住む街を飲み込んで焦土に帰すだろう』

 僕が死ぬと爆発する。理解ができない。

『君はこの世界の住人ではなかったから、本能が危険信号を出さなかったようだ。だが、君のしていることは危険なのだ』

 僕が危険?

 僕は危険を避けて生きてきたつもりだ。

『君は体が魔力に染まっている。それは龍族を越えるほど魔力に染まっている。だが、その小さい体にためているのは危険なのだ』

『……では、どうすればいいのですか?』

 僕はきいた。

『君が死ななければいいだけだ』

『死ぬと爆発するんですか?』

『する』

『でも、魔力を放出すればいいだけでは?』

『それは無理だ。君の体が自然と魔力を求めてしまう。だから、意味はない』

 僕の頭には疑問しかなかった。

『だが、他にも方法はある。爆発しないように体内で固めればいい。今は、気体の状態だが、固体にすれば、死んだ時に爆発はしない』

 僕は解決策を聞いて顔を上げた。

『それなら、普通の生活に戻れますか?』

『できるだろう。だが、本題はこれからだ』

 僕はわからず首をひねった。

『遠からず、君は魔力の貯蔵装置を作る。それは今の君のように爆弾になる。もちろん威力も同じだ。いや、それよりも強いだろう。だから、君に忠告しに呼んだのだ』

『それは予知ですか?』

『予知ではなく未来視だ。その力でわかった。だから、発明しても作らんで欲しい。滅んだ前の文明と同じ道を歩いて欲しくない』

『人族は滅んだんですか?』

『厳密には違う。少数は生き残った。そして、今は地に満ちて新しい文明を作っている』

『同じてつを踏むのでしょうか?』

『人族が聡明そうめいなら繁栄するだろう。しかし、おろかなら滅びる。人類の未来は私にもわからん。ただ、人族には未来があって欲しいと思っているだけだ』

『なぜ、肩入れをしてくれるのでしょうか?』

『うむ。それはわからん。ただ、一生懸命に生きる命には、生きて欲しいという願望があるだけだ。特別視はしていない』

『それは特別視ですよ』

『ふむ。そうなのか?』

 周りがざわめいた。

 長がぼけたと騒いでいる。龍たちは騒いでいる。だが、笑い声が多かった。

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