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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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16/29

異世界とコイルガン16

 ゆっくりとした食事が終わると、導師は魔術師たちに集合をかけた。

 僕は導師の指示で背後についていた。

 貴族たちは食後の紅茶を飲んでいる。だが、従者が使われようと関係ないようだ。実験の観覧には邪魔がないからだろう。

「お前たち。十割の力で行くよ。気合い入れな!」

 導師は威勢よくいうが、皆はついて来られない。

 一度、休憩を挟んだため頭が冷えたらしい。危険なことをしていると悟ったのだろう。

「私が一人一人、確認をしていく。心配するな」

 一人の魔術師が手を挙げた。

「私ではこれ以上の磁力は出せません」

「ああ、そんなことか。それなら問題ない。逆らって力を使えば感電するが、弱くても流れに逆らわれなければ死にはしない」

「本当ですか?」

 他の魔術師がいった。

「ああ。死んだのは、力を逆に使ったからだ。だから、それさえ間違わなければ死にはしない」

 何人かの魔術師が安心したのか、ため息を吐いていた。

「すいませんが、私が魔術を使った時、チェックしていただけませんか?」

 別の魔術師が言うと、「私も」と後から手が挙がった。

「わかっている。今まで一人一人見てきた。これからも同じだ」

「ですが、死んだ人が……」

「あれは私の実験を邪魔するように、主人にいわれてたからだ。死ぬ可能性も考えていなかった。仕える主人が悪かったのさ。運の悪い奴だったということだ」

 一同が沈黙した。

 思うところがあるのだろう。仕える側も大変のようだ。

「しけた面は終わりにしな。実験を成功させて帰るよ。いいね」

「はい」

 一同が返事をした。

 改めて、導師が目標の岩を選んだ。

 なかなか大きい。あれを破壊できるなら城壁は貫通できるだろう。

 魔術師たちが並んでいく。そして、左右のに列ができると、導師が号令をかけた。

「始め!」

 魔導士たちが磁力の魔術を展開する。そして、しばらくすると五つのリングができた。

 導師が一人一人チェックをしていく。問題がなさそうだった。

 僕の見立てでもほころびはない。しかし、術者の強弱が出て、今後の課題になりそうだった。

 導師が僕を見る。

『問題ありません』

 導師にコールを飛ばした。

 導師は受け止めたのか、口元で笑って僕から視線を外した。

「鉄球を挿入!」

 リングに鉄球が入れられた。

 またも、目で追えない速さで鉄球は射出された。

 遠くから破壊音が聞こえた。

 鉄球が岩を破壊したようだ。その方を向くと岩はなくなっていた。

 導師の顔はほころんでいた。実験の成功がうれしいようだ。

「次、いくよ!」

 導師が大声を出す。

 理解できずに導師を見た。他の魔術師も同じようだ。

「次は全力だよ。出せるだけの力を出しな!」

 魔術師たちが魔術を使うか迷っている。

「どれだけ威力を出せるかのテストだ。それで今日は終わりだ。全魔力を出しな!」

 終わると聞かされて、魔術師の顔が明るくなった。

 どうやら、不安ばかりだったようだ。もう、一回で終わる。その開放感が魔術師たちを明るくさせていた。

 最後の実験も事故は起こらずに終わった。ただ、威力のほどはわからなかった。対象としている岩が吹き飛んだ。それだけだからだ。十割の威力と比べようがなかった。

 実験の成功と終了を王に報告した導師は、まんざらではない顔をしていた。

「やっと、肩の荷が下りたよ。これで、しばらく静かな生活が送れる」

 導師がおばあさんみたいなことをいった。

「お前、何か変なことを考えただろう?」

 導師の鋭い目線が刺さった。

 僕は首を横に振って否定した。

「まあ、いい。二人には世話になったね。これからもよろしく頼む」

 導師が意外な言葉を発した。

「改めて、何ですか?」

 アナはいった。

「いや。気が抜けただけだ。気にするな」

「はい」

 アナは元気に答えた。


 実験が終わっても貴族の人たちはマイペースだった。お茶とお菓子でくつろいでいる。

 予定通り、今日も野営して明日に帰るようだ。

 実験が終わっているため導師はもうやることはない。導師も食後のお茶を飲んでくつろいでいた。

「たまの野営もいいですね。星空がきれいです」

 アナはいった。

 僕は空を見た。紺から夜の黒へと変わりだしている。だが、星はたくさん見えた。

「そうだね。城下町は狭くて苦しい。こんな広い空を見るのは久しぶりだ」

 導師は微笑んだ。

 僕はまぶしいほど瞬く星が珍しくって、空に釘付けになった。


 翌日は予定通り城に帰ることになった。

 王が最初にゲートをくぐり城下町に帰る。この時にも貴族らしいもめごとがあった。

 帰る順番は偉い人からだが、肩を並べる貴族同士で先に行くか行かないかでケンカになっていた。

 僕はあきれながらそれを見ていた。

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