龍と人間爆弾04
窓から外を眺めると、何人もの人が荷物を持って走っている。街はパニックに落ちいっているようだ。だが、家の上に登って眺めている人もいる。導師には外に出るなといわれているので、いつでも逃げられるようにダイニングで待機している。
ノーラは落ち着かず体を揺らしている。だが、導師はゆっくりとお茶を飲んでいた。
しばらくして玄関の扉をノックされたようだ。ノーラが首から提げている魔道具に反応があった。
「ほれ、客だ。お出迎えに行け」
導師は未だ落ち着かないノーラに仕事を振った。
「あっ。はい。今、出ます」
ノーラはバタバタと玄関に向かった。
ノーラはすぐに帰ってきた。
「ベランジェ・フォン・ボワデフルと名乗る方が来ました。宰相といえばわかると聞きました」
「宰相が直々に来たのか? なぜだ?」
導師はあごに手をやって考えていた。
「応接室に通しています。お茶を出しますね」
「うむ。頼む。私は客の相手になる。シオンはここで休んでいろ」
「はい」
僕はうなずいた。
僕はぼうっとして考えていた。
まだ、六歳だが一人で生きる方法を考えていた。
導師の家が気に入らないわけではない。ただ、何かあった時に一人でも生きていける方法を知っていたかった。
だが、考えはまとまらない。その前にこの世界の知識がなさ過ぎた。
平民の魔術師は何をしてお金をもらっているか想像できない。やはり、傭兵になるしかないのかと思う。しかし、この歳では誰も雇ってくれないだろう。冒険者ギルドがあるといいと思うが話には聞かなかった。
「シオン。お前も来い」
導師の声で我に返った。
「はい」
シオンは導師のもとに走った。
「こら、走るな。そういうところは子供だな」
久しぶりに導師に怒られた。
「それより、宰相とで話がある。応接間に行くぞ」
「話の内容は何ですか?」
僕はきいた。
「それは宰相が話す」
導師はそういうとノーラを呼んだ。
「何でしょうか?」
ノーラはいった。
「これで、浮遊式のボードを買ってきて欲しい。数は二つだ」
導師は金貨をノーラに渡した。
「遊戯用のスケートボードですか?」
「ああ。必要になると思うからな。急いで買ってきてくれ」
「……はい。わかりました」
ノーラには何に使うのかわからないようだ。
僕も同じでわからない。こんな時におもちゃを買う導師の意図がわからなかった。
応接間に入ると、城で見た宰相がいた。
「早速だが、話に入りたい。座ってくれ」
宰相にうながされて、導師と一緒にソファーに座った。
「要点を先に話す。シオンは龍族と一緒に行ってくれ。龍族の長が話があるらしい」
僕は理解できなかった。いや、頭は疑問だけで埋め尽くされた。
「疑問に思うのはわかる。だが、先方はお前に話があるために、わざわざ王都に来たのだ」
僕はますます理解ができない。
龍族ににらまれるようなことはしていない。
そもそも、龍族は人間のすることに介入することはないと聞いていた。
「私も同行してよろしいですか? シオンはしっかりしていますが、見た目通り子供です。保護者が必要でしょう?」
導師はいった。
「ああ。だが、その役目は私に任せてもらいたい。国にとっては一大事だから」
宰相はいった。
「ですが、シオンの異常さに気が付いてません。見た目通り、この子は六歳です」
宰相は目を見張った。
「体の小さい妖精族ではなかったのか?」
僕は宰相に下から上へと体を見られた。
「いえ、人族です。ただ、他人より早熟なだけです。前世の記憶がそうさせています」
「確か前世の記憶あるといっていたな? 生まれ変わったというのか?」
「はい。そういっております。それゆえに、大人の知識が半端にあるのです」
「なるほど。それで新しい魔術を作れたのか……。それでは、子供として扱わなければならん。ランプレヒト公爵にも来てもらわんとならんな」
「はい。その覚悟はあります」
「わかった。準備ができ次第、正門に来てくれ。そこで落ち合おう」
「わかりました」
宰相は席を立って応接室から出ていった。扉の向こうではノーラが送り出すために、宰相の後を付いていった。
「導師。話が見えません。何で龍族が僕に用があるのですか?」
僕は導師にきいた。
「わからん。だが、龍族が動くほど重要な話なのだろう。それは推測はできても想像でしかない。行って話すしかないのだ。それに断ることはできない。国にとって大事だからな。すまんが、腹をくくってくれ」
僕は不満だが、行くしかないようだ。
応接室を出ると、玄関でノーラと門番は話していた。
浮遊式のスケートボードを門番が買ってきたらしい。小脇にボードを抱えていた。
「導師様。スケートボードが届きました」
「すまんな。急に無茶をいって」
導師は門番にいった。
「いえ。これもお役目です」
門番には当たり前のようだった。
「ありがたく使わせてもらう。それと、正門まで馬車を出してくれ」
門番は了解すると下がった。
導師は研究室の方に歩いていった。
「導師。何に使うのですか?」
「ああ。龍族は空の浮島にいる。だから、そこから落ちた時のための保険だ。リミッターを外せば、高所からでも降りられる」
スケートボードは落下傘代わりらしい。
だが、一つ足りない。それはどうするのだろう?
「宰相の分はないな。宰相は存在自体を知らんから、私が何とかする。だから、緊急時まで自分の倉庫に隠してくれ。今、リミッターを外す」
研究室に入った導師はテーブルにボードを置く。そして、機関部のふたを外して魔法陣を削った。
魔法陣の規則性は僕にはわからない。今は導師に頼るだけだが、早い内に基礎は覚えないとならないと思った。
機関部のふたを閉めるとボードを渡された。
これは命綱になるだろう。空間魔術で自分の倉庫にしまった。
導師は自分のボードを改造すると空間魔法の倉庫にしまった。そして、あわただしく動いた。
必要になりそうなものは倉庫にしまう。そして、玄関に向かった。
僕はいつでも用意ができている。いや、持ち物が少ないだけだった。
「シオン。いいか?」
導師は玄関に着くといった。
「はい」
僕は答えた。
「ノーラ。後は頼む」
そういうと玄関の扉を開いた。
「行ってらっしゃいませ」
そうノーラにいわれて、送り出してもらった。
馬車の中で導師は注意事項をいう。
何でも、龍族はプライドが高いらしい。下手なことをいうと、話がこじれるようだ。だから、会話は導師か宰相に任せるようにいわれた。
正門に馬車が着いた。
馬車から降りると、人はいなかった。その代わり震える門番と龍の足が見えた。
龍はとても大きいらしい。顔は城壁にさえぎられて見えなかった。
「よく来た。こっちだ」
宰相にいわれ、門番の待機室に入った。
「これより、龍の手に捕まれて浮島に行くことになる。一切の武器は出すな。もちろん、魔術もだ。攻撃の意思がなくても魔術を発動するのは危険だ。だから、大人しく運ばれてくれ。いいな」
導師がうなずいたので、僕もうなずいた。
「作戦はない。出たとこ勝負だ。心して任務にあたるように」
「わかりました」
導師はいった。
「はい」
僕も導師を見らなって答えた。




