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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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20/28

龍と人間爆弾04

 窓から外を眺めると、何人もの人が荷物を持って走っている。街はパニックに落ちいっているようだ。だが、家の上に登って眺めている人もいる。導師には外に出るなといわれているので、いつでも逃げられるようにダイニングで待機している。

 ノーラは落ち着かず体を揺らしている。だが、導師はゆっくりとお茶を飲んでいた。

 しばらくして玄関の扉をノックされたようだ。ノーラが首から提げている魔道具に反応があった。

「ほれ、客だ。お出迎えに行け」

 導師は未だ落ち着かないノーラに仕事を振った。

「あっ。はい。今、出ます」

 ノーラはバタバタと玄関に向かった。

 ノーラはすぐに帰ってきた。

「ベランジェ・フォン・ボワデフルと名乗る方が来ました。宰相といえばわかると聞きました」

「宰相が直々に来たのか? なぜだ?」

 導師はあごに手をやって考えていた。

「応接室に通しています。お茶を出しますね」

「うむ。頼む。私は客の相手になる。シオンはここで休んでいろ」

「はい」

 僕はうなずいた。


 僕はぼうっとして考えていた。

 まだ、六歳だが一人で生きる方法を考えていた。

 導師の家が気に入らないわけではない。ただ、何かあった時に一人でも生きていける方法を知っていたかった。

 だが、考えはまとまらない。その前にこの世界の知識がなさ過ぎた。

 平民の魔術師は何をしてお金をもらっているか想像できない。やはり、傭兵になるしかないのかと思う。しかし、この歳では誰も雇ってくれないだろう。冒険者ギルドがあるといいと思うが話には聞かなかった。

「シオン。お前も来い」

 導師の声で我に返った。

「はい」

 シオンは導師のもとに走った。

「こら、走るな。そういうところは子供だな」

 久しぶりに導師に怒られた。

「それより、宰相とで話がある。応接間に行くぞ」

「話の内容は何ですか?」

 僕はきいた。

「それは宰相が話す」

 導師はそういうとノーラを呼んだ。

「何でしょうか?」

 ノーラはいった。

「これで、浮遊式のボードを買ってきて欲しい。数は二つだ」

 導師は金貨をノーラに渡した。

「遊戯用のスケートボードですか?」

「ああ。必要になると思うからな。急いで買ってきてくれ」

「……はい。わかりました」

 ノーラには何に使うのかわからないようだ。

 僕も同じでわからない。こんな時におもちゃを買う導師の意図がわからなかった。


 応接間に入ると、城で見た宰相がいた。

「早速だが、話に入りたい。座ってくれ」

 宰相にうながされて、導師と一緒にソファーに座った。

「要点を先に話す。シオンは龍族と一緒に行ってくれ。龍族の長が話があるらしい」

 僕は理解できなかった。いや、頭は疑問だけで埋め尽くされた。

「疑問に思うのはわかる。だが、先方はお前に話があるために、わざわざ王都に来たのだ」

 僕はますます理解ができない。

 龍族ににらまれるようなことはしていない。

 そもそも、龍族は人間のすることに介入することはないと聞いていた。

「私も同行してよろしいですか? シオンはしっかりしていますが、見た目通り子供です。保護者が必要でしょう?」

 導師はいった。

「ああ。だが、その役目は私に任せてもらいたい。国にとっては一大事だから」

 宰相はいった。

「ですが、シオンの異常さに気が付いてません。見た目通り、この子は六歳です」

 宰相は目を見張った。

「体の小さい妖精族ではなかったのか?」

 僕は宰相に下から上へと体を見られた。

「いえ、人族です。ただ、他人より早熟なだけです。前世の記憶がそうさせています」

「確か前世の記憶あるといっていたな? 生まれ変わったというのか?」

「はい。そういっております。それゆえに、大人の知識が半端にあるのです」

「なるほど。それで新しい魔術を作れたのか……。それでは、子供として扱わなければならん。ランプレヒト公爵にも来てもらわんとならんな」

「はい。その覚悟はあります」

「わかった。準備ができ次第、正門に来てくれ。そこで落ち合おう」

「わかりました」

 宰相は席を立って応接室から出ていった。扉の向こうではノーラが送り出すために、宰相の後を付いていった。

「導師。話が見えません。何で龍族が僕に用があるのですか?」

 僕は導師にきいた。

「わからん。だが、龍族が動くほど重要な話なのだろう。それは推測はできても想像でしかない。行って話すしかないのだ。それに断ることはできない。国にとって大事だからな。すまんが、腹をくくってくれ」

 僕は不満だが、行くしかないようだ。

 応接室を出ると、玄関でノーラと門番は話していた。

 浮遊式のスケートボードを門番が買ってきたらしい。小脇にボードを抱えていた。

「導師様。スケートボードが届きました」

「すまんな。急に無茶をいって」

 導師は門番にいった。

「いえ。これもお役目です」

 門番には当たり前のようだった。

「ありがたく使わせてもらう。それと、正門まで馬車を出してくれ」

 門番は了解すると下がった。

 導師は研究室の方に歩いていった。

「導師。何に使うのですか?」

「ああ。龍族は空の浮島にいる。だから、そこから落ちた時のための保険だ。リミッターを外せば、高所からでも降りられる」

 スケートボードは落下傘代わりらしい。

 だが、一つ足りない。それはどうするのだろう?

「宰相の分はないな。宰相は存在自体を知らんから、私が何とかする。だから、緊急時まで自分の倉庫に隠してくれ。今、リミッターを外す」

 研究室に入った導師はテーブルにボードを置く。そして、機関部のふたを外して魔法陣を削った。

 魔法陣の規則性は僕にはわからない。今は導師に頼るだけだが、早い内に基礎は覚えないとならないと思った。

 機関部のふたを閉めるとボードを渡された。

 これは命綱になるだろう。空間魔術で自分の倉庫にしまった。

 導師は自分のボードを改造すると空間魔法の倉庫にしまった。そして、あわただしく動いた。

 必要になりそうなものは倉庫にしまう。そして、玄関に向かった。

 僕はいつでも用意ができている。いや、持ち物が少ないだけだった。

「シオン。いいか?」

 導師は玄関に着くといった。

「はい」

 僕は答えた。

「ノーラ。後は頼む」

 そういうと玄関の扉を開いた。

「行ってらっしゃいませ」

 そうノーラにいわれて、送り出してもらった。


 馬車の中で導師は注意事項をいう。

 何でも、龍族はプライドが高いらしい。下手なことをいうと、話がこじれるようだ。だから、会話は導師か宰相に任せるようにいわれた。

 正門に馬車が着いた。

 馬車から降りると、人はいなかった。その代わり震える門番と龍の足が見えた。

 龍はとても大きいらしい。顔は城壁にさえぎられて見えなかった。

「よく来た。こっちだ」

 宰相にいわれ、門番の待機室に入った。

「これより、龍の手に捕まれて浮島に行くことになる。一切の武器は出すな。もちろん、魔術もだ。攻撃の意思がなくても魔術を発動するのは危険だ。だから、大人しく運ばれてくれ。いいな」

 導師がうなずいたので、僕もうなずいた。

「作戦はない。出たとこ勝負だ。心して任務にあたるように」

「わかりました」

 導師はいった。

「はい」

 僕も導師を見らなって答えた。

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